ArayZ No.110 2021年2月発行FA(ファクトリーオートメーション)によるタイ製造業高度化
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2021.01.31
2020年2月号から21年1月号まで、日本及びタイで活躍するトップエグゼクティブの皆様との「美と経営」をテーマにした対談の内容を取り上げてきました。今回からは「美と経営」というテーマの意図や、これまで行われた対談を振り返ってみたいと思います。
読者の中には、どのように「美」と「経営」が結び付くのかイメージができないという方も多くいることでしょう。そこでまず「美」について考えてみましょう。
私たち人間は美しいものを愛し、美しくありたいと願います。ホモ・エレクトス(Homo erectus)のものとされる石器にも左右対称の美しさがあることが示されており、美はまさにヒト以前の人類史にまで遡ることができるのです。
人間は美しいものが好きですし、「美」のようなおよそ合理的ではないものを心地よく感じられるようです。そして、それには生存適応的な意味があると言われています。
私たちは「美」を感じている時、どのような状態にあるのでしょうか。多くの場合は対象に入り込み、自他が一体化するのではないでしょうか。つまり、対象と私たち自身が融合化するとも言えますし、対象と自らの垣根が取り払われるということかもしれません。
一方で、経営あるいはマネジメントとは対象と自らを分離して、対象を管理可能にする(Controllable)という意味で自他分離を試みることでもあります。しかし、よく考えてみると経営の対象である組織はヒトの集合体です。組織は社会や諸制度の中に埋め込まれており、常に変わり続けている動的で掴みどころのない存在です。
そして、組織が生かされている環境から影響を受けると同時に、組織は環境そのものを自ら創造しています。つまり、組織は自ら環境に働きかけながら新しい環境を創出していき、マネジメントとは対象そのものに働きかけながらも自らを変えることで他者に影響を及ぼすという「相互構成的な関係性」の中で、自他非分離となるのです。
対象を数値化・可視化して統制可能なものにする経営管理と、数字や言葉では容易に表現できない真・善・美との間にどのような関係を見出すことができるのでしょうか。一見、かけ離れているような両者ですが、優れた経営者の多くは美意識を磨き、茶道や禅を通じて自他非分離の状態となる時間を意図的に創出しています。
今回、経営者の方々との対談を通じて「経営の美学」や「美意識と経営」というものが、実はそれほどかけ離れたものではないことに気が付かれた方は多いのではないでしょうか。
対談は短くても3時間、長いのは半日近くこうした点について話をしています。その内容は経営から人生観まで幅広く日本企業へのメッセージも含まれていましたが、紙幅の関係もあり、ごく一部しか掲載することができていませんでした。
これから数回に亘り、対談内容のうち特に経営や美意識との関わりで印象に残った部分をいくつか紹介していきたいと考えています。
サシン経営大学院日本センター所長
藤岡 資正 氏
Dr. Takamasa Fujioka
英オックスフォード大学より経営哲学博士を授与(D.Phil. in management studies)。チュラロンコン大学サシン経営大学院エグゼクティブ・ディレクター・MBA専攻長、NUCBビジネススクール教授などを経て現職。早稲田大学ビジネススクール客員准教授、戦略コンサルティングファームCDI顧問、神姫バス社外取締役、Sekisui Heim不動産取締役、中小企業変革支援プログラム顧問などを兼任。
撮影:石田直之
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チュラロンコン大学
サシン経営大学院日本センター所長
明治大学専門職大学院教授
藤岡 資正 氏
英オックスフォード大学より経営哲学博士・経営学修士(会計学優等)。チュラロンコン大学サシン経営大学院エグゼクティブ・ディレクター兼MBA専攻長、ケロッグ経営大学院客員研究員などを経て現職。NUCBビジネススクール、早稲田ビジネススクール客員教授。神姫バス(株)社外取締役、アジア市場経済学会会長、富山文化財団監事などを兼任。
チュラロンコン大学サシン経営大学院
1982年設立。提供される学位の多くがケロッグ経営大学院とのジョイントディグリーである点が特徴的で、特にマーケティングとファイナンスの分野に強みを持っている。MBA、EMBA、HRM、HRMディプロマ、PhDなどの学位プログラムを有しており、正規生として毎年約700名が在籍している。
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