戦略的なブランディングと人材育成を実践 タイから世界一の日本食ブランドを

THAIBIZ No.163 2025年7月発行

THAIBIZ No.163 2025年7月発行“援助”から“共創”へ ODAが変えるタイビジネス

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戦略的なブランディングと人材育成を実践 タイから世界一の日本食ブランドを

公開日 2025.07.09 Sponsored

タイで和食レストランを展開するTEPPEN(THAILAND)Co., Ltd.(以下、「てっぺんタイランド」)は、2013年の創業以来、業態を変えながらも、世界一の日本食ブランドの確立に向けて確実にステップアップしている。

急成長を遂げる同社の中心には、オーナー兼CEOである柳本貴生氏の存在がある。日タイの強みを絶妙なバランスで融合し、タイおよびタイ人の特性に根ざした戦略的なブランディングと人材育成で変革に挑む柳本氏は、「世界一が実現できれば、日本食全体の価値向上にも寄与できる」と意気込みを語る。

聞き手: 一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS) バンコク事務所長 藤岡 亮介

落ち込む日々を乗り越え、徐々に見出した突破口

てっぺんタイランドと柳本さんのこれまでの軌跡について

居酒屋経営を主事業とする株式会社てっぺん(以下、「てっぺん」)は2003年に設立され、「世界で最も必要とされる日本食グループになる」というビジョンの下、現在は直営店とグループ店とを合わせると世界で200以上の店舗を構えています。また、ビジョン実現のために、日本一・世界一を目指す人材育成に注力しており、これまで私を含む150人の経営者を輩出しています。

私自身はてっぺんに2016年に入社し、日本で統括部長を務めた後、てっぺんタイランドのオーナー兼CEOとして同年に来タイ。以後、当初は日本で主力事業の居酒屋を中心にしつつも、丼ものをメインとする「TEPPEN OMAKASE DON」など、複数のブランドの店舗を順次オープンしていきました。

タイでの経営で直面した壁をどう乗り越えてきたか

「世界一の日本食ブランドをタイと共創したい」という高い志を持ってタイで起業しましたが、すぐに事業運営や、従業員とのコミュニケーションなど様々な面で、日本との勝手の違いに直面しました。「自分が甘く見られているのではないか」と感じ、当時はかなり落ち込みました。

しかし、タイでやり遂げると決めていたので、「自分から現地に入り込もう」と気持ちを奮い立たせ、タイ人スタッフと行動を共にし、積極的にコミュニケーションを図ることで、徐々にタイの方々に心を開いてもらえたと思います。

また、タイ人経営者などとも積極的に交流する中で、タイ人は仏教観に根差した他人への気遣いやおもてなしといった観点では日本人と共通する特性も有する一方で、彼らの持つ発想力や迅速な変化への対応力などは非常に優れていると感じました。

そのため、規律の重視や忍耐力などといった日本人の強みとの相乗効果を意識し、タイ人にはマーケティングやクリエイティブ、デザインのトップを任せる一方、日本人には製造や教育の現場、オペレーションマネジメントなどを主に担当してもらうなど、お互いの強みをうまく融合させたチーム作りに励んでいます。

タイおよびタイ人の特性に根ざした戦略で挑む変革

世界一を目指すために、どのような変革に挑んでいるか

主にブランディングと人材育成の二つの側面からアプローチしています。まず、タイの人々が日本食レストランを利用する理由として、「優越感」が大きな割合を占めるとの自社分析に基づき、人の移動の制約があり、顧客単価を高める必要が生じたコロナ禍を境に「居酒屋」と比べてより大きな満足感を提供しうる「ダイニング」に事業形態の軸足を本格的に移すことを目指しました。

そのために、空間やサービスの質を向上させる内装や制服のデザインなどへの投資を積極的に行うと同時に、その投資を回収するべく、価格設定も見直しました。結果としてこの業態転換は今のところうまく行っていると思います。

具体的な方法としては、ブランドの変化を柔軟に受け入れてくれるタイの特徴を最大限活かしつつも、まずはタイの皆様がよく利用するSNSを駆使して柳本個人のブランディングを行い、徐々にそのイメージを店舗に移すことで、ブランドイメージを変化させる戦略でした。

てっぺんタイランドのインスタグラム

また、タイの方々は日本食に対してプレミアム感を感じてくださっている一方、競争の熾烈さも日本の都心部ほどではないので、これらの要素も積極的な投資を後押ししてくれました。

また、こうした業態転換も支える人材育成にも、人事評価などの周辺の取り組みとともに力を入れています。タイの方々は、給与、成長機会、人間関係といった要素をバランスよく求める傾向にあると理解していますが、こうした要素についての「納得感」を高める仕掛けを導入することが重要と考えています。

具体的には、組織を運営する上で必要な業務・工数を全て洗い出し、それぞれのポジションの人材がカバーしうる領域を可視化しています。

その際、数年後の株式上場(IPO)なども見据えて、今後発生しうる業務やポジションについても発信することで、会社のビジョンや進むべき方向性を明示しつつ、将来この会社でキャリアを積む上での予見可能性も確保するとともに、多様な選択肢を提示した上で従業員自らが選ぶことを可能としています。

給与水準についても、飲食業界での勤続年数や、特定作業の所要時間などで細かく基準を設け、職歴やスキルなどの評価軸の公平性および透明性をできる限り確保しています。

こうした仕組みと一人ひとりとの丁寧な面談を組み合わせることで、従業員の納得感を醸成しながら、積極的な社内セミナーの実施などを通じチームワークを向上させつつ、スキルアップを図るための人材育成の効率および効果を最大限高めることで、変革が出来る人材の採用・育成と、組織全体の変革を目指しています。

タイから世界一の日本食ブランドを目指す

変革を通じて目指す長期的なゴールは

世界で最も必要とされる日本食レストランを創ることです。より具体的には、日本の食文化が根付きつつあるタイから、日本人とタイ人が協力しながら、世界的に評価されている日本食レストランブランド「Nobu」や「ZUMA」を超えることが目標です。

その夢に向けた第一歩が、7月に、内装などを一新してリニューアルオープンする予定のエカマイ店です。多数のインフルエンサーの方々もお招きしながら、積極的にPR活動を行う予定です。

てっぺんエカマイ店(イメージ)(写真:柳本氏提供)
てっぺんエカマイ店(イメージ)(写真:柳本氏提供)

まだ道のりは遠いかもしれませんが、起業家という立場でタイに来ているからこそ、長期的な視点に立ち、ブレないビジョンは掲げつつ、やり方については従来通り試行錯誤を繰り返していければと考えています。その過程では、自社の成功だけでなく、タイの飲食業界の発展にも人材育成など様々な形で貢献していきたいと思っています。

THAIBIZ編集部

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