進む多様化とEC「タイ食品産業2022」〜動き出す飲食店、始まる輸出支援〜

ArayZ No.127 2022年7月発行

ArayZ No.127 2022年7月発行進む多様化とEC「タイ食品産業2022」動き出す飲食店、始まる輸出支援

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進む多様化とEC「タイ食品産業2022」〜動き出す飲食店、始まる輸出支援〜

公開日 2022.07.10

新型コロナウイルス(以下コロナ)感染の収束が、現実味を帯びてきた。さまざまな業界で苦境を強いられた未曾有の状況下だったこの数年。なかでも我々の日常生活にも顕著に影響を及ぼした食品産業では、何が起きているのか。本特集では同産業に焦点を当て、その現状とコロナ前後の変化を改めて紹介したい。
※本特集における「食品産業」は、日本食に関わる飲食店・食品業界を指す。

飲食店に課せられた規制が緩和するまで

バンコクで非常事態宣言が出され、スーパーマーケット等を除くほぼ全ての商業施設が閉鎖されたのが今から約2年3ヵ月前。飲食店はデリバリー・テイクアウト営業のみになり、外出規制から買い物も限られるなど急な規制を受け入れるしかなかった。

飲食店を筆頭に、フードに関わるさまざまな企業が苦渋を飲んできたが、バンコクでは2021年9月1日からの店内飲食解禁を機に徐々に客足・売り上げは回復へ。また同年11月から、条件付きではあるがアルコール飲料の提供が可能になり、22年6月には娯楽施設の全面解禁。バンコクは以前の様相をほぼ取り戻しつつあると言っていいかもしれない。

再興を図るコロナ2年目 日本食レストランが増加

そんな厳しい状況下を鑑みると、店舗数は大幅に減少すると考えるのが一般的だろう。しかし日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所の調査(店舗数調査の期間は21年9~11月)によると、21年のタイの日本食レストラン数は前年比約7%増の4370店舗とコロナ禍にありながら増えていることが確認された(図表1)。

タイにおける日本食レストラン店舗数の推移

その内訳はバンコク都内で前年比1.5%減の2073店舗、バンコク以外の地方は前年比15.5%の2297店舗。07年の調査開始以来初めて地方の店舗数がバンコクを上回った。減少要因としては休業中の店舗増加があり、増加要因としては価格帯の多様化や商業施設の増加が挙げられる。

業種別で見ると、もっとも新規開業が多かったのは寿司(342店増)だった(図表2)。

日本食レストラン店舗数調査 業種別

21年に新規開業した店の約4割が寿司店で、安定した人気の高さがうかがえる。また総合和食やラーメンも店舗数が増えており、定番と言える料理が変わらずに親しまれていると言えるだろう。

バンコクから地方へ高級店もローカル店も

前項でも地方における日本食レストランの増加について述べているが、その分布状況については次項・図表3の通りである。

日本食レストランの分布

20年から引き続き、全ての県で日本食レストランが営業されていることが確認され、バンコク近郊のノンタブリー県は、前年に引き続き大幅に増加し2位となった。また、サムットプラカーン県やパトゥムタニー県が上位に入っており、バンコク近郊における日本食の普及率が見てとれる。そのほか、チョンブリー県やチェンマイ県、プーケット県などの観光地かつ日本人が一定数住んでいるエリアへの出店も堅調だ。

ジェトロバンコク事務所・農林水産・食品部の谷口裕基氏は「調査を進めるなかで関係者からは、タイにおいて日本食は特別な日の利用から日常食としての利用まで、楽しみ方が多様化してきているとの声が聞かれた」と話す。

また、21年の営業確認店舗を客単価別に見ると、バンコク・地方ともに最も多い価格帯が101〜250バーツで、その後に251〜500バーツが続く。そして3番目がバンコクで501〜1000バーツ、地方では100バーツ以下となっている。新規店舗で見ると、バンコク・地方ともに101〜250バーツの新規店舗が多く、加えて地方では100バーツ以下の新規店舗も多い。

タイにおける日本食レストランの現在
志向の多様化 世界でもトップクラスの日本食店舗数と高水準を誇るタイ(バンコク)。かつては特別な日の食べ物という意識が強かったり、日本食利用の大部分が富裕層という傾向があったが、現在はバラエティに富んだ店が増え、日常的な選択肢として幅広い層のタイ人に根付いている。
価格の多様化 特徴として現れてきているのが低価格から高価格まで広がる価格の多様化。前者はタイ人好みに仕上げたラインナップでバンコク郊外や地方を中心に増加し、後者は4,000Bを超える「おまかせコース」など食材・味ともに本来の日本食を追求している。

