ArayZ No.86 2019年2月発行どこに行く アジアのデトロイト
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カテゴリー: 自動車・製造業
公開日 2019.02.21
首都電力公団(MEA)に設置された電気自動車と充電スタンド。
2018年11〜12月に開催されたオートショー「第35回タイ国際モーター・エキスポ2018」では、各社が新型の乗用車や1トンピックアップを発表し、受注台数は前年比11%増の4万4189台(速報値)と年間百万台突破に寄与した。11~12年にかけて実施された、初めての自家用車購入者向けの税制優遇措置で義務付けられた保有期間終了に伴い、買い替え需要が高まったことも一因だ。
カシコン銀行の調査部門、カシコン・リサーチ・センターが18年12月に発表したレポートによると、好調な販売を支えたのは、環境意識の高まりを受けて、低燃費小型車「エコカー」や、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電池式電気自動車(BEV)を含む電気自動車(EV)。
18年のガソリン車販売台数見通しが17年比14%増の83万8千台にとどまるなか、エコカーは37%増の17万1千台、EVは75%増の2万1千台と大幅増を見込む。特に、HVが前年比4倍近い1万22百台、PHVが1%増の8745台、BEVが104%増の55台と予測する。
タイ政府は、1トンピックアップ、小型乗用車に続く、次世代戦略車としてEVと、車載用リチウムイオンバッテリーの現地生産の本格化に向け、投資奨励策を打ち出しており、自動車産業の今後の方向性が示されている。
目次
タイ工業連盟(FTI)自動車部会は1月23日、19年の販売台数が前年比2・4%増の105万台と予測。家計債務が増大しており、自動車の割賦販売を手掛ける銀行による借り入れ審査の厳格化や政策金利の再引き上げが懸念材料となっている。だが、新型モデルの導入や今年前半に予定されている総選挙、公的・民間部門による新たな投資がプラス要因になると楽観視する。
同部会のスラポン報道官によると、タイ人1人当たりの平均所得は年6950米ドル(22万3160バーツ)と、世界銀行が定義する中所得国に属している。「このため、自動車販売店は依然、高額なハイテク車よりも手の届く価格のモデルを見込み客に勧めている。スポーツ用多目的車(SUV)の販売は好調だが、伸びているのはサイズ・価格とも下のクラスやタイ産のエコカーだ」と、中所得国を脱却して高所得国へ移行することで、インドネシアやベトナムなど他の自動車生産国との競争で優位に立てるとの見方を示した。
カシコン・リサーチ・センターによると、ガソリン車は18年見通しから8~11%減の15万2千台~15万7千台に落ち込む。一方、電動車は18年見通しから76~83%増の3万7千~3万85百台と大幅増が見込まれる。内訳は、HVが106~114%増の2万51百~2万6050台、PHVが32~37%増の1万15百~1万2千台、BEVが627~718%増の4百~450台。
国内の生産台数は12年と13年にそれぞれ245・4万台、245・7万台に達し、世界9位にランクインしたが、17年は198・9万台と12位へ下降した。東南アジアでは依然、首位を維持しており、四輪車・二輪車の生産・組立工場数はそれぞれ23工場、8工場を誇り、メーカーに直接納入する一次サプライヤーのティア1は386社、2次・3次下請けの部品メーカーであるティア2と3は17百社に上る。
19年の生産台数は国内外に不安定な要素があるものの、国内市場向けが105万台、輸出が110万台の215万台とほぼ横ばいになる見通し。スラポン報道官は、△原油価格の変動が、タイ産ピックアップの主要輸出先である中東地域の消費者の購買力を低下△欧州諸国がタイを一般特恵関税制度(GSP)の受益国リストから外したため、自由貿易協定を結んでいるトルコから輸出△長引くことが予測される米国と中国の貿易戦争△世界経済の減速――などがマイナス要因と指摘する。
一方、カシコン・リサーチ・センターは、輸出台数が18年比1~4%増の115万~118万台と楽観視する。脱ディーゼルに舵を切った欧州と、20年に発効を目指す米国・メキシコ・カナダ新協定(USMCA)で北米向けが落ち込む一方、アジア・オセアニア地域への増加が見込まれる。特に、輸出を再開したベトナムへの期待が高く、オーストラリア、フィリピンに次いで3番目の輸出先となりそうだ。
