消費期限がある在庫の廃棄方法

THAIBIZ No.163 2025年7月発行

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    消費期限がある在庫の廃棄方法

    公開日 2025.07.09

    タイの税法上、長期保存が可能な棚卸資産(在庫)や固定資産を廃棄する際、廃棄損を損金算入するためには下記の手続きが必要であると税法で定められています(歳入局通達Paw79/2541号)。

    (1)社内で定められた在庫種類毎の廃棄基準に達しているかの確認、および廃棄の承認手続き

    (2)公認会計士立会いによる廃棄証明書の作成

    (3)廃棄30日前までに歳入局へ書面で通知

    これらに加え、廃棄前の対象在庫および廃棄作業の写真を撮っておく等の対応を取ることで税務調査時の説明資料として使える証憑になり得ます。

    食品、医薬品、化学品など長期間保存できないものの廃棄に関しては上記のうち「(3)廃棄30日前までに歳入局へ書面で通知すること」が不要と定められています。ただし、この定めは主に工場などで大量にまとめて在庫廃棄を行うケースを想定していると考えられます。

    一方で、飲食店やスーパーなどの小売店における生鮮品は消費期限切れ、品質劣化、破損などの理由により日常的に在庫廃棄が行われています。

    このような廃棄は基本的に毎日発生する上に各店舗において個々に廃棄作業を行わなくてはならないため「(2)公認会計士立会いによる廃棄証明書の作成」も毎回各店舗で行うことは実務上不可能なケースが多いと考えられます。

    このような場合、公認会計士と事前に合意の上、毎回各店舗での公認会計士の立会いは行わず、社内や店舗の責任者の立ち合いのもと廃棄を承認した社内手続き文書、廃棄現場の写真などを証憑としてとりまとめ公認会計士側へ提出し、それらを基に公認会計士側で廃棄証明書を作成して貰うという実務が行われるケースが一般的です。

    以上の手続きは廃棄損を税務上損金算入とするために必要となります。税法に則った手続きの廃棄手続きができない場合には損金算入ができません。また手続きを踏まずに処理をすることで簿外で販売を行っている可能性があるため、みなし課税を歳入局から行使される事があります。

    これらの手続きを満たしたとしても廃棄損に対してはみなしVATを納税する必要があります。通常の売上VATは顧客から預かるVATを使用することが出来る一方、みなしVATは自社から持ち出しとなってしまいます。

    ビジネス上、税務負担をより減らすためには廃品回収業者に買い取って貰えるスキームを構築するなど自社商品の特性に合わせた対策が必要です。

    J Glocal Accounting Co., Ltd. Managing Director

    坂田 竜一 氏

    バンコク在住。2007年大学卒業と同時に、東京の流動化・証券化に特化した会計事務所に就職。その後、バンコクの大手日系会計事務所で5年間、日系金融機関ほか日系企業の会計・税務、監査業務に従事。税務当局との折衝やDD業務を現地スタッフを介さずにタイ語で対応。2013年12月 J Glocal Accounting 設立。タイにおける会計・税務の専門家として、日系企業へのサポートを行っている。

    J Glocal Accounting Co., Ltd.

    Website : http://jga.asia/

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