資産廃棄の際に留意すべき課税取引

ArayZ No.116 2021年8月発行

ArayZ No.116 2021年8月発行タイ農業 振興への道筋

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    資産廃棄の際に留意すべき課税取引

    公開日 2021.08.09

    タイの場合、固定資産として計上すべき判断基準に「金額」による基準が設けられていないため、一年以上使用できる場合は固定資産として計上します。

    日本では一括で費用化できてしまう性質の物でも、タイでは固定資産計上を行う必要性が高いため、固定資産台帳が膨大な量になってしまいます。

    今回は固定資産や棚卸資産の現物確認(実地棚卸等)で、廃棄や除却等の手続きを取る際に留意すべき点を解説します。

    棚卸資産の廃棄損

    原材料、仕掛品、完成品などの棚卸資産を廃棄する場合、歳入局通達により原則30日前までに歳入局へ通知を行い、税務担当官及び公認会計士の立ち合いが必要とされています。

    これらの手続きを行わなかった場合、廃棄損を損金算入することができません。棚卸資産の性質によって行う手続きは図表1の通りです。

    棚卸資産を廃棄する際の手続き

    棚卸減耗損

    実務上は盗難、出荷・入荷ミス、伝票の計上漏れなど様々な理由で実地棚卸と帳簿の数量に差が生じることがあります。しかし、法人税法上は棚卸減耗損は損金算入を認められていません。

    また、タイのVAT法上は、帳簿上あるべき物が実際にないという差異については売却したと判断され、みなしVAT課税の対象となります。

    固定資産除却

    金額基準ではなく一年基準で固定資産登録をするルールのため、税法の定める最短償却期間よりも早いタイミングで使用できなくなり、廃棄を行うことが頻繁に発生します。

    前述した棚卸資産廃棄の手続きに準じたプロセスを踏むことで、税務調査担当官からみなし課税等を行使されるリスクを最小限に抑えられます。

    また、固定資産を除却する場合、税法上は市場価格に基づき課税算定をすることになっています。簿価での処理が歳入局の判断で公正妥当な市場価格とみなされない場合があるため、市場価格と簿価に乖離が発生していない立証を企業側が行う必要があります。

    資産の除却や減耗等は通常に事業を行っていても発生しますが、「みなし課税」の対象となるリスクを大いに含むため、定期的に実地棚卸を行い、決算のタイミングでどのような処理が最適であるか専門家のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

    J Glocal Accounting Co., Ltd. Managing Director

    坂田 竜一 氏

    バンコク在住。2007年大学卒業と同時に、東京の流動化・証券化に特化した会計事務所に就職。その後、バンコクの大手日系会計事務所で5年間、日系金融機関ほか日系企業の会計・税務、監査業務に従事。税務当局との折衝やDD業務を現地スタッフを介さずにタイ語で対応。2013年12月 J Glocal Accounting 設立。タイにおける会計・税務の専門家として、日系企業へのサポートを行っている。

    J Glocal Accounting Co., Ltd.

    Website : http://jga.asia/

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