カテゴリー: 会計・法務
公開日 2025.04.10
近年、日本でも紛争解決手段として仲裁が着目されるようになり、仲裁に関する相談を受けることも増えています。そこで、今回は、タイにおける仲裁判断の承認・執行について概観します。
仲裁は、当事者が自分たちで選んだ仲裁人の判断(仲裁判断)に紛争解決を委ねる私的紛争解決手続をいい、国際取引におけるスタンダードな紛争解決手段として用いられています。そして、日本やタイを含めて170ヵ国を超える国が加入しているニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)により、仲裁が行われた国以外の国でも仲裁判断に基づく強制執行が可能となっています。
仲裁判断に基づきタイ国内で強制執行しようとする者は、タイの裁判所に対し、仲裁判断書や仲裁合意書などの必要書類(必要に応じて、それらのタイ語訳)を添付して、仲裁判断を承認しタイ国内で強制執行することを認めるよう申し立てることが必要です。
なお、タイ仲裁法では、この申立ては仲裁判断が執行可能となってから3年以内に行わなければならないこととされているので、注意が必要です。つまり、仲裁判断から3年が経過した後では、申立てが棄却されてしまう可能性があります(タイ仲裁法42条)。
申立てを受けたタイの裁判所は、申立てを認めるかどうかを審査します。タイの裁判所は仲裁判断の執行に積極的な姿勢を取っていると言われていますが、例えば、仲裁手続に不備があった、仲裁判断の内容がタイの公序良俗に反するなど、一定の事由に該当する場合には申立てを棄却します(タイ仲裁法43条)。
なお、この審査には6ヶ月から1年程度を要すると言われています。
仲裁判断に問題がないと結論付けられる場合、裁判所は、その仲裁判断に基づいてタイ国内で強制執行してよいという承認を行います。この承認がされれば、タイの裁判による判決による場合と同様、仲裁判断に基づき、タイ国内で強制執行に及ぶことができます。
以上のとおり、日本など外国で得られた仲裁判断であっても、原則的に、その仲裁判断に基づいてタイ国内で強制執行することが可能です。ただし、仲裁により紛争を解決するためには、仲裁によって紛争を解決するという相手方との仲裁合意が必要です。
また、仲裁判断に基づく強制執行にも、判決に基づく場合と同様の問題点が存在します。つまり、相手方がそもそも財産を持っていなかったり、財産を持っている可能性はあるにしてもその財産の所在がわからなかったりする場合は、強制執行しようがないのです。そこで、紛争解決手段として仲裁を選択する場合でも、あらかじめ取引限度額を決めておくなど、事前の予防を十分に心がけるべきです。
GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士
藤江 大輔 氏
2009年、京都大学法学部卒業、2011年に京都大学法科大学院を修了後、司法試験合格。2012年にGVA法律事務所に入所。 2016年より同事務所パートナー弁護士に就任し、2017年にバンコクでGVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.を設立、同代表に就任。2021年より大阪に弁護士法人GVA国際法律事務所を設立し、代表を兼任。
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