公開日 2023.10.25
東南アジア諸国連合(ASEAN)最大規模の持続可能性のエキスポ「Sustainability Expo 2023(SX2023)」は今年も、9月29日から10月8日までクイーンシリキット国際会議場(QSNCC)で開催された。4回目となる今回のテーマは「Sufficiency for Sustainability」で、特に若い世代が世界を持続可能な場所とし、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて行動することも狙いとした。主催者によると10日間の期間中、30万人以上が来場し、そのうち60%以上は子どもと若者だったという。
今年は「消費者の行動が変われば企業も変わる」という「B2C2B(Business-to-Customer-to-Business)」コンセプトのもと、サステナビリティーを推進している大企業が集まり、消費者にサステナビリティーへの理解を深めてもらうことを主眼とした。同イベントには、PTTグローバルケミカル(PTTGC)、サイアム・セメント・グループ(SCG)、タイ・ビバレッジ、タイ・ユニオン、チャロン・ポカパン・フーズ(CPF)、カシコン銀行などの国内外の200以上の団体が出展し、国内外のさまざまな業界の専門家が参加する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われた。
10月2日には、主催者であるタイビバのタパナ・シリワタナパクディ社長兼最高経営責任者(CEO)が開会あいさつし、「公的部門と民間部門の両方が集まるSX2023は、知識や情報を交換、理解を深めるとともに、サプライチェーン全体に関わる人々を勇気づけ、社会と世界をより良い方向に発展させることを目指している」と強調。さらに、「環境問題を解決し、より良い世界にするには、まずそれぞれの個々人から始めなければならない。どのようにして人々の環境意識を高め、世界に貢献したいと思わせることができるか。どのように協力し合えば社会に変化をもたらすことができるか。すべての部門が意見交換に参加してもらいたい」と呼びかけた。
3日に行われた都市開発に関する「Metropolitan Management for Quality of Life」と題するパネルディスカッションにはバンコク都のチャチャート知事が参加。「バンコクは外国人観光客が訪れる都市としては世界1位だが、EIU(Economic Intelligence Unit)の『世界の住みやすい都市ランキング2023』によると、世界中の140都市の中でバンコクは98位だ。これはバンコクの生活の質と持続可能性の低さが懸念されているためだ」と指摘、われわれの目的はこの順位をより上げることだと訴えた。
そして、バンコク都が改善すべき問題は幾つかあり、例えば、「1日に1万トンのゴミが出ているが、ほとんどは最終処分場に運ばれ、リサイクルはまだあまり多くないため、持続可能な廃棄物管理を推進する必要がある。水質管理ではシンガポールの水を再利用する方法を見習うべきだろう」と説明。また、緑化については、「バンコクはシンガポールの2倍の面積があるが、緑地はより少ない」との認識を示した。
チャチャート知事は最後に、「都市のインフラは人間の循環系(circulatory system)に似ている。メガプロジェクトは『動脈』であり、基盤インフラは『毛細血管』のようなものだ。この2つの血管が同時にうまく機能しなければならない。動脈であるバンコクの今後の交通開発計画では、11の都市鉄道路線が約500キロをカバーする一方で、毛細血管である駅から自宅までの交通手段は、バイクタクシーや歩きにくい歩道を利用するしかない。毛細血管の悪い状態が続けば、生活の質の向上や持続可能な都市は実現できない」と都市政策への協力を訴えて、締めくくった。
また、6日に行われた「Masterplan Design for Smart Sustainable Cities」と題したパネルディスカッションでは、「ワン・バンコク(One Bangkok)」の副最高経営責任者(副CEO)のウォラワット・シーサアン氏が登壇。持続可能な都市開発について、バンコク・ラーマ4世通りにオフィスや商業施設、ホテル、8万平方メートルの緑地やオープンスペースなどを整備する大型複合施設「ワン・バンコク」プロジェクトを紹介した。同氏は「不動産開発計画は、現在と将来の都市開発計画に合わせていく必要がある。そこでは都市の拡張や高齢化、気候変動、廃棄物管理などの都市化から生じる問題を解決する方法や、国籍や年齢、職業が異なった人々が一緒に幸せに暮らせる方法を見つけなければならない」と訴えた。
そして、「バンコク都市圏の拡大により、さまざまな問題が生じている。東京やニューヨークのような大都市の道路や歩道が全体の20〜25%であるのに対し、バンコクは7%しかない。また、世界保健機関(WHO)は1人当たり最低9平方メートルの緑地を推奨しているが、バンコクにおける緑地面積は1人当たり約4.2平方メートルしかない」とした上で、これから重視すべきなのは都市開発と持続可能性の両立だと主張した。
ウォラワット氏はまた、「われわれが力を入れているのは、商業施設や芸術・文化を促進するエリアなどで構成される自立したコミュニティづくりだ。そして、街づくりにはイノベーションが必要だ。開発ではSCGとパートナーを組み、建設工事における二酸化炭素(CO2)排出量を削減する技術や資材の開発をサポートしてもらっている。さらに、工事現場で発生した廃棄物を建設に再利用するという循環経済に沿った取り組みをしている」とアピールした。その具体例としては、建設工事で余った軽量コンクリートを施設の入口にあるトンネルの防音壁面パネルに活用していることを挙げた。
さらに、「ワン・バンコクでの取り組みは他の都市開発にも応用できる。例えば、建築家や建設技術の専門家、ランドスケープアーキテクトのようなすべてのステークホルダーを最初から参加してもらい、不動産開発業者とコミュニケーションをとることで、バランスが取れた最適な開発を進めることができるだろう」と提案した。
TJRI編集部
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