自動車部品の輸出は19年も前年比5~8%の伸びが予測されているが、部品メーカーはタイの自動車産業の長期的な方向性に懸念を抱いている。タイ自動車部品製造協会のアチャナ会長によると、今後2年間は日本や米国などの主要な自動車大国への輸出は順調に推移する見通し。
ただ、米中の貿易戦争が長引けば、タイの部品輸出業者は即座に悪影響を受けると分析。その際は従来のガソリン車の市場であるアフリカ諸国や近隣国に交換部品を輸出して、生き残りを図ると指摘する。
21年以降はEVの生産が本格化し、大変革をもたらす。ティア1の部品メーカーは高度な自動車部品の研究開発を促進する一方、不要となる部品を製造する業者は、電子・医療・航空などの産業で新たな機会を見つけ出すだろうと予測する。
好調な国内販売の反面、ローンの返済が滞り、新品同様の車を手放す消費者は少なくない。家計債務のGDP比は18年6月末時点で77・5%と高い水準にあり、銀行などに差し押さえられた愛車は中古車市場に流れる。推定2百万台と言われる市場の動きは早く、大量の在庫を抱える業者は、商品価値が減少する前に売りさばかないと大きな損失を生むことになる。一方で、需要の冷え込みと相場の下落は、資金に余裕がある業者にとってほぼ新車の商品を安値で仕入れる好機となる。タイの中古車は日本のそれと比べて値落ちせず、多くの販売店がバンコク郊外の主要道路沿いにある。
また、中古車の即売会が定期的に大型展示場で開催されるほか、買い手(中古車業者など)と売り手(消費者、ローン会社など)をつなぐ役割を担うオークションが行われている。地場大手のユニオン・オークションは、バンコクほか、地方5県で定期的に開催。オンライン取引も充実している。
世界最大級のオークション・グループ、マンハイムのタイ法人マンハイム・アジア・パシフックもバンコク郊外の会場で毎週、オークションを行ない、約1千台の自動車、バイク、事故車が出品される。モデル、走行距離、登録番号などが記載された出品車のリストがバイヤーに配布され、手ぜり形式で6つあるレーンに続々と車両が登場。前方のスクリーンに、出品車の映像、入札額などが映し出され、競売が始まった。
落札されると、進行係が派手なジェスチャーで小槌を振り落とした。走行距離の改ざんなどが懸念されるが、所有者数、整備履歴などの情報を公開しており、参加者の一人は、「競りが公平で、他社よりも信頼できる」と述べた。同時にオンラインサービス「Simulcast」を通じて、会場に来られない業者らも参加できる。マンハイムは現在、バンコクに加え、東部ナコンラチャシマ、北部チェンマイなど、オークションを実施している。
市場調査大手インテージが昨年7月に実施した自動車に関する調査によると、タイのミレニアム世代(対象者は全国18~39歳の男女3150人)は、スタイルや外観よりも、安全機能を購入の際に、重視することがわかった。
インテージ(タイランド)の青葉大助インサイト・シニアマネージャーは、「次回車を購入する時に重視する上位10項目(図表5)」で、品質面・価格面に次いで、安全機能の装備が3位にランクされたことについて、「ミレニアム世代が運転を楽しむことや、走行性能よりも、安全性に重きを置いている」と説明する。
「必要だと思う車の安全技術」の項目では、「衝突しないように停止または避けてくれる技術」「前方の車と適度な距離を保ったまま走行する技術」などが上位に挙げられた。青葉氏は、「バンコクや地方の都市で渋滞が慢性化しており、過密な走行環境を強いられている。接触事故を回避するニーズが高まっている」と分析する。
また、手の届きやすい価格や維持費など、経済性を備えた車種が求められる傾向にあり、上の世代と比較してスポーツ用多目的車(SUV)の購入意欲が相対的に低い一方、ハッチバックの人気が高い。意外だったのは、全回答者の半数近く(46・5%)が自動車免許を保有していないかった点で、日本と同様に若者の車離れに拍車がかかっているとの見方もある。
タイで深刻化する微小粒子状物質(PM2.5)などによる大気汚染。鉄道・コンドミニアムの建設現場や製造工場などが原因とされるが、自動車の排気ガスも一因とされている。
