信頼は時間をかけて築くもの

カテゴリー： ビジネス・経済

連載： BizWings - 中小企業経営論

公開日 2025.11.10

弊社は10月15日に創立10周年を迎えました。日本では10年続く会社は全体の72%と言われ、決して珍しい数字ではありません¹。しかし、創業当時「お客様なし、従業員なし、オフィスなし」から始まった会社が、10年後のいま、お客様に恵まれ、仲間と共に仕事ができていることは、感慨深いものがあります。

創業当時の学び

創業当初は、顧客ゼロの状態で時間が有り余っていたため、チュラーロンコーン大学のインテンシブ・タイ語プログラムに通う一方で、日々「仕事をください」と頭を下げて回る毎日でした。

けんもほろろに扱われることも多く、組織の後ろ盾がない個人の厳しさを痛感しましたが、その経験からは「信頼は時間をかけて築くもの」ということを学びました。

初めてのお客様に来ていただいたのは創業9ヶ月後で、請求書を出したとき指が震えたのを今も覚えています。

続けてこられた理由

10年を振り返ると、これまで続けてこられたのは、創業当時の学びを胸に「小さくても、誠実に積み重ねること」を信じてきたからだと思います。

目の前のお客様に真摯に向き合い、社員一人ひとりが自分の仕事に誇りを持てるようにする。結果としてそれが紹介や信頼につながり、会社の礎になってきました。社内外の会議でタイ語をある程度理解できるのも、インテンシブ・タイ語プログラムを卒業したおかげです。

初めてのお客様は今も取り引きを続けてくださっており、第一号のタイ人スタッフはいまやチームの中心として活躍しています。

今も大切にしている姿勢

創業期「信頼は時間をかけて築くもの」という教訓を得られたからこそ、今も、「自分にできることを日々やり切る」という姿勢を何より大切にしています。

環境や経済状況は刻々と変わりますが、変えられないことを嘆くより、変えられること（できること）に集中するという考え方が、混沌とした環境でも軸を保つ支えになっています。

次の10年に向けて

これからの10年も、環境の不確実さや変化は避けられないでしょう。しかし、景気や制度、テクノロジーの波に一喜一憂することなく、まずは自分にできることを着実にやることが、最も確かな前進につながると考えています。

会社としてのしくみや体制も整えていく必要がありますが、日々の仕事に誠実に向き合うことはやがて信頼となり、組織の力になるとこの10年で学びました。そうした姿勢を忘れず、これからも仲間とともに、静かに歩みを続けていきたいと思います。

タイで事業を営む企業にとっても、不確実な時代を生き抜く鍵は、派手な成果を追うよりも、日々の積み重ねにあるのかもしれません。10年という節目を目指す皆さまに、この経験が何かの参考になれば幸いです。

1. 1. 国立国会図書館（2024）「企業生存率が10年後6.3％の裏付けが欲しい。」レファレンス協同データベース、2025年10月7日取得 ↩︎

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