どうなるコロナ以降今後の日本食店の行方は

こうした低価格帯の店を含め、地方へと普及が広がる日本食レストランだが、今後の課題として飲食業における人手不足、観光業の回復、コロナ禍によるライフスタイルの変化等が挙げられている。

その一方で、今後もタイにおける日本食は普及を続けるという識者の見方も多い。「今後は、よりタイ人の嗜好・タイの食文化に合わせてアレンジされた日本食が増えるとともに、より日本を感じられる本物志向の日本食を提供する日本食レストランも増えていくとする意見が多い」(同・谷口氏)。

日本の食品輸出が増加、注目は牛肉・酒類・かんしょ

タイ商務省によると、同国における21年の貿易総額(食品以外も含む)は前年比23・1%増の5387億7400万ドル、輸出総額は17・1%増の2711億7400万ドル、輸入総額は29・8%増の2676億ドルと、いずれも過去最高額となった。輸入を国・地域別でみると、主な相手国・地域は中国(構成比24・9%)、ASEAN(17・1%)、日本(13・3%)、欧州(7・6%)、米国(5・4%)の順であり、日本は28・9%増の356億8500万ドルと拡大している。

日本における農林水産物・食品の輸出先として見てもタイは7位に入っており、大事な輸出先国の一つと言えるだろう。なかでも前年を大きく上回っていた品目が、牛肉・アルコール飲料・かんしょ(さつま芋)であった(図表4)。

タイ向け農林水産物・食品の輸出額の推移(2012〜2021年)

在タイ日本国大使館とジェトロによる輸出支援の強化へ

日本からタイへの農林水産物食品の輸出額は、21年にコロナ以前の数字を取り戻した。全世界に向けた輸出額を見るとコロナ禍において増加しただけでなく、21年には前年比25・6%にまで拡大するなど、その好調具合が見てとれる。

そしてさらなる輸出促進を図るため、昨年12月、農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議において、輸出拡大実行戦略が改定。輸出先国における専門的・継続的な支援体制の強化を行う「輸出支援プラットフォーム」の設立が明記された。

「タイ向け輸出においては輸入規制への対応が重要な課題であり、タイのプラットフォームでは、左の3つの機能を想定しています。在タイ日本国大使館と密に連携し、皆さまの“相談窓口”になれるよう尽力していきます」(同・谷口氏)。

輸入規制への対応が求められるタイだが、新たな支援を追い風に、その間口が広がることを期待したい。

プラットフォームによる輸出支援に向けた具体的内容
① 輸入規制目安箱機能 • タイ側輸入規制に関し、輸入業者等から解決を望む案件に関する相談を受け付ける。
• プラットフォームにおいて、必要な情報提供やタイ側当局への確認等を行い、案件の解決を目指す。
② 新規制情報収集・周知機能 • タイ側輸入規制に関する最新情報を収集。
• タイ側当局への確認等を行い、その影響度を分析。告示等の和訳を含め、速やかに情報を発信。
③ 調査・レポート 作成機能 • 直近の市場動向等、輸出拡大に役立つ情報を定期的にレポートで発信。

 

コロナ禍に起きたバリューチェーン3つの変化

活況を見せるEC物流とコールドチェーンの台頭

ここ5年ほどで大きく整備が進み、存在感を強めているのがコールドチェーン(低温/定温物流)事業である。その要因の一つとして、タイ国内における冷蔵・冷凍食品の消費量の増加が挙げられる(図表1)。

「近年、フードデリバリーやEコマース(以下EC)を通じた飲食料品の需要増を背景に、日系・地場企業が低温度帯の倉庫を建設する動きが相次いでいます。また、大型の低温倉庫内でのロボティクスを用いた自動化の取り組み、リーファー(冷凍・冷蔵)コンテナの増強など、企業の活発な投資も進んでいます」とジェトロバンコク事務所・広域調査員の北見氏は話す。

カシコン銀行傘下のシンクタンク、カシコン・リサーチセンターによると、2022年のBtoCにおけるコールドチェーン事業は、前年比15~20%増の29億~30億バーツ規模になるとの予測を示しており、バンコク都内はもちろん地方配送の安定化も一層進むことが予想される。

