カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2020.04.09
経済発展とともに東南アジア諸国のファッション業界も飛躍している。産業の高度化を図るタイは服飾デザインを含む創造産業を重要視している。こうした中、文化服装学院の海外連鎖校であるBunka Fashion School(以下、Bunka)は、同産業を支えるデザイナーの育成を目指している。今回は、ソンポン・スーントムタムロング学長に同校のタイにおける取り組みと今後の国内産業の方向性についてお話を聞いた(聞き手:藤岡資正)。
タイのアパレル業界は、長期にわたり先進国メーカーの外注先として発展してきたことから、価値配分について多くの構造的な課題を有している。そこで、タイの消費財王として、ワコール、イトキンなど多数の日系企業との合弁事業を展開するサハグループ総帥のブンヤシット氏は、同業界の底上げを図るべく、2000年代はじめに文化服装学院の誘致を働きかけた。世界中に多くのデザイナー養成学校がある中、なぜ文化服装学院が選ばれたのか?
「日本最古のファッション専門学校で、山本耀司、高田賢三、渡辺淳弥といった世界で活躍するデザイナーを数多く輩出してきたという点に加えて、日本人が培ってきたパターン製作の技術は、体型が似ているタイ人にもすぐに応用がきく部分があった」とソンポン学長は説明する。
ただ、日本の教育課程をタイに導入したが、学生の就学態度や身に付けるべき教養に対する文化的な違いによって、当初は授業の進行に支障が生じた。講師の滝瀬雅子氏は、「日本では考え方を教え、詳細は学生に考えさせるが、タイでは受け入れられなかった。そこで、考え方ではなく、技術面での指導も細かく一つずつ教えていくスタイルへと変更してきた」と振り返る。デザインの講義に関しては提携校にBunkaの学生を送り込み、パターンに関しては相手校がBunkaで授業を受ける。
近年、ニットにビーズなどの異素材が縫い込まれた立体的なドレス、「MODERNKNITTY(モダンニッティ)」という作品で、タイ人留学生が、文化服装学院最高の装苑賞を受賞した。受賞者の故郷、南部サムイ等の伝統的な手編みの技術を用いた作品で、日本人にはなかなか思いつかない発想。このように、タイ人デザイナーが日本の技術をそのまま採用し、それを忠実に再現していくための教育手法ではなく、彼らの感性と好奇心を刺激し、新たな作品を創造させる。最近では、こうした東南アジア特有の創造性に惹かれて、日本人が東京ではなく、正規生としてBunkaの門を叩くようになったという。
情報産業の育成のみならず、シルク(絹)に代表される繊維産業の底上げもタイにとって重要である。繊維産業の高度化には、タイ人デザイナーの育成が喫緊の課題。シルクのブランディングや海外へ向けたマーケティング戦略など、川上から川下までの活動を一体化させることで、バリューチェーン全体の競争力を強化することが求められている。そして、最終的には、繊維業に従事する人々の生活の向上につなげていかなくてはならない。
略歴
ソンポン・スーントムタムロング氏。
大学卒業後、サハグループ傘下のタイワコールに約30年間勤務。その間、Bunka設立時の05年に出向者として、卒業プロジェクトなどを手伝う。タイワコールを数年後に定年退職し、正式に同校のダイレクターとして、経営に加わることになった。
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