タイの商標ライセンス

ArayZ No.122 2022年2月発行

ArayZ No.122 2022年2月発行タイのモビリティ/ MaaS – 現在地と将来像

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タイの商標ライセンス

公開日 2022.02.02

当職担当の回ではタイの知的財産権法それぞれについて詳細に説明している。

今回から、タイのライセンス契約について取り上げる。その中でも、まずは商標ライセンス契約を解説する。

ライセンス契約について

日本の事業者がタイにおいて商標権を取得した場合、通常、登録商標を使用する者は商標権者となった事業者自身といえる。

一方で、商標権者自身は商標の使用を行わないが、他者(現地法人含む)とライセンス契約を締結し、その者に登録商標を使用させる場合も考えられる。

また反対に、日本の事業者が他者からライセンスを受けて、タイ国内で商標を使用する場合も考えられる。  このような場合、日本においてもタイにおいても、いわゆるライセンス契約を締結することになるが、タイにおいては、当事者間の契約の締結を前提とした上で、さらにある条件を満たさなければ当該ライセンス契約が有効にならないという特徴があるため留意が必要となる。

以下では、その条件について解説する。

ライセンス契約「登録」の必要性

①登録について

タイでは、「登録商標の所有者は、登録されている商品の一部または全部に関して他人にその商標の使用を許諾することができる」(タイ商標法第68条)と規定されており、商標の使用を他者に許諾できる旨が定められている。これは商標権のライセンスを認める規定であり、この点については日本と同様である。

しかし一方で、タイ商標法においては続けて、「商標ライセンス契約は書面でなし、登録官に登録申請をしなければならない」と規定されており、タイ特許庁への契約の登録が義務付けられている。

すなわち、ライセンス契約の登録は第三者対抗要件でなく、契約の効力発生要件とされており、登録がされないライセンス契約は無効とされてしまうのである。

なお、親会社・子会社間であっても別法人である場合、使用許諾契約に対して登録義務がある。

②必要書類

登録に必要な書類は、次の通りである(代理人による申請の場合)。

  1. ライセンス契約書の原本(写しも可。原本の場合は審査後返却される)
  2. ライセンサーの代理人委任状原本(外国でのサインの場合、要公証人による認証)
  3. ライセンシーの代理人委任状原本(外国でのサインの場合、要公証人による認証)
  4. 対象の商標登録証の写し
  5. タイの会社の場合、当該会社の登記事項を示す証明書の原本(いわゆるアフィダビット、ライセンス契約登録申請前6ヵ月以内に取得のもの)

③審査の内容

上記の通り、タイで登録商標に係るライセンス契約を有効にするためには、登録官に契約書を提出して登録申請を行う必要がある。

しかし、契約書を提出すればどんな内容であっても直ちに登録が認められるという仕組みとはなっておらず、契約書の内容が法に適合しているかどうかの審査が行われる。

この点、日本においても、商標制度の趣旨に反する条項や、契約の一方当事者にあまりに不利な条項は事後的に無効とされる可能性はあるが、タイでは事前にそのような条項を排除するスタンスを採用しているのである。

審査の内容などは、次回以降詳細を説明する。

寄稿者プロフィール
  • 永田 貴久プロフィール写真
  • TNY国際法律事務所
    日本国弁護士・弁理士
    永田 貴久

    京都工芸繊維大学物質工学科卒業、06年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co.,Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニア、ベトナムの各オフィスの共同代表も務める。

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THAIBIZ編集部

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