またEC市場においても、行動制限が課されたコロナ禍にその市場規模が急拡大(図表2)。

25年は20年の約5倍となる31.5億米ドルになるとの見方が示されるなど、その勢いはコロナ以降も続きそうだ。

逆風から追い風へ 航空貨物輸送

コロナ感染の拡大直後は国際旅客便が運休。国際貨物便のチャーターが増便するものの、供給量は大きく絞られた。また緊急輸送と供給減少が同時に起こり、海上貨物の一部のシフトにより航空運賃の高騰も発生したが、日本とタイ間ではどんな変化が起きたのか。

同・北見氏は「日本銀行の企業向けサービス価格指数を見ると、国際航空貨物輸送の価格指数は22年5月では243.7に上りました。コロナ前の19年12月時点では108.5でしたから、約2.2倍になっています」と言及。他方、入国制限により日本に行きづらくなったタイの旅行者が日本産食材を購入する流れ、そして円安による割安感は日本からの輸出に追い風となる。

加えて見逃せないのが、22年1月に発効された地域的な包括的経済連携(RCEP)協定だ。同協定では、腐敗しやすい物品は可能な限り6時間未満に引き取り許可を出す目標が約束され、航空便で輸送されるような日本産生鮮食品の通関手続きが迅速化される。加えて、関税面でも原産地規則が簡素化され、利用しやすくなったという。「すでに魚肉加工品などで利用が進んでいます」(同・北見氏)。現在は、ウクライナ問題による燃料費の高騰など国際物流において別の悩みも挙がっており、同協定を積極的に活用していきたいところだ。

デリバリー利用者急増 コロナ禍に新たな業態も

このコロナ禍を経て、フードデリバリーが食事をする際の一つの選択肢になっていることは周知の通り。その市場規模は、19年と21年を比較すると約5倍にまで成長している(図表3)。

また、フードデリバリーにおけるアプリの利用率を見ると、配送車サービスが好調なGrabFoodが約半分のシェアを獲得(図表4)。

次いでfoodpandaとLINE MANが同率2位の22%、そのほかタイ大手SCB(Siam Commercial Bank)が運営するRobinhoodが奮闘。コロナ禍の急成長により、店舗を持たずに複数店舗が入居するキッチンでデリバリーのみに対応する飲食店も増えている。

「タイを含めた東南アジアで共通しているのは、フードデリバリーとEC物流の急激な成長です。6月に行われた日ASEANビジネスウィークでは、各国の日本人商工会議所の会頭が現地の消費市場の変化を紹介しましたが、タイのほか、マレーシア、フィリピン、カンボジア、ラオスでフードデリバリーやECの利用、SNSを通じた売買(ソーシャルコマース)の隆盛が見られます。フィリピンでは20年の食料・飲料のEC売り上げが前年比3倍増になったというデータもあり、コロナ終息以降もその利用は継続していくと思われます」(同・北見氏)。

JALUX ASIA Ltd.インタビュー

JALUX ASIA Ltd.
事業概要:食品リテール事業、日本向け土産事業、合弁企業によるトンロー市場運営
設立:1999年
JALUX Inc.(本社・東京)のタイ法人。タイの特産品の輸出や日本の生鮮品・食品等の輸入販売、日本の有名製菓の販売代理事業の他、合弁企業にあたるJ VALUEが日本生鮮卸売市場「トンロー日本市場」を運営。

食品事業の複数展開が奏功、地方需要の高まりに手応え

食に関わる大部分の企業が打撃を受けたコロナ禍。
「JALUX ASIA」にその変化を尋ねた。

食品リテール事業と日本向け土産事業を柱に、着実にタイで成長を続けてきた「JALUX ASIA」。タイ進出は1999年。日本旅行や日本食ブームが到来する以前から、タイで日本の銘菓や食品を展開すると同時に、マンゴーやランといったタイの特産品を日本へ送ってきた。

「弊社の強みの一つとして挙げられるのは、タイを代表する大型商業施設とのコネクションです。ザ・モールグループやセントラルグループなどと長い信頼関係があるからこそ、良好な条件のもと出店スペースを確保することができています」と齊藤太一マネージングディレクターは語る。

大型商業施設に加えて新たなフィールドの模索も

現在、食品リテール事業においてはサイアムパラゴンやセントラルワールド、エムクオーティエ、サイアム髙島屋といったバンコク都内を中心に10以上の商業施設で出店。タイ人が多く集まる場所で、確実にリピーターを増やしている。

また、進出当初は製菓など単体での販売だった同事業だが、年月を経て商品数が増加。それまでに試してきた日本製菓の中でタイ人に人気な商品を選りすぐり、JALUX CORNERと銘打った総合ショップをオープン。加えて、今や不動の人気を誇るROYCE’はその高い支持から単体での出店を図るなど計4つのブランドを立ち上げ(上部参照)、移り変わりの早いタイ人の嗜好を把握しながら事業を拡大してきた。

