カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.10.11
タイ・エネルギー省とタイ電気自動車協会(EVAT)、そしてアジアの大手展示会運営会社インフォーマ・マーケッツは9月14~16日、バンコク都心で全面改築オープンしたクイーンシリキット国際会議場(QSNCC)で、ASEAN域内のエネルギー、環境、エネルギー効率、そして電気自動車技術などを披露する総合イベント「ASEAN Sustainable Week(ASEW)&Electric Vehicle Asia 2022(EVA)」を開催した。
今回のASEW&EVAの開催にあたって、エネルギー省のクリット次官は「エネルギー省は気候変動の影響を最小限にとどめるために二酸化炭素排出削減を最優先課題に据えている。電気自動車(EV)の利用を促進するなどの主要政策を通じて2050年までにカーボンニュートラルを達成するためにわれわれは国家エネルギー計画2022で設定した政府の政策を堅持している」と強調。タイのエネルギーの未来を形成する現在の政策と知識を支援するためにエネルギー省は今年ASEW&EVAに参加する」とのコメントを寄せた。
ASEW&EVAは、再生可能エネルギーやエネルギー効率、EVNAなど多数の展示会やセミナーの同時開催の形を取っている。その中ではタイ電気自動車協会(EVAT)が主催する「iEVTech」が1つのハイライトだった。EVATによると、iEVTechはタイ国内外のEV研究者、エンジニア、政策当局者らが「低炭素」運輸産業に向けた情報と知識を交換し、強みを蓄積するために2016年にスタート。7回目となる今回は「Future Mobility Aspiration through Bio-Circular-Green Economy within APEC」がテーマで、中心的なトピックは、①各種EVのシステム ②エネルギーの供給・貯蔵システム ③モーターのけん引・運転システム・部品 ④充電インフラ-の4つだとしている。
クリサダEVAT会長は9月14日に行われたiEVTechのオープニングセレモニーに登壇。「現在、エネルギーと環境の問題が世界の焦点となり、大気汚染も大きな課題だ。特に運輸部門では再生可能エネルギーと電気自動車(EV)の利用が各国の環境問題に対する重要なアプローチになっている」と指摘。タイのプラユット首相は昨年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、タイが採用したバイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルがグリーン経済発展のパラダイムシフトの道だと表明したが、今年11月に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でもBCG経済モデルが議題となり、タイ政府はEV産業を振興する方針だと強調した。
同オープニングセレモニーでは、ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンス(NEF)のインド、東南アジア、オーストラリア担当運輸アナリストのアレン・トム・アブラハム氏が「EVマーケット・アウトクック2022」と題して基調講演を行った。同氏はまず、世界の自動車市場における現在のEVの動向について、「特に乗用車では過去5~6年でEVが急増しており、2015年に50万台だったが、2021年には660万台に達した」と報告。さらに2021年の新車販売台数に占めるEVのシェアはドイツ26.3%、英国21.5%、フランス18.7%と欧州で高い比率となり、中国は14.7%、世界平均が8.7%だとのデータを明らかにした。
その上で同氏は、欧州、中国、そして米国でのEV普及促進のための燃費規制など支援制度について説明。東南アジアでもタイが2030年までに自動車生産台数のうちのEV比率を30%までに高める目標を設定したほか、インドネシア、シンガポール、マレーシアなどの最新の政策動向を簡単に紹介した。こうしたことを受け世界の自動車メーカーが販売したEVのモデル数は2012年第1四半期には50を大幅に下回っていたが、2021年第4四半期には400を上回ったと指摘。そしてEV普及加速の背景にはリチウムイオンバッテリーの価格下落があり、バッテリーパックの価格は2010年から2021年までに89%下落したと述べた。
これらEV市場の最新動向を踏まえ同氏は、2040年時点の世界の新車販売に占めるEV比率について、2輪・3輪、バスがいずれも83%、乗用車が75%などとする予測を明らかにした。また、国・地域別のEVシェアでは、2040年まで2輪・3輪車では中国が大幅なリードを続ける一方、乗用車では欧州と中国がトップを競う状態が続くと予想。一方、東南アジアでは現在、ベトナムが2輪車のEV市場のシェアトップを独走しているものの、2035年までにインドネシアがトップの座を奪うとした。そして東南アジアのEV市場全体の成長率は2020年代は低調だが、「2030年代から伸びが加速するだろう」との見通しを明らかにした。
TJRI編集部
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