公開日 2025.08.08 Sponsored
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「GMアカデミー」は、アイシングループの新任ゼネラルマネジャー(GM)およびGMに近いポジションのナショナルスタッフを対象とする人材育成プログラムだ。3年目を迎えた今年は、タイ国内のみならず、フィリピンやインドネシアの拠点からも参加者が加わり、同グループの現地化に向けた取り組みは加速している。
ここでは、同アカデミーを支援するリブ・コンサルティング(タイランド)の解説とアイシン・アジア・パシフィックの人事部門を統括する深津寿高氏のインタビューを紹介する。
◎深津 寿高 氏
AISIN Asia Pacific Co., Ltd.
Vice President / Human Resources Business Field
1995年アイシン・エィ・ダブリュ(現アイシン)に入社。入社から現在に至るまで人事部門を担当。2012年に中国現地法人各社の制度・システムなど人事の仕組みを整備・統一を経験。2020年12月にタイに駐在し、人事・法務・サステナビリティの責任者としてASEAN域に対して活動を展開。
アイシングループが次世代リーダーの育成に取り組む背景の一つには、外部環境の変化がある。かつて日系自動車メーカーの基盤と売上が盤石だった頃は、ナショナルスタッフは日本人上司の指示をしっかりと遂行する能力が求められていた。
しかし近年は、中国企業の台頭やトランプ関税をはじめとした不確実な将来に対して備えつつ、勝ち筋を見つけていくためには、現地に根ざした同スタッフの自主性や企画・提案力がより求められるようになってきた。
これは、リブ・コンサルティングがこれまで支援してきた多くの在タイ日系企業経営者が抱える主要課題の一つで、各社は生き残りをかけた組織戦略の再設計に迫られているという。
アイシングループも以前から現地化やボトムアップ推進による基盤強化に向けた人材育成に注力している。
深津氏は「私が4年前にタイに着任した当時は、幹部クラスのナショナルスタッフであっても、グループ全体を俯瞰した会社目線の思考力が不足していると感じた」と振り返り、「タイやASEANの事業運営はその地域の人材が担っていくことがあるべき姿だと考えている。そのためには、早い段階からより高いレベルで考える力や多角的な視点を持ってもらわなければならない。そこに危機感を抱いたことが、GMアカデミー設立の出発点だった」と説明する。
GMアカデミーでは、立ち上げ当初から「①視野を広く持ち、将来を考える力、②論理的に仮説を立て、検証・分析する思考力、③今の自分のレベルに危機感を持ち、変化を恐れずチャレンジする意識改革、そして④実際に主体的に実行し、最後までやり抜く事」の育成を目標としている。
これら4つの要素を鍛えることで、最終的にナショナルスタッフが当事者意識を持って、変革を牽引できるようになることが狙いだ。
深津氏は同アカデミーを通じて、参加者が「自社だけではなく、グループ会社やサプライヤー、地域社会がWin-Winとなるよう経営視点で事業を設計・提案・実行できることが目標だ」とした上で、「現時点では、アイシングループの海外拠点のリーダーは日本人が中心だが、長期的には現地の幹部に任せていくことが、企業の持続性やナショナルスタッフの納得感を高める上でも望ましいと考えている。そして、複数のリーダー候補が切磋琢磨する環境をつくることが理想だ」と強調する。
GMアカデミーは、そうした将来の「核」となる人材を育成する場である。「近い将来、ASEANのアイシングループ、ひいてはアイシングローバルを牽引していくリーダーがこの地から輩出されることを期待している」と同氏は力強く語った。
タイ人コンサルタントの伴走のもと、GMに求められるスキルやマインドセットを磨く半年間の実践型プログラム(図表1)。
毎月オンサイト(タイ以外の国はオンライン開催)で実施され、各種インプットに関連したアウトプットを重ねながら成長を図る。最終日には、受講者が自ら考えた課題とそれに対する戦略について、自社を含む参加企業の社長に向けてプレゼンを実施し、そのプレゼン内容が次年度以降の事業計画に組み込まれ、実行されていくことを目指す。
GMアカデミーには、一般的な研修とは一線を画す、深いこだわりがある。深津氏が重視するのは、「個を主役にする」ことで、「受講者自身が主体的に考え、変化の当事者であるという危機感を抱ける設計だ」という。
