カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.02.02
目次
I.T.O Provitamin Pte. Ltd.
伊東 忍 いとう しのぶ
中間所得層人口が拡大する東・東南アジア諸国では、美容、健康、医療分野におけるQOL(Quality Of Life)に対するニーズが高まっている。過去10年で特に伸びたのが、メディカルコスメやメディカルエステといった医療産業と美容産業の間の境界領域ビジネスだ。タイでも大手私立病院では2000年初頭から美容医療専門科を充実させ、最先端の高度美容医療が行われている。
この背景には、エステや美容スパでは満足できない、より効果的でパーソナライズされた美容を求める層が増加していることがある。また、新製品や新施術が市場に大量に出回る中、一体どれが最も安全で効果のある選択なのか?と迷う消費者に対し、人体の専門家である医師が介在し、個人に合った効果的な美容法を吟味することで、美容関連製品に一定のフィルターを掛け、適切なサービスが提供できる。
この医師介在の有効性を利用したビジネスモデルを日本で実現したのが、伊東忍氏が01年に立ち上げた株式会社アイ・ティー・オー(ITO)であり、同社では化粧品原料、健康食品素材の開発を医師の協力のもとで行なっている。伊東氏は自ASEAN地域で活躍する日系企業を紹介信頼度を高めるため、会社設立後すぐに東京女子医大に医学研究生として所属し、化粧品原料の開発と評価に専念。10年には医学博士号も取得した。その成果は日本皮膚科学会、日本形成外科学会の研究発表や学術総会のほか、アメリカレーザー学会(※1)、国際化粧品化学者会(※2)などで世界にも幅広く発表されている。
伊東氏は会社設立する以前、日本の大手化学メーカーである昭和電工で技術者として機能性化学品原料の開発に従事。1990年初頭からは海外大手化粧品メーカーへのビタミンC誘導体販売に成功。シャネル、クリスチャンディオールなどで美白剤の有効性分として使用された。
「その頃はタイの財閥チャロンポカパーン(CP)に、化粧品原料であるビタミンC誘導体をブラックタイガー向けの栄養強化剤として売り込むため、頻繁にタイ、インドネシアを訪問していました。当時、東南アジア諸国の主力輸出品であった海老などの甲殻類は、ほとんどがビタミンCを体内で合成できないことから、特に夏場の海水温が上昇する時期にビタミンC欠乏症を起こし、大量の斃死が発生するという大問題を抱えていました。これに対しこの与えることで斃死を大幅に減少させられることを見出し、88年には効果を世界水産学会で発表。ニュースとして世界に瞬く間に広がり、南米などの海老養殖地帯でも採用される事になったのです」。
同事業は順調であったが、90年代後半に昭和電工は電子材料などへの差別化戦略を加速。医薬品事業から撤退し、食品、化粧品事業の開発予算も大幅削減した。このような経緯から伊東氏は同社を退社、ITOの設立に至る。
添加原料の科学的効果の検証を第一に打ち出した、学会発表を軸に製品を造るITOの化粧品は、美容に興味を持つ日本の医師の間ですぐに注目を集めた。また、斬新な化粧品コンセプトは日本の学会に出席していた台湾、タイ、香港、シンガポールなどの医師達の目にとまり、05年より各国でメディカルコスメのコーディネートビジネスを展開し「メディカルコスメの市場はまだ小さいですが、日本のきめ細やかな化粧品製造技術が最大限に発揮できるビジネスです。当社が目指す未来型ビジネスは、医師が個々の顧客のニーズに適合したテーラーメード化粧品を、一対一のインフォームドコンセントにおいて丁寧に販売していくという、化粧品と美容医療を融合した複合サービスです。将来、インターネットを活用し、システム化できれば極めて大きな市場に成長する可能を持っているといえます。今後のターゲットは中国と南米。05年からは台湾のKING CHEN有限公司と、10年からは香港のHong Wo Pharmaceutical社との共同事業を既にスタートしています。ブラジルについてもSUKIN DERMOCOSMETICS社の日本側パートナーとして製品を供給することが決定しており、15年夏には、同国の医師数百名を対象にしたドクターコスメ研究会をスタートさせる予定です」。
※1 American Society for Laser Medicine and Surgery
※2 International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
株式会社アイ・ティー・オー
東京都清瀬市下清戸1-336
TEL : +81(0)120-316-588
I.T.O Provitamin Pte. Ltd.
8 Temasek Boulevard #42-00
Suntec Tower Three Singapore 038988
TEL : +65-9111-2879
THAIBIZ編集部
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