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カテゴリー: 会計・法務, ASEAN・中国・インド
公開日 2025.11.04
(上)では、2025年2月18日に公布された民間警備サービス法の「目的と定義」および「ライセンス保有者の義務」について紹介した。本稿では、民間警備会社のライセンス取得要件や制度などについて紹介する。
警備サービスを第三者に提供する場合、ライセンス取得が必須であり、ライセンス申請者は以下の要件を満たす必要がある(第8条)。
1. ミャンマー国内で法人登記された企業であること(外国企業含む)
2. 国家の安全を害する活動歴がないこと
3. 1億チャットの保証金(外資企業は外貨)を経済銀行に預託
ライセンス申請者は、関連する監督委員会に以下のデータを提出しなければならない(第9条)。
(a)申請者の氏名
(b)簡単な経歴
(c)永久住所および連絡先住所、電話番号、電子メールアドレス
(d)会社のエンブレム(徽章)
(e)取締役会の名簿
(f)会社の目的
(g)会社の業務手順
(h)民間警備員(男性/女性)の予定人数およびそれぞれの詳細な経歴
(i)民間警備員の制服、バッジ、階級章の提案3種
(j)民間警備サービスに関する経験に関する事実
(k)会社の登録証明書および過去1か月以内の会社の業績に関する抜粋の写し
(l)民間警備サービスに関する保証金の納付証明書の写し
(m)その他の個別の提出書類(該当があれば)
例:武器・弾薬を使用するかどうか
(n)申請日
(o)中央委員会が随時定める関連事項
外国企業の場合は、本社の所在国名を明記し、追加審査が実施される(第10条)。ライセンスの有効期間は3年間であり、期限3ヶ月前に更新申請が必要である。期限を超えると自動失効となり、新規申請が必要になる(第13条)。
ライセンスの紛失・損傷時は、所定の手数料を添えて再発行可能である(第14条)。

企業が自己の業務や支社のために10名を超える警備員を任用する場合、営業ライセンスとは別に許可証を取得する必要がある(第21条)。
許可証申請には、企業情報、警備員構成、制服案などを関連監督委員会に提許可証の有効期間は3年、更新は期限3ヶ月前までに行う必要がある(第25条)。
許可証は職場に掲示し、勤務記録と個人情報を管理しなければならない。
警備員はライセンス保持企業と同等の基準で訓練を受け、装備・制服も中央委員会の承認に従う(第26条、27条)。
警備員は、指定された業務区域内でのみ業務を行い、勤務中は制服、バッジ、階級章を着用しなければならない。
武器・弾薬の使用は、中央委員会の承認に基づき、武器法に従う必要がある。
逮捕権:施設内で犯罪行為が確認された場合、警備員は刑事訴訟法に従って逮捕・通報が可能である。
国家の安全に関わる情報は最寄りの警察署へ通報義務を有する。
許可証に基づく自社警備員は、武器や弾薬を保持する権限は付与されない点が重要である。
民間警備会社とクライアント間で紛争が発生した場合、まず交渉による解決が求められ、それが不調に終わった場合は、契約に基づく法的手続きが進められる(第29条)。
この観点から、企業は、契約書内に紛争解決条項(準拠法、管轄裁判所、仲裁条項等)を明確にしておく必要がある。
以下の行為は禁止されており、違反者には刑罰または高額な罰金が科される。
・無許可での営業・警備員任命(第34条)
・虚偽申請、誤認広告(第35条)
・装備の無許可使用・販売・貸出(第36条)
・国家機関の偽装、顧客情報の漏洩(第37〜39条)
罰則内容:
個人:1~3年の懲役、または最大5,000万チャットの罰金
法人:最低5,000万~最大3億チャットの罰金
本法律は2025年2月に施行されており、それ以前から警備業を営んでいた者は、6ヶ月以内にライセンス・許可証を申請しなければならない(第40条)。
違反が発覚した外国企業には、ミャンマー中央銀行の定めた所定の手続きを通じて罰金が科される(第48条)。

TNY国際法律事務所 (ミャンマー)
代表弁護士
堤 雄史 氏
会社設立、合弁契約書および雇用契約書などの各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等のミャンマー法に関するサービスを提供している。世界13ヶ国に展開するTNY国際法律事務所グループの共同代表。
TNY国際法律事務所
各国に日本人弁護士と現地弁護士が常駐
日本語で、日本クオリティの現地法務サービスを提供
[主な業務]
・ 各業種の外資規制や許認可制度のリサーチ、投資や事業スキームの適法性の確認
・ 会社設立手続、各種契約書の作成(雇用契約、賃貸借契約、合弁契約、業務委託契約等)
・ 労務、紛争解決、M&A、企業法務、知的財産業務、各種法律相談等
E-mail:info@tny-legal.com
Website : http://www.tnygroup.biz

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