製菓以外のブランドとして2018年から新たに仲間入りしたのが、おにぎり・いなり寿司・大判焼きといった昔ながらの手軽な日本食を提供するkodawariだ。持ち帰り専門店として商業施設に店を構え、ランチやおやつとして手軽に購入できるポジションを確立している。さらに、20年9月から「売店」という立ち位置で日本人学校内に構えるのがKIOSKだ。

「学校側が希望する商品をヒアリングし、kodawariで販売している手作りのおにぎりをはじめ、お弁当やパン、サラダなどを学生たちや教職員向けに選定しました。運営が始まった直後からコロナにより学校が閉鎖してしまったため、まだ明確なフィードバックを頂けているわけではないですが、KIOSKとして多くの人が毎日のように集まる場所に出店することは、弊社とお客様のニーズも合致する点が多いと思いますし、病院などにもそのポテンシャルを感じています」。

不測の事態から好転、持ち帰り販売とECサイトの可能性

食に関わるほとんどの事業がコロナ禍で受けた打撃。同社の事業においてはどうだったのか。コロナ以前は堅調な歩みを進めてきた同社だが、コロナ禍においてはいかなる変化が訪れたのか。

「皆さま同様、その影響は大きかったです。前述しましたが、弊社の食品リテール事業の販売拠点となっているのは商業施設。一時閉鎖となったり外出規制が敷かれたり、また規制がなくなっても外出を自粛する状況が続いたりしていた頃は売り上げが大幅に下がりました。ただその反面、助けられたのがEコマース(以下EC)サイトの利用者が増したことです。これまで一定のラインまでしか売り上げが伸びなかった背景があったのですが、日本に行くことができないという状況も相まって急増しました。特にバンコクまで買いに来れない地方からの注文が増え、日本製菓への需要を強く感じました。コロナ以前も定期的に地方でイベント出店を行っていたのですが、当時以上のフィードバックをもらいましたし、実際の店舗開設に向けて前向きな検討材料となりました」。

EC販売で見ると、19年と比較して20年には約1・4倍、21年には約4倍という売り上げを獲得。同社が扱う商品は、タイで言うと少々高級な部類に入るためバンコクよりも所得が下がる地方ではなかなか販売が困難な状況であると考えられるが、この結果は嬉しい誤算だったという。

「コロナ規制が緩和するにつれて実店舗での購入が以前に戻りつつあるため、オンライン上での販売数はピークよりも下がっているものの、一定数のお客さまに引き続きご利用いただいています」。

その一方で核に据えているのは、“日本の商品の魅力・価値”をいかにブレずに届けていけるかという点だ。「やみくもに出店数を増やすことが弊社の目的ではありません。商品価値が下がるような売り方はしませんし、ブランディングも含めてタイの方々に日本の食品の魅力をいかに知ってもらえるかを最優先事項としています」。

トンロー市場についてインタビュー

コロナ禍で外食から中食へ、B2B専門店+B2Cの動き

確立した「流通革命」 最上の鮮魚・肉・青果を

2022年6月、日本直送の生鮮食材を提供する「トンロー日本市場」が開店4周年を迎えた。JALUX ASIAの合弁企業として設立されたJ VALUEを運営企業とし、日本全国で採れた旬の魚介類を扱う鮮魚仲卸「亀本商店」の鮮魚、名古屋の精肉店「杉本食肉産業」の上質な肉、青果卸「長峰商店」が厳選した青果を販売する。

特筆すべきは、ターゲットを一般消費者向けではなく飲食店などの専門業者に設定することに加え、今までの概念を超えた鮮魚の流通経路である(図表1・2)。従来は生産者による水揚げから現地の卸売市場で漁獲量を管理し、東京の中央卸売市場へ輸送。そこで卸売業者が食材を購入した後に、輸出手続きを経て空路で現地へ運ばれるなど全7行程、最大6日間が通例だった。

しかしながら、その行程や時間に反比例するのが鮮度である。J VALUEでは、日本全国を網羅する日本航空(JAL)のネットワークをもとに、各地の漁港で直接買い付けを実施。さらに、そのまま羽田・成田空港へ直接輸送することができるため漁獲からバンコクのトンロー日本市場、そして各飲食店・小売店に届くまで最短1日という脅威のスピードを実現し、業界内では厚い信頼が寄せられている。

