ArayZ No.136 2023年4月発行ASEAN-EV市場の今〜タイ・インドネシアEV振興策および主要自動車メーカーの戦略〜
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2023.04.10
2023年1月17日付で名義株主(Nominee Shareholders)及び名義取締役(Nominee Directors)の禁止を明確化する指令(Directive No.7/2023:以下「本指令」)がDirectorate of Investment and Company Administration (DICA:投資企業管理局)により発出され、即日施行されました。
本指令はミャンマー会社法において、会社の株式を保有する株主は、会社の株主名簿に登録された上、DICAに対して申請して登録されていなければならず、名義株主の登録を認めていないと記載しています(国によっては、名義株主の登録を認めた上で、会社の最終保有者(Beneficial Owner)を別途登録する運用をしていることもあるが、ミャンマーにおいてはそのような取り扱いを認めていない旨の法令の解釈と併せて記載されています)。
名義株主については、不動産保有やライセンスに関する外資規制などを潜脱するため、ミャンマーに限らず、多くの国で昔から利用されており、乗っ取りのリスクも含め広く一般的に知られている手段となっています。ミャンマーにおいて、以前から外資規制を潜脱するような名義株主は認められておらず、本指令は改めて名義株主の利用禁止を周知したものと考えられます。
本指令はミャンマー会社法において、取締役の権利義務が規定されているところ、名義取締役を選任することは会社法に従ったものではなく、一切認めないと記載しています(事実上会社の業務を指揮管理する者は取締役としてみなされると規定されており、また、代理取締役(Alternate Director)を選任することも認められている旨の法令の解釈と併せて記載されています)。
2018年8月施行のミャンマー会社法において最低1名以上の取締役の居住要件(Ordinarily Resident)が新設されています(現在はCovid-19などの状況に鑑み居住要件は一時的に停止されています)。名義株主と同様、外資規制を潜脱するためにミャンマー人取締役を選任することに加え、Covid-19やクーデターなどの事情により、本社から取締役を駐在させることが難しくなった現地法人・支店が居住要件を充足するために、外部の弁護士・税理士などを取締役に選任する手段が利用されています。
そのような状況の元、本指令により名義取締役の利用禁止を公表したことは、名義取締役利用リスク(名義取締役の権限の乱用、法令違反行為など)の周知、海外からの駐在員の帰緬の促進、ミャンマー人による会社運営の促進など様々な目的があるものと推測されます。
本指令は解釈の明確化との立場であるため、法令の変更ではありませんが、今後、実務上外資規制を潜脱するための名義取締役選任に対する取り締まりが厳格化するなどの影響が及ぶ恐れがあります。
日本の判例(東京地判2015年12月28日)では、ミャンマーにあるコンドミニアムの一室について、ミャンマー人名義で購入(購入費用は日本人が負担)した事例において、ミャンマー法に基づき判断するとした上で、「不動産移転制限法は物権的効力を持ち、強行法規」であることから「日本人が出捐者であるという事情を考慮しても、所有権を取得したのはミャンマー人」という判決が出ています。そのため、名義貸しであると主張しても名義上の所有者が実質的な所有者と判断されるリスクは依然として存在するものといえます。
本指令により、名義株主・名義取締役の利用に関して罰金やライセンスの取消しなどのミャンマー現地法人・支店管理の実務に影響が出る可能性があるため、今後の動向に注意が必要となります。
佐野 和樹
One Asia Lawyers パートナー弁護士(日本法) ミャンマー・マレーシア統括
2013年からタイで、主に進出支援・登記申請代行・リーガルサポート等を行う「M&A Advisory Co., Ltd.」で3年間勤務。16年よりOne Asia Lawyersの設立に参画し、ミャンマー事務所・マレーシア事務所にて執務を行う。19年にミャンマー人と結婚し、現在はミャンマー在住。ミャンマー・マレーシア統括責任者として、アジア法務全般のアドバイスを提供している。
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THAIBIZ編集部
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