中華系企業の台頭と日系企業の事業機会 ~ 家電業界編

THAIBIZ No.171 2026年3月発行

THAIBIZ No.171 2026年3月発行タイの若者に“届ける”には? – サントリー流マーケ戦略

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中華系企業の台頭と日系企業の事業機会 ~ 家電業界編

公開日 2026.03.10

近年、中華系企業は、M&Aによる日系ブランドの獲得などを通じて、タイおよび東南アジア地域において存在感を高めている。本稿では、こうした中華系企業の動向について、家電業界を例に分析し、今後の日系企業にとっての事業機会探索の視点を探る。

タイおよび東南アジアにおける競争環境

タイおよび東南アジアの家電市場では、直近10年間で中華系企業の存在感が高まっている。過去10年間を振り返ると、日系企業のプレゼンスが相対的に低下する一方、中華系企業はHaierによる三洋電機の洗濯機事業・家庭用冷蔵庫事業の獲得、美的集団(Midea)による東芝の白物家電事業の獲得、台湾系企業の鴻海によるシャープブランドの獲得など、M&Aによる日系ブランドの獲得や積極的な現地投資を通じてシェアを拡大してきた。

冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった主要カテゴリーでは、東南アジア市場の成長率が世界平均を上回る中で、中華系ブランドがその成長を牽引している。

中国メガプレイヤーの「China to Global」戦略

こうした動きを支えているのが、中華系家電大手による「China to Global」戦略である。HaierやMideaは、停滞する中国国内市場に依存しない成長の一環として、タイを中心に東南アジアを重要な生産拠点および販売地域に位置付けている。

特にタイでは、東南アジア域内の輸出を見据えた製造ハブとしての地理的優位性を背景に、冷蔵庫やエアコンの生産能力の新設・増強が相次いでいる。直近5年間で、タイやインドネシア、ベトナム、インドなどにおける工場投資が加速しており、東南アジアは中華系企業のグローバル展開における要衝となっている。

家電業界における代表的なプレイヤーのHaierは、東南アジア地域における売上を年率二桁で成長させており、タイではエアコン工場への大型投資を通じて現地生産体制を強化している。一方で、同社が2022年当初に掲げていた高い売上目標は下方修正されており、競争環境の激化も浮き彫りになっている(図表1)。

Haierはこうした中で、マス向けの「Haier」、若年層向けオンライン専用ブランド「Candy」、高価格帯の「Casarte」という複数ブランド戦略を採用し、低価格帯からプレミアム市場までをカバーすることで、ブランド価値の高度化と顧客層の拡大を同時に進めている。

さらに、インドや中南米、中東・アフリカといった新興国市場においても、現地生産・現地販売を軸とした直接投資が進んでいる(図表2)。

出所: デロイト作成

為替や地政学リスクを回避しつつ、地域ごとの需要特性に適応するこうした動きは、グーバル競争力を高める上で重要な戦略となっている。

日系企業の事業機会

このような競争環境の激化・変化を踏まえて、日系企業にとっては事業成長に向けた事業領域を再考する必要性に迫られている。「市場・顧客」の観点と「組織能力」の2つの観点で考えると、既存事業(A)、周辺事業(B・C・D)、将来事業探索領域(X)という事業立地で検討することができる。

中華系プレイヤーを始めとして競争環境が激化しているため、既存事業の事業領域にとどまらず、新しい市場・顧客や新しいケイパビリティを獲得していく成長機会の探索が求められる(図表3)。

出所: デロイト作成

具体的には、周辺領域としてはD2Cやサブスクリプション型での提供を通じた商流変革やビジネスモデル変革、単一事業ではなく総合力を活かしたパッケージ提案などが挙げられる。また将来事業探索領域は、既存事業に大きな変化をもたらす新規性の高いビジネスモデルやケイパビリティ、非連続の技術などの飛び石領域となる。

企業価値向上に向けて、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などの既存事業と異なる事業体で飛び石領域への投資機会を探索し、事業ポートフォリオの再構築と持続的成長に向けた新たな打ち手を見出すことが、今後一層重要となるだろう。

(※注)本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをご了承ください。

Director, Deloitte SR&T (Thailand) Co., Ltd.

渡辺 敏弘 氏

新卒でデロイトトーマツコンサルティングに入社し、ハイテク・TMT業界中心に戦略策定やM&A支援を担当。2020年よりDeloitte Thailand事務所へ出向し、東南アジアの日系TMT業界をリード。
E-mail:toswatanabe@deloitte.com

Manager, Strategy / M&A

袁 奕侃Yuan Yikan

新卒で外資系アドバイザリーファームに入社し、消費財・TMT業界中心に戦略策定やM&A支援を担当。2023年よりDeloitte Thailand事務所に入社し、日系企業における東南アジアでの成長戦略策定・カーブアウト支援に従事。

Deloitte SR&T (Thailand) Co., Ltd.

デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。

Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html

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