ArayZ No.133 2023年1月発行競争から協調・協働、そして価値共創へ
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公開日 2023.01.10
目次
今後、部品メーカーが新規事業の成功に向けて取り組むべきこととして、次の5つの視点が挙げられます。
新規事業を成功させる上で、経営層の強烈なコミットメントは非常に重要で、経営トップが魂のこもった中期経営計画を通じて社内外に成長への強い意欲をアピールし、それに整合させる形で経営資源を投じることができる会社が新規事業を伸ばし、業績を拡大できます。
従って、経営層に新規事業に対してコミットしてもらうために、実際の検討プロセスに直接関与してもらうことが有効です。全ての経営層が味方になることは難しいとしても、力がある経営層を味方につけ新規事業開発を守ってもらう工夫は必要です。その経営層に対しては、新規事業が軌道に乗るまで厳しい局面に立つことを予め理解してもらうためにも、担当者の熱意や将来の可能性を継続的に伝え、共創的な関係を構築していくことが重要です。
新規事業を効果的・効率的に推進していくためには、全社(経営)戦略の立案段階で、既存事業と新規事業のバランスを見据えることが重要です。
各事業の将来予測を十分に行い、そこから得られるキャッシュフローを予測し、リスク&リターンを考察し、複数事業を俯瞰・横断して見た時に経営資源をどこにどう配分(投資)するかといった経営戦略を高度化し、その上で新規事業開発、研究開発、M&A/アライアンスなど、新たなビジネスを探索・創造する戦略を立案することが成功のポイントになります。
実際、自社の将来の事業拡大の方向性をしっかりと吟味し、「飛び地」ではなく既存ビジネスとのシナジーを考慮して企業買収/売却や新規事業開発を推進している企業が多く見られます。
新規事業がうまくいっている企業の特徴として、自社が保有する強み(技術、ブランド、製造・販売拠点など)を起点に、ポテンシャルが高い市場(市場規模が大きい、市場成長率が高い)に参入し、そこに存在する顧客の顕在/潜在ニーズを的確に捉えて、新たな製品・サービスを展開しているという点が挙げられます。
いわば、「飛び地」ではなく「地続き」を主眼とした新規事業開発に取り組んでいる、ということですが、このような領域を定期的に探索し続けることが重要です。
これを実現するためには、まず自社の強みを明確にする必要があります。代表的なものに「技術力」がありますが、技術体系一覧表を作成したのはよいものの、新規事業テーマの創出に結びついていかないケースを目にします。「技術」と「顧客の困りごと・ニーズ」と「顧客価値」を必ず紐付けて新規事業テーマを探索することが重要です。また、自社の強みは技術に限りません。
自社のブランド活用や、グローバルに展開している販売拠点網を活用して新規事業を展開しているケースもあります。このように、各社がこれまで蓄積してきた、強みとして活用できる経営資源を組み合わせて新規事業テーマを抽出していくことが成功のポイントです。
新規事業開発の初期段階で行う市場調査は、どうしても不確実な概算予測値になってしまいます。市場の新規性が高いほど調査に必要な情報が存在せず、収集可能な情報から市場規模を予測せざるを得ません。
しかし、根拠のない算出結果ではなく、ロジックに基づいた根拠のある算出結果を提示し、その根拠にどれほどの確実性が伴っているかを吟味していくことが必要です。
新規事業開発の初期段階で限られた情報に基づき、概算の市場規模を論理的に算出していくための1つの方法としては「フェルミ推定」(実際の調査が難しく、直感では見当のつかないような数量を、所有している情報を基に論理的に推定し、概算値を算出する方法)が有名ですが、これに「検証水準管理」という手法を組み合わせることで、段階的に推定値の精度向上を図ることが可能になります。
顧客ニーズとの適合が新規事業開発の成否に大きく寄与します。市場・顧客ニーズには、大きく分けて「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の2つがあります。これはさらに、「顧客から見た時」と「自社から見た時」の2つの視点に細分化できますが、新規事業を検討するうえで、どの領域の顧客ニーズ抽出が不十分なのか、どの領域のニーズを狙うのかなどを明確にし、その領域に適した手法やツールを活用して顧客ニーズ抽出を行うことが重要です。
新規事業開発は不確実性が高く、リスクを伴う活動であるため、周囲からの理解を得られず、批判や抵抗を受けることも少なくありません。そのような中で、新規事業の失敗を許容されるカルチャーを組織的に作っていく上では、組織構造や仕組み・ルールといった「ハード面」と、啓蒙教育をはじめとする「ソフト面」の両方を整備していく必要があります。
啓蒙教育では、経営層に対して自社が置かれている経営・事業環境、今後の企業経営における新規事業の必要性を訴求するのはもちろんのこと、それに加えて、新規事業開発の難しさや次世代を支える事業に成長するまでの時間的な長さ、新規事業の成否のポイントと経営マターのアジェンダを定期的・継続的に訴求し、ディスカッションさせ、「批判から提案へ」「傍観から参画へ」といったメッセージを発信し続け、徐々に新規事業に味方してくれる経営層、その他メンバーを増やし、新規事業開発を組織的に盛り上げていくことが重要です。
これまで1~5で述べてきたことに加えて、新規事業開発を円滑に推進していくためのマネジメント基盤を整備することが重要です。整備する内容には主に以下のようなものが挙げられます。
① 新規事業の「撤退基準」の整備
② 「新規事業売上高比率」の整備
③ 「分散投資&マイルストーン投資」による合理的な投資プロセスの整備
④ 新規事業に合わせた「評価基準・育成システム」の整備
以上が、新規事業の成功に向けて取り組んでいくべき5つの視点です。
この理論と実践のサイクルこそ、継続的な新規事業開発の成功を実現させるものだと思います。
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THAIBIZ編集部
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