カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.08.21
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浜田 良樹 はまだ りょうじゅ
日本の東北大学から昨年タイへ渡り、タイ国立タマサート大学シリントーン国際工学部(SIIT)で教鞭を取る浜田良樹准教授。専攻は〝技術経営〞。
理系を代表する学部のひとつである工学部に文系学部の要素を含む経営を繋ぎ合わせるという、ユニークな手法でタイでの教育に力を注いでいる。
「コンピューターやITが脚光を浴び始めた当時、法学部の学生だった私は法律とITを結び付けて研究を始めました。この分野は今では『ITとプライバシー』として社会的にも注目を集めるトピックとなっています。この経験が、異なる分野を繋ぎ合わせるという、私の研究の方向性を決める礎となりました」。
浜田氏は東北大学大学院情報科学研究科で講師を務めていた2007年、ビジネスゲーム『BASE (Business and Accounting School for Entrepreneurs)』を開発。
「産学官連携の機運が高まってきた2000年代、大学生によるベンチャー起業促進の一環として、理系の学生にビジネス感覚、経営ノウハウを短時間で学ばせようとビジネスゲーム開発を依頼されたのがきっかけでした」
このゲームの特徴は、なんといってもアナログのゲームであることだ。デジタル化されたビジネス・シミュレーションゲームは世にも多く存在する。もちろん『BASE』もデジタル化はさほど難しくないのだろうが、アナログにこだわるには理由がある。
「このゲームでは、チームを組んでひとつの会社を運営していきます。会社や市場を表すボード、材料や人を示す小物類、さまざまな用途に用いるカードとサイコロを使って進め、資金繰り表、損益計算書、貸借対照表もすべて手書きです。
チーム内で作業を円滑に行うためには社内コミュニケーションが重要であり、競争相手を目の前に、人対人で勝負をすることになります。人は時に興奮し、しばしばミスを犯す生き物。ビジネスはゲーム理論に出てくるような合理的な人に
よる営みではないことは事実であり、アナログであるからこそ、それを伝えることができます。また、10名程度の小さな経済に設定することで、より明確に景気変動を感じることができるのです」。
アナログゲームゆえにルールはごくシンプル。盛り込む内容を割り切り、精選し、削った結果、学生や若い社会人など、経営や会計をよく知らない初級者向けの教材として、非常に敷居の低いものになっている。現在、サプライチェーンや製造業、ソフト開発などの業界5カテゴリー、9つのゲームがあるが、アレンジして他業界のゲームも制作可能だという。
英語版BASE製造業系ゲーム。製造企業に取材を行い、製造業の実情を忠実に再現している
「『BASE』は外国語化も容易です。このゲームを世界に広めてみたいという気持ちを持ち始めていた頃、興味を示してくれたのがSIITでした。2010年、英語化したゲームで講義を行ったところ、レギュラー運用が決定。東北
大から出張ベースで年1回講義を行っていましたが、昨年、籍をこのSIITに移しました。タイは製造業が多く、経済成長も続けている元気のある国。タイ語版のゲームも製作し、この国から経営感覚、起業家精神を持った理系学生をより多く輩出していければと思っています」。
Sirindhorn International Institute of Technology
Thammasat University
131 Moo 5, Tiwanont Road, Bangkadi Muang, Pathumthani,12000
02-501-3505~3520(Ext. 6015)
http://www.siit.tu.ac.th
THAIBIZ編集部
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