カテゴリー: 協創・進出, 対談・インタビュー, ASEAN・中国・インド
連載: JICA - 日系企業の強い味方!タイで頼れる支援機関
公開日 2025.05.09 Sponsored
ASEAN諸国の中でも安定した成長を続けるタイ。しかし、「高所得国」へのステップアップには、政策整備や技術革新が不可欠だ。そんなタイの産業界を国際的な視点から強力にバックアップしているのがUNIDOである。
UNIDOは、産業開発を専門とする国連機関として、飢餓の撲滅、気候変動対策、持続可能なサプライチェーンの確立の3本柱で活動。タイでは産業の高度化や政策支援に注力し、現地企業の競争力向上を後押ししている。UNIDOタイ地域支援事務所代表である飯野福哉氏に、タイ産業界の課題や、日系企業との協力の可能性について話を聞いた。
タイ地域支援事務所 代表 飯野 福哉 氏
国際連合工業開発機関 1966年設立、1985年独立の国連の専門機関。産業開発を通じ貧困削減、持続可能な経済成長、環境保全を推進。持続可能な開発目標(SDGs)のゴール9 「産業と技術革新の基盤をつくろう」を軸に、世界173の加盟国で技術協力、政策支援、国際基準の策定、パートナーシップの促進を展開、すべての人が恩恵を受けられる社会作りを目指す。
お問い合わせ Website: www.unido.org E-mail: [email protected]
木下 UNIDOの活動内容や特徴について教えていただけますか。
飯野 UNIDOは、ウィーンに本部を置く国連の専門機関で、「包摂的で持続可能な産業開発」をミッションとしています。①飢餓の撲滅、②再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上を通じた気候変動対策、③持続可能なサプライチェーンの構築を活動の柱にしており、各国の製造業が国際的な基準を満たせるよう支援し、工業発展のための政策やロードマップの策定をサポートしています。
UNIDOの特徴は他の国連機関と異なり、国際資金に直接アクセスできる点です。各国の市場や産業レベルに応じた技術仕様を設定し、必要な設備の調達や導入後のトレーニングまで一貫して支援します。タイでは、「タイランド4.0」に基づき、12の重点産業※中心に支援を展開しています。
※ 12の重点産業:デジタル、エレクトロニクス、自動車・部品、農業・食品加工、石油化学・化学、観光、医療、自動システム・ロボット、バイオテクノロジー、航空、防衛、人材開発・教育
さらにマレーシアやミャンマーなど周辺国もカバーし、地域全体の産業発展を後押ししています。UNIDOの特徴は他の国連機関と異なり、国際資金に直接アクセスできる点です。各国の市場や産業レベルに応じた技術仕様を設定し、必要な設備の調達や導入後のトレーニングまで一貫して支援します。
木下 タイの産業界における課題とUNIDOの取り組みについて教えてください。
飯野 上位中所得国であるタイが中進国の罠から脱却するためには、政策の充実化が大きな課題の一つとなっています。例えば、現在38ヵ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)に仲間入りするためには定められた基準を満たす必要がありますが、タイでは重要な政策の未整備に驚く場面も少なくなく、OECDの基準合致にはほど遠い状態です。UNIDOは、この現状を悲観するのではなく、むしろ原動力としてタイ政府に働きかけ、政策整備を後押ししています。
また、国際競争力を高めるには、技術力の向上も欠かせません。UNIDOは、日本の公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT)などと協力し、在タイのタイ人社員を対象とした人材育成プログラムを提供しています。これにより、技術力向上だけでなく、日系企業との連携も深まりつつあります。
木下 日系企業は、具体的にどのようなUNIDOの支援を受けることができますか。
飯野 海外展開を考えている企業にとって、UNIDOは心強いパートナーです。例えば、「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」を活用したい場合、東南アジア以外の地域ではUNIDOが窓口を務めています。同補助金の活用を検討される際には、ぜひUNIDO東京事務所にご相談ください。
また、日本企業の持つサステナブルな技術を開発途上国に紹介する「サステナブル技術普及プラットフォーム(STePP)」を運営しています。STePPに登録すると、UNIDO東京事務所のウェブサイトで技術が紹介されるほか、TICAD(アフリカ開発会議)などの展示会への出展や途上国政府との個別面談など、幅広い機会が得られます。
2025年2月末時点で、133社150件の技術が登録されていますが、審査基準は「最先端技術」ではなく、「低コストで維持管理しやすい技術」など途上国に適した独自性を重視しており、登録のハードルはそれほど高くありません。日本企業にとって、自社の技術をグローバル市場で活かす絶好のチャンスです。ぜひ活用をご検討ください。
さらに、UNIDOはタイ工業省などの公的機関との強固なネットワークを持っており、タイ市場への参入を検討している企業に対し、市場に適した技術仕様のアドバイスや人脈形成をサポートすることも可能です。
木下 持続可能な産業開発に向けた具体的な活動内容や、日系企業との協力の可能性について教えてください。
飯野 UNIDOは、エコで持続可能な工業団地の開発促進に注力しています。単に環境に優しい工業団地を整備するのではなく、「A工業団地の廃棄物を、B工業団地の原料として再利用する」といったように、産業間のつながりを活かした付加価値の創出を目指しています。こうした取り組みには、日系企業の高度な環境技術やノウハウが活かせる場面も多く、今後、さらなる協力機会が広がると考えています。
また、持続可能な産業開発には環境問題への対応が急務です。UNIDOは最近、世界銀行や国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)と協力し、タイの排水対策プロジェクトを立ち上げています。家庭排水はUN-HABITAT、工業排水はUNIDOが担当し、それぞれの分野で適切な対策を進めています。このプロジェクトでは、日系銀行のグリーンファイナンスの活用など、日系企業との連携も模索しています。
木下 日系企業がグローバル市場で勝ち残るために、どのような要素が必要だとお考えでしょうか。また、日系企業へのメッセージをお願いします。
飯野 グローバル市場で競争力を発揮するには、現地市場に適した製品・サービスを提供できる柔軟性と、前例にとらわれず挑戦する姿勢が不可欠です。
もう一つ重要なのは、ネットワークを活用し自社の強みを最大限に伸ばすことです。例えば、タイは「全方位外交」を掲げ、世界各国と柔軟に連携しています。日系企業も技術力のある他国企業と協力するしたたかさを持つことがグローバル市場で生き残るために重要だと考えます。
私は国連に20年以上在籍していますが、日本企業は国際資金の活用やプロジェクト参画に消極的な印象があります。しかし、世界では環境や社会課題解決を軸に、新たなビジネスチャンスが生まれています。UNIDOとしても、技術力の高い日系企業がもっとグローバルな舞台に進出し、積極的に国際プロジェクトに関わることを歓迎しています。
日系企業が「日本企業」という枠を超え、「アジアの企業」として世界のマーケットに挑む姿を、私たちは全力で応援したいと思っています。
JICAタイ事務所
Representative
木下 真人 氏
タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。開発学修士、MBA保有。
Email:[email protected]
JICAタイ事務所
31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey
Bangkok 10110, THAILAND
TEL:02-261-5250
Website : https://www.jica.go.jp/overseas/thailand/office/index.html
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