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公開日 2025.12.25
12月17日付のネーションによると、12月1〜16日の間、タイバーツは周辺通貨に対して2.2%上昇し、マレーシア・リンギ、日本円、シンガポールドルを上回る伸びとなった。短期間でのバーツ高を受け、タイ中央銀行(BOT)は外国為替取引、とりわけ金取引に関連するドル取引の監視を強化している。
BOTのウィタイ総裁によると、今回のバーツ高は米ドル安が主因で、観光や輸出、株式・債券投資に伴う季節的な資金流入が重なった。加えて、金価格上昇を背景に、金取引業者がドルを売ってバーツを購入する動きが増えたことも押し上げ要因となっているという。

こうした状況を受け、BOTは商業銀行に対し、金取引に関わる為替取引の目的や関連書類を厳格に確認するよう指示。タイ財務省と連携し、大口の金取引業者について、BOTが為替取引情報を求められるよう規制整備も進めている。オンライン取引など、大口資金が短期間に動くケースについても監督を強化する方針だ。
民間エコノミストからは、バーツ高が輸出や観光分野の競争力を低下させるとの懸念が出ている。特に周辺国通貨と比べた相対的な割高感が意識されやすく、日本円やベトナム通貨との比較で影響が大きいと指摘されている。バーツは2026年初めにかけて強含みが続く可能性があり、実質実効為替レートでも地域通貨より高水準にある。
12月15日付のバンコク・ポストによると、タイは現在、①新たなグローバル貿易秩序、②急速なテクノロジー革新、③深刻化する気候変動という3つの大きな課題に直面しているという。しかし同月11日、アヌティン首相は任期途中で下院を解散し、タイは政治的空白の中でこれらへの対応が問われる局面に入った。
①新たなグローバル貿易秩序:米国の相互関税政策を背景に、1980年代の円高期のような生産移転、投資先見直しの動きが再び起きる可能性が指摘されている。実際、2025年1〜9月のタイへの投資申請額は1兆3,000億バーツに達しており、政府はさらに投資加速策「タイランド・ファストパス」を通じて即時投資向けに4,800億バーツを確保している。
一方企業側は、②急速な技術革新、③深刻化する気候変動について、対応が不可避と認識しつつも、国の基礎条件が十分に整っていないことへの懸念を示しているという。例えば、
②急速なテクノロジー革新:タイ船荷主協会(TNSC)は、中小企業(SME)にとって自力導入が難しいデジタル戦略・人工知能(AI)活用・自動化、輸出入コストを下げるための貿易書類の完全電子化、それらを支える人材育成を通じた新たなサービス産業のサポート、制度整備を提言している。
③深刻化する気候変動:TNSCのタナコーン会長は、今後3〜5年で最大のリスクだと指摘する。炭素税やグリーン調達、ESG(環境・社会・ガバナンス)監査、厳格なトレーサビリティ基準はサプライチェーン全体の環境責任と密接に結びつくため、輸出企業を圧迫すると警告。タイ政府に対し、国家レベルでのカーボンフットプリント・データベース構築や、電力購入契約(PPA)など低コストなクリーン電力投資の必要性を訴えた。こうした中、タイ政府は新たな長期電源開発計画(PDP)の策定を進めており、再生可能エネルギー比率の引き上げや、小規模原子炉である小型モジュール炉(SMR)の導入などが検討されている。
ゼロボードは12月10日、タイ・バンコクを拠点とするESGデータ自動化企業Vekin(Thailand)Co., Ltd.(以下、ヴェキンタイランド)と、企業の脱炭素経営支援における包括的連携に関する覚書(MOU)を締結したと発表した。
今回の連携により、温室効果ガス(GHG)排出量データの「収集・算定・可視化・報告・認証」までの一連のプロセスを、ワンストップで支援する体制を構築する。従来、手作業や分断されたツールで行われてきた排出量データ管理の効率化・自動化を進め、算定結果の信頼性と透明性の向上を図る。
ゼロボードはGHG排出量算定・可視化クラウド「Zeroboard」を提供しており、Vekin社はスマートフォンアプリやIoTセンサーによる活動データの自動収集技術、AIによるデータ監査・異常検知を強みとする。両社の技術を組み合わせることで、企業規模や導入段階に応じた柔軟な活用が可能となる。
今後はタイ国内の複数セクターで商用導入を段階的に進め、GHG排出量の取得から監査・可視化までを包括的に支える脱炭素データの共通基盤づくりを目指す。両社はこの取り組みを通じて、タイ政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標の達成にも貢献するとしている。


THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / 和島美緒

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