コロナ禍を下支えした一般利用客の中食スタイル

そのスピードはコロナ禍でも健在。船便や航空便は一時混雑・停滞したものの、JALによる週2回の定期便とJALUX ASIAによる週1回の定期便により食材を確保していたという。「飲食店を対象にしたサービスを基盤にしていたため、店舗が営業できないという点はやはり売り上げに直結しました。けれど、そこで追い風になったのが一般の方々のご利用です。もちろん、これまでも一定数はいらっしゃっていましたが、自宅での食事を強いられた状況で当店の刺身や肉を思い出していただいた点はコロナ禍の売り上げの下支えとなりました」(JALUX ASIA・齊藤氏)。

コロナの只中だった21年には、一般消費者の利用が専門業者の約1・5倍という伸びを見せ、22年の現時点においても専門業者の利用が回復しつつあるなかで、一般消費者の利用も続いている(図表3)。双方が伸びることで、今まで以上の売り上げが期待されるが、今後の展開について齊藤氏は次のように語る。

「コロナ禍でB2Cの割合が増えたことは非常にありがたいことですが、あくまでもコンセプトは専門業者に向けたB2B。その狙いを崩さず、その時々の需要と供給のバランスを見極め、今後も質の高い日本食材を皆さまに提供していきたいと思います」。

コロナ規制が解除され、完全復活を遂げた飲食店営業に伴い、同市場では日本から仕入れた鮮魚がその日に売り切れることもあるという。バンコクを中心に日本食レストランの質が高まる近年。同市場の存在はますます重要になってくるだろう。

タイ食品産業最新トピック2022

セントラルが商業施設の出店拡大
5年で170億Bの投資を発表

タイ小売大手Central Retail Corporationは6月、2026年を区切りとする5ヵ年計画として、同社が抱える商業施設の一つである「ロビンソン・ライフスタイル※」に170億バーツを投じることを発表した。同施設は現在、国内24地域に25店舗を展開しているが、近年購買欲が高まる地方に着目し、5年以内に国内の出店地域を49エリアへ拡大するという。併せて、既存の店舗も一部リニューアルする方針。

さらに、グループ企業であるCentral Food Retail Corporationが新形態となる独立型の高級スーパーマーケットをスクンビット・ソイ39にオープンするなど事業拡大が止まらない。「トップス・フードホール」と称された同スーパーは投資額1億5,000万バーツをかけて建設。面積4,800㎡の2階建てビルには食品や日用品のほか、日本製菓を扱うJALUX CORNERをはじめ、海外から輸入した高級食材といった約2万8,000点の商品が並ぶ。店内では、人工知能(AI)搭載の接客ロボットがサービスを提供するなど新たな試みが導入されている。

※買い物を主体とした「ロビンソン」の別業態。「食べる・買う・旅する」をコンセプトに、子どもから  大人まで一緒に楽しめる空間を提供する。

ドンキ5号店、初のバンコク西側へ
2024年までに10店舗を計画

ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は6月20日、アジア業態の「DON DON DONKI」タイ5号店を開業し、盛況を見せている。

店舗は同店初となるバンコク郊外の西側地域、MRTブルー線沿いにある商業施設「シーコン・バーンケー」の1階に入居。店内は日本にいるかのような装飾を施し、日本各地のラーメンを取り揃えた「ラーメンセンター」では麺やスープなどを自分好みにカスタマイズできるなど、これまで同店に馴染みのなかった新たな顧客層を開拓する狙いだ。  また、2022年9月にはシラチャにある商業施設「J-Park日本村」への出店を予定し、同グループ初の寿司業態「鮮選寿司」も併設されるという。さらに、24年までにタイの店舗数を10店舗まで増やす計画を表明するなど今後の展開に注目が集まる。

 

PTTORが飲料製販へ
ブンロート・ブルワリーと共同出資

タイ国内最大の石油公社PTT傘下のPTT Oil & Retail Business(PTTOR)はこのほど、ビール最大手の「シンハー」を製造販売するBoon Rawd Breweryと飲料の製造販売を目的とした共同出資会社を設立すると発表した。商品についてはReady to Drinkと話しているが、詳細については明らかになっていない。

同社CEOのJiraphon Kawswat氏は「飲食部門の強化は、総合的なライフスタイルを提供するための戦略の一つ」と言及した。

PTTORはタイ全土で2,000ヵ所以上の給油所を運営し、「カフェ・アマゾン」ブランドで展開するコーヒー店やファストフードなど約4,000の飲食店を出店。近年は特に飲食や小売りといった「ライフスタイル事業」を強化しており、給油所などに併設する飲食店や小売事業との相乗効果を目指す。

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THAIBIZ編集部

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