ArayZ No.99 2020年3月発行タイ個人情報保護法
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2020.03.04
2013年に世界80ヵ国に拠点を持っていた英大手広告代理店のイージス・グループの買収を皮切りに、グローバル展開を進める電通グループ。タイの営業拠点として設立された電通(タイランド)40年以上の歴史の中で、初めてのタイ人最高経営責任者(CEO)が誕生し、同社の改革が始まったのもこの頃であった。そして、タイ人CEOの二代目として16年末に就任したのがナロン・トレスチョン氏である。欧米系広告代理店で長らく実績をあげてきたナロン氏の使命は、若手社員を育成しながら、同社のブランドアイデンティティを確立すること。サシン経営大学院日本センターの藤岡資正所長が、人材開発への取り組みなどについて聞いた。
「新しい社員が入ったら、必ず彼らと会って話すようにしている」――。ナロン氏は、人数が多い時は週二回、少ない時は月一回、セッションを開き、「電通とは何者か」「なぜ電通なのか」といった哲学的な問答を新入社員と交わし、議論へと発展させていく。同氏は、さらに、管理職に就く前の若手社員だけを集めて、2日間のワークショップを開催し、「もし自分が電通のライバル企業のCEOに2日後に就任するとしたら、どのような戦略で電通の事業を困窮させるか」を考えさせる。そこには直属上司の姿はなく、ナロン氏と若手社員40人だけの空間が広がる。全報告が終わるまでに10時間以上を要したこともあるが、「ここでの議論は電通の未来のこと」と疲れを見せない。
外部のアイデアにも耳を傾け、常に柔軟性を持ち、若手教育のために外部講師の招聘にも余念がない。カリスマ経営者や有名ブロガーに加え、昨年はタイ南東部から有名な海産物商人を呼んだ。スマートフォンを片手に1日100万バーツを売り切るやり手で、ナロン氏によれば、情報技術の進展で「彼に中間業者は不要となった」と指摘する。
言い換えると、現状のままでは広告代理店も中間業者として衰退していく運命にある。「劇的な変化が身の回りで起きていることを、事例を通じて、若手にも感じてほしい」とナロン氏は危機感を募らせる。
「創造的破壊(Disruption)は世界でほぼ同時に進行している。かつて技術革新が起こり、新しい製品が生まれると、タイは日本を手本に学んだ。現在は日本も何が起きているのか、または起きるのかを把握していない。従って、自分たちで考え、すばやく学び、偏見なしに新しいことを柔軟に吸収することが求められている」と付け加える。
まさに激変期にあるメディア業界。「沈みゆく産業に身を置いているという自覚を持つことが必要」であり、今のままでは淘汰されるという強烈な危機意識を有していた。かつては確実に存在した「日本的ビジネスマンの美徳」が失われつつあることを危惧していた。しかし決して悲観的になるのではなく、事業環境が厳しい今だからこそ、自らを見つめ直し、アジアで通用する企業や人材に脱皮をしていくチャンスであると前を向いていた。
略歴 ナロン・トレスチョン氏。大学卒業後に仏系・日系企業の営業職に就職するも、広告業界への夢を諦められず、米国に留学。MBA取得を経て、欧米系広告代理店に就職。その後25年間、活躍の場を現場から経営側に移す。16年末に、電通(タイランド)のCEOに就任し、現在に至る。
写真撮影:石田直之氏
サシン経営大学院日本センター所長
藤岡 資正 氏
Dr. Takamasa Fujioka
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THAIBIZ編集部
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