ArayZ No.137 2023年5月発行タイはコロナ、そして米中貿易摩擦でどう変わった?不動産の潮流2023
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カテゴリー: ビジネス・経済
連載: Deloitte Thailand - M&Aの基礎
公開日 2023.05.06
本稿では改めて、日本企業とタイ企業が提携をする上で、どのような組み方があるのかといった点を考えてみたい。
提携の類型について、「どこの市場をターゲットとするか」「どのようにアライアンスを組むか(日本側がマジョリティを取るか、合弁企業(JV)とするか、タイ側がマジョリティを取るか)」で整理できる。
まずは図表1を参照していただきたい。実際にこのような整理をした際に、タイ企業と日本企業でどのような組み方が為されてきたのか。かつて日本企業は、日本よりも安価な労働力を求めて製造業を中心にタイに進出してきたという背景がある。したがって、このマトリックスで見ると日本主導/JVの形態で日本及び第三国に輸入するというようなケースが多かったものと考えられる(①②④⑤)。
一方で、最近はタイの所得水準が上がってきていることもあり、タイをそもそも消費市場と捉えて事業展開するようなケースも増えてきている。例えば、店舗型の小売企業やシステムインテグレーターなどはマジョリティもしくはJVの形態を取ってタイに進出し、一定の成功を収めている(⑦⑧)。
これらはタイを消費市場として捉えて進出してきている。また、例えば一部のレストランチェーンなどはタイ側のパートナー主導で事業展開し、日本のブランドにはロイヤリティを支払っているケースなどもある(⑨)。その事業の特性やパートナーとの関係を考慮して進出形態を選んでいるものと想定される。
以上がよく言われる日本企業とタイ企業のトレンドである。ここで、再エネ業界を取り上げてみたい。日本企業とタイ企業のアライアンスの方向性を考える上で面白い業界だと思うので、このマトリックスを使って改めて整理する(図表2)。
日本と同様、タイにおいても太陽光発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギーの導入量を今後増やしていくという動きがある。2018年に発表されたエネルギー開発計画では、再生可能エネルギーの比率が現状15%程度であるのを36年までに30%まで高めるといった目標が設定されている。
BOIも恩典を設けており、日本の企業も特に太陽光発電を中心に積極的に進出してきている。最近は工場や倉庫の上に置く屋根置き太陽光の導入を政府は促進しており、日本企業も屋根置き太陽光の事業を推進するためのJVをタイ企業等と組んでいる(⑧)。
しかし、実は広く目を向けてみるとそれだけではなく、日本で太陽光発電を行っているタイの事業者も存在する。例えばタイの太陽光発電大手SPCGなどは、日本企業と手を組んで日本の太陽光発電に投資しており、日本最大級のメガソーラーとなる予定の長崎県の宇久島メガソーラー事業に投資している。日本の再エネ業界は外資規制が厳しくないことから、他のタイ企業も日本に目を向けている(②③)。
実はタイの電力業者は積極的に海外進出を行っており、日本だけでなく近隣のラオスやミャンマー、ベトナム等で投資をしている。特にJETROによれば、ラオスは国内で発電した電力の80%近くをタイに輸出している。そのため、タイ企業はラオスの電力開発にも深く関わっている※1。
日本企業もこのタイ企業の積極的な海外進出にあたり、パートナーとなるケースがある。例えばある日本企業はタイのSermsang Power Corporation(SSP)とベトナムやモンゴルでJVを組んで太陽光発電に投資している(⑤)※2。
このように、新しく事業開発を行う際は消費市場をどこに定めるのかという視点をずらして考えてみるのも一つの手である。また、既存企業の取り組みをこのような形で整理してみて、どのような提携の在り方があるのかを検討してみるのも面白い。
この再エネ業界における例にもある通り、タイ企業は単にタイにおける消費需要を取り込むためのパートナーというだけでなく、日本や第三国を消費市場とした事業のパートナーにもなり得るのではないかと思う。日本や第三国を消費市場としているという点では、かつて安価な労働力を当てにした製造業の進出形態と一見似ている。しかし、再エネ業界においてはタイ企業の資本力や海外における電力開発のノウハウを目的にアライアンスを組んでいる点に違いがあり、これまでと違ったタイ企業との組み方になり得るのではないだろうか。
※1 出所: JETRO「新規ダム案件を見直し、電力需給バランス調査へ(ラオス)」
※2 出所: アジア・マーケット・レビュー 2019.7.15号「タイ電力会社、周辺国など海外に活路 日本、ベトナム、ラオス、ミャンマーに進出」
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Services / Manager谷口 純平 Jumpei Taniguchi
Deloitte入社以来、一貫してM&A・事業戦略をテーマに活動。特に各関係者の調整やスピード感を持ったプロジェクト推進で高い評価を得ている。主な実績は、大手ファンド向けBDDと事業戦略検討。総合商社のクロスボーダーM&AのPMIリードなど。2020〜22年8月タイ駐在。同年9月〜シンガポールに赴任。
TEL:+65 (0) 8-763-6373
E-mail: [email protected]
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory / Manager
柴 洋平 Yohei Shiba
大手生命保険会社、大手電機メーカーを経てDeloitte入社。M&A関連や事業戦略策定、マーケティング支援などのプロジェクトに従事。入社以来、金融・テクノロジー・ライフサイエンス・消費財・電力など幅広い業種における支援をリード。22年8月からバンコクに赴任、特にPre M&AやPMIに力を入れて活動中。
TEL:+66 (0) 6-3079-4893
E-mail: [email protected]
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.<Financial Advisory>
Deloitteは会計・財務・税務・M&A等のサービスを世界各国で行うプロフェッショナルグループの一つであり、 主にタイの日系企業様向けにM&Aやリストラクチャリング/再編に関わるサービス提供を行っております。
AIA Sathorn Tower, 23rd – 27th, Floor11/1 South Sathorn Rd. Yannawa, Sathron, Bangkok 10120
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Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Associate Director
谷口 純平 氏
商社を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2020年からバンコク及びシンガポール事務所に出向。戦略策定からPMIまで、シームレスに事業成長をサポートできることが強み。
【谷口 純平】
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Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。
Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html
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