タイのIT市場の成長性と日系企業の出資状況

ArayZ No.139 2023年7月発行

ArayZ No.139 2023年7月発行BCG経済モデルで豊かな社会へ

この記事の掲載号をPDFでダウンロード

ログインしてダウンロード

会員ログイン後、ダウンロードボタンをクリックしてください。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、info@th-biz.com までご連絡ください。

タイのIT市場の成長性と日系企業の出資状況

公開日 2023.07.09

前回は企業提携の類型をマトリックスで整理することをお伝えした。

今回は、直近タイにおける日系企業のM&A動向及びトレンドを振り返りつつ、その中から見て取れるトレンドの一つであるタイのIT市場の成長性と日系企業の出資状況を見ていく。

 直近のタイにおける日系企業のM&A動向

図表1の通り、日系企業のタイにおけるM&A(含むJV設立)件数は2018年の53件をピークに減少傾向となっていた中、新型コロナウイルスによる海外渡航制限の影響等もあった中、依然として回復の兆しが見えない現状である。

また、同M&A件数の減少を業種別に分析したものが図表2であるが、これを見ると全体のM&A件数は前述の通り減少傾向にあったものの、不動産/建設及びITといった特定の業種ではむしろM&A件数は増加傾向にあることが窺える。この内、不動産については数年前からの不動産市場の相場上昇を受けた日系企業とタイ企業のJV設立案件がメインである為、純粋なM&A案件は多くはない。

他方、ITについては従来からの技術革新に伴う市場拡大に加えてコロナ過においてリモートワーク/非接触型サービスが世界的に広まったことなども背景にタイでも市場が急拡大しており、そういった市場成長を取り込むための日系企業によるプロアクティブなM&Aの動きが起きていると考えられる(サービス業についてはコロナの影響を大きく受け、大きく落ち込んだ業種の代表となっている)。

タイのIT市場

KDDIの海外現地法人であるTELEHOUSE(Thailand)Ltd.は2023年5月18日、バンコクにデータセンター「TELEHOUSE Bangkok」開業した

前述の通り、タイにおける日系企業のM&A件数は足元で増加傾向にあるが、直近の公開案件としては、22年のテクマトリックスによるChoco Card Enterpriseへの出資や21年のLINEによるLINE Man Wongnaiへの出資などが挙げられる。

こうしたM&Aの背景として、タイにおけるIT市場自体が成長していることに加えて、経済成熟化の中で新たな事業機会を模索するタイの大手財閥企業の動きなどが挙げられる。

タイにおけるITの市場規模は21年でUSD 26,396m(約3.7兆円)であり、24年にはUSD 40,570m(約5.7兆円)まで拡大することが予想されている。製品/サービス別の内訳をみると、デジタルサービスが最も成長率が高く、ソフトウェアがこれに続く(図表3)。

各種業界において財閥企業のプレゼンスが高い体であるが、IT業界においても財閥系企業による積極的なIT産業/ベンチャーエコシステムの育成努力がみられるようになっている。

そしてソフトウェアを更に分解すると、クラウドの伸びが24.2%(20年から21年)と最も高いが、この背景にはAmazonの提供するAWSやMicrosoftの提供するAzureといった大手クラウドプレイヤーの提供するIaaSサービスの台頭に伴うデータサービスセンター市場の拡大が考えられる。

市場規模(金額)的には依然としてオンプレミスが最も大きいが、成長率ではクラウドが突出しており、この背景には即時導入や価格弾力性といった利便性の高さが考えられる。

また、データセンター以外でもクラウドではSaaSやMSP(Managed Service Provider)のようにより少ない資本で事業を行っている企業も多く、特にMSP(例えば、企業がクラウド導入を検討・実施する際にオンプレミスからの移行支援を行うコンサルティング会社)企業の数は各国で急激に増えている。

弊社でもソフトウェア関連でタイに限らずM&Aの相談を受ける機会が増えてきており、海外事業の拡大を目指す日系企業にとっては、今後の事業拡大の為の選択肢となり得ると考えられる。

M&Aから見えた一つの大きなトレンドとして今回はIT市場を取り上げたが、M&Aに限らずとも直近トレンドの把握と共に、自社事業の在り方について常に考えながら変化し続けていくことが重要であると考える。

データセンター「TELEHOUSE Bangkok」内部

※本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする

寄稿者プロフィール
  • 谷口 純平 Jumpei Taniguchi プロフィール写真
  • Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
    Financial Advisory Services / Manager谷口 純平 Jumpei Taniguchi

    Deloitte入社以来、一貫してM&A・事業戦略をテーマに活動。特に各関係者の調整やスピード感を持ったプロジェクト推進で高い評価を得ている。主な実績は、大手ファンド向けBDDと事業戦略検討。総合商社のクロスボーダーM&AのPMIリードなど。2020〜22年8月タイ駐在。同年9月〜シンガポールに赴任。

    TEL:+65 (0) 8-763-6373
    E-mail: jumtaniguchi@deloitte.com


  • 柴 洋平 Yohei Shiba プロフィール写真
  • Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
    Financial Advisory / Manager
    柴 洋平 Yohei Shiba

    大手生命保険会社、大手電機メーカーを経てDeloitte入社。M&A関連や事業戦略策定、マーケティング支援などのプロジェクトに従事。入社以来、金融・テクノロジー・ライフサイエンス・消費財・電力など幅広い業種における支援をリード。22年8月からバンコクに赴任、特にPre M&AやPMIに力を入れて活動中。

    TEL:+66 (0) 6-3079-4893
    E-mail: yohshiba@deloitte.com


Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.<Financial Advisory>

Deloitteは会計・財務・税務・M&A等のサービスを世界各国で行うプロフェッショナルグループの一つであり、 主にタイの日系企業様向けにM&Aやリストラクチャリング/再編に関わるサービス提供を行っております。

AIA Sathorn Tower, 23rd – 27th, Floor11/1 South Sathorn Rd. Yannawa, Sathron, Bangkok 10120

https://www2.deloitte.com/jp/ja.html?icid=site_selector_jp

ArayZ No.139 2023年7月発行

ArayZ No.139 2023年7月発行BCG経済モデルで豊かな社会へ

ログインしてダウンロード

会員ログイン後、ダウンロードボタンをクリックください。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、info@th-biz.com までご連絡ください。

Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Associate Director

谷口 純平 氏

商社を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2020年からバンコク及びシンガポール事務所に出向。戦略策定からPMIまで、シームレスに事業成長をサポートできることが強み。

【谷口 純平】
+65 (0) 8-763-6373
jumtaniguchi@deloitte.com

Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.

デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。

Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP

SHARE