天然資源・環境省・公害管理局によると、年間5万240トンのPM2.5が輸送機関により排出。バンコクでは特に、路線バスなどの自動車と野焼きが、都民の健康を脅かしている。事態を重く見た政府とバンコク都庁は、老朽化した違反車の路上検問、人工雨の散布、道路への散水など、短期的な解決策を講じている。呼吸器系や循環器系に悪影響をもたらすため、環境基準を大きく上回る地域では、注意を喚起するためにマスクが無料配布されている。
カシコンリサーチセンターは、健康被害などによる経済損失が26億バーツに上ると試算。環境に優しい電動車への関心が高まるとの見方もある。
ASEAN自動車連盟(AAF)によると、18年1~11月の域内自動車生産台数は、前年同期比7・8%増の403万3295台だった。拡大する内需を背景に、フィリピンを除く5ヵ国の生産は、タイの199万台(通年で215万台)を筆頭に、インドネシア、マレーシア、ベトナム、ミャンマーで堅調に伸びている。
域内の自動車関税が18年1月に撤廃され、生産の7割以上を占める2強(タイとインドネシア)の輸出攻勢が強まるかと思われたが、自国の産業振興を目的に、保護主義的な動きが見られる。インドネシアは輸入台数を制限し、ベトナムは非関税障壁と指摘される輸入規制を導入した。マレーシアでは、マハティール首相の号令で「プロトン」「プロドゥア」に次ぐ、新たな国産車を20年に発表すると発表しており、東南アジアの勢力図に変化が生じている。
中でも、市場として注目されるのがベトナムだ。18年1〜11月の国内新車販売台数は約25万台とタイの4分の1程度だったが、総人口は26年までに1億人に達すると予測されている。さらに、若年層の構成比率が高い点が魅力だ。
ベトナム産業の成長を見据えたタイの工業団地開発大手のWHAとアマタ・コーポレーションは、北部と南部に進出し、合弁で工業団地を開発・運営するなど、期待を示している。また、ビングループ傘下で、同国初の国産車メーカーのビンファストは、独BMWの技術支援を受けて製造するセダンとSUVの販売を今年夏を目処に開始すると発表。電気自動車・二輪車の生産・輸出を視野に入れており、国産車に並々ならぬ意欲を見せている。
タイ有数の財閥グループCPと中国の上海汽車集団(SAIC)の合弁会社SAICモーターCPは年内に東部チョンブリ県の自社工場でピックアップを生産・販売する考えだ。
SAICグループ傘下の英「MG」ブランドで国内販売する計画で、アジア太平洋地域にも輸出する。国内での乗用車販売も好調で、2018年1~11月の販売台数は前年同期比122%増の2万928台。「タイ国際モーターエクスポ2018」では、日産、三菱自動車を上回る2,369台を販売し、6位に躍り出た。この勢いを受けて、MGブランド自動車を販売するMGセールス(タイランド)は、ショールーム兼サービスセンターの数を140ヵ所に増やし、アフターサービスを強化する考えだ。
7位の独メルセデス・ベンツ(2,294台)は電気自動車(EV)ブランド「EQ」のコンセプトカー「EQA」初披露。同社タイ法人のローランド・S・フォルガー社長兼最高経営責任者(CEO)は、22年までにベンツブランドの全車種で電動車を提供する計画を明らかにしているが、充電施設が整っておらず、電動車の普及が遅れている。ベンツはバンコク市内の欧米系高級ホテルと連携して、充電スタンドの設置箇所を増やす方針だ。
ライバルの日系メーカーについては、「同じドイツのBMWを含めて、他社と切磋琢磨することによって販売価格が下がり、消費者も恩恵を受ける」と共存共栄を歓迎するコメントを残した。年内にもタイで国内外向けにリチウムイオンバッテリーの製造を開始する。
産業高度化を目指すタイ政府は、国家戦略「タイランド4・0」に沿って、12種の重点産業の一つに挙げられる次世代自動車産業の育成を図っている。タイ投資委員会(BOI)は、18年末で電気自動車(EV)関連事業への投資奨励策に基づく、新たな税制面などの優遇措置の申請を締め切った。今回の恩典の対象となったのは、電気モーターとガソリンエンジンを掛け合わせたハイブリッド電気自動車(HEV)、外部電源から充電が可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)、電池式電気自動車(BEV)と、リチウムイオンバッテリー。
この結果、18年末までに生産台数など一定の要件を満たしたトヨタ、ホンダ、日産、マツダ、FOMM、独メルセデス・ベンツ、BMW、財閥グループCPと中国の上海汽車集団(SAIC)の合弁会社SAICモーターCPの生産計画が承認されている(図表8)。
