カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.01.30
タイ中央銀行が発表した2014年10月の重要な経済指標によると、多くの経済部門は、前月に引き続き改善しました。民間投資と観光業の拡大が続いており、政府が予算執行を急いでいることや輸出の拡大と相まって、国内経済が全体的に回復傾向にあります。
10月のタイ経済は引き続き改善傾向
10月の民間消費は9月の前年同月比1.2%増から同0.3%下落しました。非耐久財の消費は伸びているものの、家計債務が高い水準にあるため消費に慎重な傾向が依然強く、回復のペースは緩慢になっています。また、地方の家計の購買力も、特に南部で農産物価格下落の影響を受けています。これにより、民間消費の伸びは正常な水準を依然として下回っています。
一方、民間投資は前年同月比2.8%減となり、9月の同5.0%減に引き続き改善しました。また、前月比では0.5%の上昇となりました。首都圏鉄道沿線でのコンドミニアムの開発が活発化していることや、地方での大手小売業の出店拡大などを反映しました。また、大手流通資本による地方店舗の拡張と、移動通信サービスやブロードバンド・インターネット・サービスに対する需要増に対応するための通信事業者のネットワーク建設投資が寄与しています。
10月の輸出は、前年同月比4.1%増の198億3000万米ドルとなりました。欧州連合(EU)による一般特恵関税(GSP)措置が年内で廃止されることを受けて、駆け込み需要が発生しました。また、自動車、電子製品、家電製品などの輸出が前年同月を上回る伸びをみせました。
商務省が発表した2014年1月の貿易統計によると、タイの輸出額(約185億6800万米ド
ル)は前年同月と比べ、10月の3.97%増から1.00%減になり、プラス成長からマイナス成長に転じました。その結果、1〜11月の輸出は前年同期比0.42%減となり、やや縮小しました。11月のタイ輸出を品目別に見ると、農産物・加工品の総輸出額は10月の前年同月比1.4%増から同8.5%減少しました。とりわけ、天然ゴムは前年同月比43.0%減となり、世界の天然ゴム需要が依然として回復していないことによりました。また、コンピュータ・同部品は同1・5%減、自動車・同部品は同2.4%減となりました。日本、ユーロ圏向けの輸出は前月のプラス成長からマイナス成長に転じました。それに加え、中国向けの輸出は引続き減少しました。
工業生産に関しては、9月の前年同月比3.9%減から同2.9%減となりました。しかしながら、前月比では2.0%の上昇となりました。
外需が上向き、事業者が年末に作業日数が少なくなることを前提とした生産計画に従って、ハード・ディスク駆動装置(HDD)の生産を加速させたことや、国内市場向け生産が徐々に回復してきた結果、工業生産は全体として前月比で上向きました。
10月にタイを訪れた外国人観光客は218万人で、9月の186万人から17.5%増加しまし
た。中国人観光客へのビザの手続き料免除措置や、マレーシアからの民間バスの乗り入れ規制緩和策などで前月に引き続き改善しました。一方で、欧州経済が低迷していることから同地域からの観光客にはまだ回復の兆しが見えていません。
商務省が発表した2014年11月のヘッドライン・インフレ率は、10月の前年同月比1.48%増から同1.26%増となり、6ヵ月連続で鈍化しました。世界市場での燃料価格の下落を背景に、国内燃料の小売価格が下落しました。一方、生鮮食品の物価は上昇しましたが、豚肉、鶏肉、果物などは下落しました。
原油はシェール革命による米国やカナダの生産増から供給が増える一方、需要は世界経済の減速から伸び悩んでいます。それに加え、石油輸出国機構(OPEC)は世界の原油市場でのシェアを維持したいとの思惑から、減産に踏み切る可能性は低く、原油相場は今後も弱基調が続くと見込まれます。
項目別にみると、食品・飲料は全体で前年同月比3.38%となり2ヵ月ぶりに伸びが加速しました。
このうち、肉・魚はプラス4.94%、調味料がプラス3.66%と前年同月から上昇しました。非食品はタバコ・酒が2.86%で上昇率が最大でした。
一方、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比1.60%増となり前月の同1.67%増をやや下回りました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2014年11月末には1ドル=32.86バーツの終値をつけ、10月末の終値1ドル=32.61バーツから軟化しました。
欧州や日本などの経済は依然として鈍化傾向にあるものの、米国の経済が引き続き改善していることにより、米ドルが上昇し、タイバーツが軟化しました。
カシコンリサーチセンターは足元の景気について、政府支出の拡大が徐々に改善しているものの、予想より下回っていること、および輸出と観光業の回復が予想よりも遅れていることから、まだ経済主体の広範な改善をともなうものではないと見ています。従って、タイ経済の現状から、カシコンリサーチセンターは、2014年通年のタイGDP伸び率の見通しを従来予測である前年比1.6%増から、新たな予測の同1.2%増に下方修正しました。
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THAIBIZ編集部
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