一般的な研修では、グループディスカッションを行い、発表して終わるケースも少なくない。しかし同アカデミーでは、各自が設定した課題とそれに対応して立案した戦略は必ずタイ人コンサルタントから1on1で評価(レビュー)が行われ、改善が継続的に求められる。まさに「逃げ場のない環境」である。
同氏は「受講者のプレッシャーは大きいと思うが、それを乗り越えた人だけが、次のステージに進める。私自身も身になった研修というのは、自分の限界を感じたものばかりだった」と振り返り、「GMアカデミーも本気でリーダーを輩出する場でありたいと考えている」と熱意を見せた。
同アカデミーのもう1つの特徴は、テーマ設定だ。取り扱う課題や情報は、自動車・自動車部品業界の現状を踏まえたもので、受講者の企業が現実に直面している環境変化や経営課題を題材としている。まさに実務に直結する実践的なカリキュラムだといえる。
人材育成を通じてアイシングループがタイ・ASEANで目指す姿とは何か。深津氏は、「ASEANの人材育成を活性化させ、将来のリーダーを生み出していくことを目標としているが、現状はGMなど一部の層に対する取り組みにとどまっている。階層ごとの課題を明確にし、ASEAN全体で段階的に育成を進めていけるような環境を作っていきたい」と展望を語る。
また、現在はアイシングループ内だけでの取り組みだが、将来的には企業や業界の枠を越えた「他流試合」や「異業種交流」の場を設け、真にグローバルに通用する人材を育てていく構想もあると明かした。日々の業務では得られない高い視座を持つ仲間と切磋琢磨することで、人は危機感を持ち、リミッターを外し、成長していくからだ。
「理想論になるが、最終的には事業のあるべき姿や自分の考えを語れるリーダーを育てることだ。自分の信念や哲学を言葉で伝えられ、周りがついてくるようなリーダーを育成することが、ひいては企業としての競争力にもつながる」と締め括った。
LiB Consulting(Thailand)Co., Ltd.
成果主義・現場主義を重視した日本発の経営コンサルティングファーム。「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」を理念に掲げ、企業や政府機関へのコンサルティングを通じてタイ国を良くするため、戦略から実行まで「成果コミット型」で支援している。
E-mail:t_kanaya@libcon.co.jp(金谷)
Website:https://libcon.co.th
【コンサルタント紹介】
香月 義嗣 氏
Managing Director
東京大学工学部卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。2012年からリブコンサルティングにて勤務。東アジア・東南アジア各国で約180社、270プロジェクトのコンサルティング実績、約1万人への講演実績を持つ。2006~2017年まで韓国・ソウルに駐在後、2018年よりタイ・バンコクに駐在。
金谷 泰佑 氏
Director, Japan Desk
東京大学文学部卒業後、大手物流企業に入社。内部統制や子会社管理等に携わった後、主に国際物流分野にてAPAC地域の法人営業の企画・推進に従事。2017年より豪州、シンガポール、2018~2022年までタイ・バンコクに駐在。タイにおいて日系自動車関連、電機メーカー等への国際輸送や倉庫、配送に関して幅広い支援経験を持つ。2024年よりリブコンサルティング・タイランドに入社後、営業支援や人材育成、脱炭素関連プロジェクトなどを担当。
AISIN Asia Pacific Co., Ltd.
自動車部品、エナジーソリューション関連機器の製造販売を事業とするアイシンのASEAN地域統括会社。経営理念「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を掲げ、人々の「心」を動かすようなあらゆる“移動”体験を世界中の人々に提供するとともに、さまざまな社会課題に具体解を示し、感動と笑顔にあふれる社会の実現に貢献している。
Website:https://www.aisin-asean.com/
THAIBIZ編集部
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