タイ電気自動車協会(EVAT)によると、これまで約20社がハイブリッドなどを含む電気自動車(EV)をタイで生産するために投資委員会(BOI)に申請書を提出している。EVATのヨサポン会長は、「東南アジアの他の国々と比較して、タイは最も明確なEV政策を提示しており、多くの企業が関心を示しています」と同地域のEVハブとしての期待の表れと楽観的な見方を示す。
BOIは生産を開始するまで3年間の猶予期間を認めており、生産が本格化するのは数年先となりそうだ。
政府は補助金を出して充電スタンドを来年中に150ヵ所設置する予定。また、「2016~36年EV行動計画」によると、36年までに120万台の電気自動車の登録と充電スタンド690ヵ所の設置を目標に掲げている。
カシコンリサーチセンターは今後の見通しについて、BOIの承認を受けたメーカーが製造する新モデルの価格は物品税の引き下げが販売を後押しすると予測する。また、政府が低燃費小型車のエコカーを製造する6社に対して、電気エコカーの優遇措置を調整していることも追い風になると指摘する。
鶴巻日出夫社長 FOMM(First One Mile Mobility)
「自動車業界のマクドナルドを目指している。タイから海外に輸出して、マイクロファブ(組立工場)を世界中で展開したい」――超小型電気自動車(EV)を独自に開発するFOMM(First One Mile Mobility)の鶴巻日出夫社長は、力強く語る。
同社のタイ子会社FOMM(ASIA)は、今年2月からタイ東部にあるアマタシティチョンブリ工場(年産能力は2シフトで1万台)で超小型EV「FOMM ONE(四人乗り、最高時速80キロ、満充電で160キロ走行)」の量産を開始する。従来の自動車の部品点数は3万点だが、同社は1,600点と約20分の1程度に低減。部品の75%をタイ国内で調達するという。
ユニークな点は車両が水に浮く防水機能を備えていること。特許を公開しており、世界各地を悩ます水害の際に活躍しそうだ。一方、運転者がEVに一番不安を抱く点は、「バッテリーがいつまで持つか」だ。従来のEVは、航続距離が短く、充電スタンドが街中に少ないことが課題になっている。鶴巻氏はトヨタ車体で1人乗り自動車の開発を手掛けた経験から、「予測はできていた。従って、バッテリーを車体から取り外し、交換ができるように設計した」と、他社製品の約3分の1の価格とバッテリーの永久保証で差別化を図っている。
スズキのエンジニアなどを歴任した鶴巻氏は、2013年に同社を日本で設立。当初は市場が大きい中国での事業展開を検討していたが、自動車関連部品のサプライチェーンが構築され、市場の拡大が期待できるタイを選んだ。
ただ、「ものづくりの業界は、アイデアで勝負するIT(情報技術)業界などと比較して、時間がかかり、基本的に投資に大きなリスクを伴う」と、ベンチャー企業ゆえに資金集めには苦労している。ニューヨーク証券取引所やシリコンバレーで投資資金の調達を図ったが、短期的な利益を求める投資家には馬耳東風だったと振り返る。
そんな逆風を乗り越えて、昨年バンコク・トンロー地区にショールームを開設したほか、3月に開催された「バンコク国際モーターショー 2018」では355台を、11~12月の「タイ国際モーターエキスポ 2018」では261台(速報値)を受注した。
タイでの販売は、地方配電公社(PEA)の子会社PEAENCOMインターナショナルに先ずは委託する。夢はタイだけにとどまらない。中国からすでに引き合いがあり、鶴巻氏は、「将来は供給部品を共通化させていきたい。環境への関心が高い欧州などに輸出したい」と抱負を語る。
さらに、あまり働き口のない新興国に組立工場を設立して、教育を十分受けられない子供がいる親に簡単な作業を任せたいと語る。「子供が病院や学校に安心して行ける環境を作りに貢献し、社会に利益を還元したい」と目を輝かせる。
「なぜ左からくる車や歩行者に注意せずに、右折するんだ」と外国人観光客が、ソイ(小道)から突然、大通りに飛び出してきたバイク運転者に怒りをあらわにした。当人は、「だって左折しないから」と悪びれる様子もなく姿を消した。
