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カテゴリー: ビジネス・経済
連載: THAIBIZ NOW
公開日 2025.10.10
9月5日、下院による首相指名選挙の結果、タイ誇り党(プームジャイタイ党)党首のアヌティン・チャンウィラクン氏が第32代首相に選出された。最大野党の国民党も支持に回り、賛成313票、反対142票と、大きく過半数を上回る結果だった。
ここまでは、タイ語のニュースを日頃からチェックしていればある程度予想できる展開だった。しかし、翌日発表された大臣候補者は、タイ経済界を大きく驚かせるニュースとなった。
アヌティン氏がまず発表した閣僚候補3名は、いずれも国会議員ではなく、民間企業や官僚組織で実績を積んだ「外部人材」だ。副首相兼財務相には財務省財務局長のエクニティ氏、エネルギー相には国営タイ石油公社(PTT)前CEOのアタポン氏、外相には外務次官や駐日大使を歴任したシハサック氏が起用された。
エクニティ氏は、財務省内でも“改革派”として知られる人物。デザイン思考やハッカソンなどの近代的なフレームワークを導入し、省内に民間的な発想を持ち込んできた。現在54歳で次期財務次官の有力候補と目されていたが、そのキャリアを投げ打ち政権入りを決断した。実行力を伴う改革型のリーダーとして期待が高まる。
一方、アタポン氏はPTTの第10代CEOとして、同社の脱化石燃料戦略を牽引。再生可能エネルギーの新規事業立ち上げを進めた実績があり、次の時代のPTTの基盤を築いた人物と言える。脱炭素・エネルギー転換が課題となる中で説得力のある登用だ。
また、外相候補のシハサック氏はキャリア外交官として知られ、外務次官や駐日大使、東部経済回廊(EEC)事務局の顧問も歴任。外交経験と経済政策の両面を理解する存在として、外資誘致や安全保障を見据えた布陣だと受け止められている。
さらに9月10日には、ホテル大手デュシタニグループCEOのスパジー・カンラナーユー氏が、商務大臣候補として新たに発表された。IBMで20年以上勤務し、タイ法人初の女性GM、東南アジアの事業統括責任者を経て、通信衛星会社タイコムCEO、そして現在のホテル業界最大手でトップを務めている。
アヌティン首相からの電話で打診を受け、わずか30分で就任を決意したというエピソードも話題を呼んだ。任期は限られるが「国のために貢献できるなら」と即断した姿勢に、政界・経済界の双方から称賛が寄せられている。
これら4名に加えて、法務担当副首相に憲法起草委員会の元委員長ボウォンサック氏、財務相補佐には元クルンタイ銀行総裁のウォラパク氏が起用された。さらに、軍や警察高官の登用も進められている。外部人材の登用は、合計で7省庁10ポスト9名、全閣僚の4分の1を占める。
背景には、首相選でアヌティン氏に票を投じた最大野党・国民党が、大臣ポストをすべて譲ったことに対する政治的配慮があるとされる。アヌティン氏は側近のネーウィン氏とともに自らの人脈を駆使し、短期間で説得と調整を進めたと報じられている。
要職に「実務型人材」が配された今回の人事は、タイ経済界で「久々に適材適所な人事」と高く評価されている。もちろん、「次回総選挙を見据えた演出」「1年以内に復活する可能性があるタクシン元首相に対抗するための準備」との見方もある。
それでも、実務に長けた民間・官僚出身者をこれだけ一度に登用する例は近年まれであり、経済界を中心に「久しぶりに明るいニュース」として歓迎されていることは確かだ。
今後4ヶ月以内に下院を解散し総選挙を実施するとされているが、実際のプロセスを踏まえると、実働期間は約8〜10ヶ月と見られる。限られた任期ながら、「結果を出す」ことに主眼を置いた布陣がどこまで機能するかに注目したい。(2025年9月30日時点)
Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer
ガンタトーン・ワンナワス
在日経験通算10年。2004年埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ国の王室関係者や省庁関係者のアテンドや通訳を行い、タイ帰国後の2009年にメディエーターを設立。日本政府機関や日系企業のプロジェクトをコーディネート。日本人駐在員やタイ人従業員に向けて異文化をテーマとした講演・セミナーを実施(講演実績、延べ12,000人以上)。
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