自動車同士の衝突事故や自動車とバイクの接触事故を目撃するのは、バンコクでは日常茶飯事だ。昨年12月に世界保健機関(WHO)が発表した交通事故に関する2018年版の報告書「Global Status Report on Road Safety(図表9)」によると、タイは人口10万人当たりの交通事故死者数が32・7人(2016年の統計に基づいた推計値)と、世界104ヵ国中9位だった。前年の2位(36・2人)から改善したが、アジアでは最悪で、日本とドイツ(4・1人)の4倍だった。
タイを上回ったのはリベリア(35・9人)、セントルシア(35・4人)など、アフリカ・中南米の8ヵ国。アジアでは、ベトナム(26・4人)、マレーシア(23・6人)、ミャンマー(19・9人)、中国(18・2人)が上位にランクインした。
タイの交通事故死亡者(2万2491人)の7割が、バイクの運転者もしくは同乗者。うち男性が79%を占めた。日本と同様にヘルメットの着用が義務付けられているが、運転者と同乗者の着用率はそれぞれ51%、20%にとどまっている。安全運転に対する意識が低く、地方では児童の3人乗り(時には4人乗りも)も珍しくない。
特に年末年始と4月中旬の旧正月(ソンクラン)の連休は、「危険な7日間」と言われ、交通事故の発生件数が増加。多くの若者が、自動車との接触事故、スピード違反や飲酒運転などで命を落とす。
タイ内務省道路安全指揮センターによると、年末年始(18年12月27日~19年1月3日)の交通死亡事故者数は、前年同期比9・5%増の463人だった(図表10)。事故の多くは午後4時~8時にかけて発生。東北部ナコンラチャシマ県での死亡者数が最も多く、負傷者・事故数の最多は南部ナコンシータマラート県だった。
18年のソンクラン期間中には前年比28人増の418人が死亡した。原因の1位は飲酒運転で、次いでスピードの出し過ぎだった。政府は毎年、安全運転キャンペーンなどを実施し、法律の順守を強く呼び掛けているが、死亡者数、事故数とも一向に減る気配をみせない。
悪名高いバンコクの交通渋滞。日本人の居住地区で商業施設が立ち並ぶスクムビット通りやアソーク通りは慢性的に渋滞しており、1キロ進むのに1時間以上かかることもある。蘭系全地球測位システム(GPS)機器メーカーのトムトムが世界48ヵ国390都市で行った交通渋滞に関する調査「TomTomTraffic Index2018(2016年のデータをもとに作成)」によると、バンコクはメキシコシティに次いで、2位の汚名を着せられた(夜のラッシュアワーピーク時では1位)。
アジアでは3位にインドネシアのジャカルタがランクイン、中国の10都市(重慶、北京、成都など)が上位20位の半数を占めた(図表11)。世界的には08年水準より13%悪化しているという。
また、英潤滑油大手カストロール社の「CastroMagnatec Stop-StartIndex」によると、年間に1キロあたり停止・発進する回数は、バンコクが2万6040回と、非常に深刻なレベルである1万8千回を上回り、世界50都市中8位。南部プーケットは1万74百回だった。
渋滞の原因として、増え続ける新車と鉄道路線の建設工事、警察官による手動信号機、多発する事故などが挙げられる。運輸省陸運局によると、18年1月~11月に登録された車両は89万3851台(三輪・二輪車、タクシー、トラクターなどを含む)で、うち乗用車は42万7111台と約半数を占めた。
総車両登録台数は1003万489台(18年11月末時点)と大台を突破。さらに、バンコクの市内面積に占める道路面積はわずか8%と言われており、東京23区内の半分以下と比べて狭く、慢性的な渋滞を招いている。
同省は渋滞緩和に向けて、周辺道路や交差点でのトンネルや陸橋の建設などを検討しており、実現すれば平均速度が21・58キロから23・10キロに改善すると期待する。
大渋滞時の強い味方となるのがバイクで、自動車の横をスイスイとすり抜けていく。FTI自動車部会がまとめた18年の国内自動二輪車生産台数は前年比1・7%増、257万8161台だった。販売台数は割賦販売の規制強化が響いたのか、同1・2%減の178万8323台だった。
日系では、ヤマハは昨年、タイで初となるハイブリッド・スクーター「グランド・フィラーノ・ハイブリッド」を発表。次いでホンダも「PCX ハイブリッド」を発売し、スクーターもハイブリッドの時代に入った。
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THAIBIZ編集部
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