ジェトロが支援する共創型ビジネス 日系企業の次なる海外展開戦略

THAIBIZ No.163 2025年7月発行

THAIBIZ No.163 2025年7月発行“援助”から“共創”へ ODAが変えるタイビジネス

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ジェトロが支援する共創型ビジネス 日系企業の次なる海外展開戦略

公開日 2025.07.09 Sponsored

日本貿易振興機構(ジェトロ)は、国内外に広範なネットワークを有し、日本と世界を結ぶ架け橋として日系企業の事業展開を支援している。近年、タイにおいてはイノベーション分野への支援に一層注力しており、日系スタートアップとタイの大手企業とのマッチング支援においても着実な成果をあげている。

さらに、在タイ日系企業と台湾企業など第三国企業との連携支援にも着手するなど、変化するビジネス潮流に対応した新たな支援スキームの構築も進めている。タイに進出する日系企業が活用可能なジェトロの各種支援策について、ジェトロ・バンコク事務所の上江洲祐貴氏に話を聞いた。

第4回】日本貿易振興機構(ジェトロ)


ジェトロ・バンコク事務所 Director, Investment Promotion Department 上江洲 祐貴 氏

ジェトロ・バンコク事務所 1954年設立。日本企業と世界を「つなぐ」をミッションとして、対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等のタイ展開支援に取り組む。タイにおける動向調査や研究も実施。世界56ヵ国に76事務所、日本国内47都道府県に49事務所を構え、広範なネットワークを強みとする。

お問い合わせ TEL: 02-253-6441 Website: www.jetro.go.jp/jetro/overseas/th_bangkok E-mail: bgk-info@jetro.go.jp


木下 ジェトロの組織の特徴や活動の全体像について教えてください。

上江洲 ジェトロは世界56ヵ国に76事務所、日本国内47都道府県に49事務所を構えており、広範なネットワークを活かして日本の貿易と投資の振興に向けた取り組みを推進しています。主な活動の柱は、①対日投資促進とイノベーション支援、②農林水産物・食品の輸出拡大、③中堅・中小企業の海外展開支援、④調査・研究を通じた企業活動の支援­­­­−の4つです。

タイで近年注力している分野の一つが、①の“日タイ企業間のイノベーション創出”です。日本と海外企業の協業連携を創出するプラットフォーム「J-Bridge」や、日系スタートアップ企業を支援する「グローバル・アクセラレーション・ハブ」の提供、各種ピッチイベントを開催しています。

こうした施策を提供するうえで、当事務所では企業との対話を重視し、ニーズや課題を丁寧に把握しています。日本企業だけでなく、タイ企業とのコミュニケーションも重視し、双方にとってのメリットに繋がる協業を心がけています。

木下 タイでの支援の中で特に可能性が広がっている分野、注目している動きなどはありますか。

上江洲 近年は脱炭素分野への注目が高まっており、当事務所では「サステナブルビジネスデスク」を設置し、日系企業のビジネス機会創出、タイ企業との協業によるイノベーション支援に力を入れています。

展示会やセミナーを通じたビジネスマッチングや、同分野に取り組む日系企業を紹介する「カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルビジネスカタログ」の刊行を行っています。

また自動車産業の低迷を受け、日系顧客以外への販路を模索する動きも見られます。ジェトロが実施した在タイ日系企業の動向調査では、B2Bビジネスのターゲット層は現状、在タイ日系企業が約9割を占めますが、「将来的にはローカルや非日系企業も視野に入れたい」との回答が約6〜7割にのぼりました。

こうしたニーズを受け、在タイ日系企業と在タイ台湾企業とのマッチング支援を実施し、昨年11月には台湾貿易センター(TAITRA)と連携イベントも行いました。今年度は中国企業との連携も検討中です。ASEANの中心であるタイを拠点に第三国との連携実績を築くことで、他国への横展開を見据えたビジネスの可能性を広げたいと考えています。

第三国連携(台湾セミナー商談会)の様子

木下 海外ビジネスで日系企業がつまずきやすいポイント、そうした課題に直面した時に活用できるジェトロの具体的な支援策について教えていただけますか。

上江洲 多くの企業が市場やニーズの把握、法規制の情報不足に課題を抱えています。当事務所では、「ビジネス短信」や「地域・分析レポート」などの情報発信に加え、「海外ブリーフィングサービス」や、タイ在住の分野別コーディネーターによる無料相談「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」などの支援メニューを用意しています。

また、農林水産分野では「農林水産物・食品輸出支援プラットフォーム」にて最新の規制情報の発信、相談対応、各種調査レポートを公表しています。

有料の「海外ミニ調査サービス」では、海外取引の足がかりとなる現地法令や統計資料などを調査することができ、タイは世界で最も申し込みの多い国です。企業の相談は多種多様で、個別状況に応じた対応を行っています。

木下 現地の市場や制度を把握するだけでもハードルが高いなかで、ジェトロの支援は心強いですね。とはいえ、実際に事業を進める段階では、さらに別の壁にも直面するのではないでしょうか。

上江洲 現地パートナーの選定や販路開拓に苦戦する企業も多く見受けられます。中小企業向けの「現地支援プラットフォーム」では情報提供から販路開拓支援まで対応します。「海外ミニ調査」では、輸出入や代理店、製造委託等のパートナー候補となりうる企業を最大10社選定できます。

また、製造業やエネルギー、コンテンツなど多岐にわたって展示会や商談会などを通じたマッチング支援も行っており、農林水産食品分野では、地方や周辺国への日本産品の拡大に力を入れています。

情報はジェトロウェブサイトやメールマガジンでも随時発信しています。イベントでのマッチングは容易ではありませんが、精度を高めるため、事前準備を重視しています。

東南アジア最大級の食品見本市「THAIFEX」にてジェトロが出展したジャパンパビリオン

木下 今後タイでのビジネスで成長が期待される分野についてもお聞かせください。

上江洲 高齢化による介護や健康促進、農業の生産効率化などは、タイの社会課題がビジネスチャンスになりうる分野です。今年9月には東南アジア最大級の医療展示会「Medical Fair Thailand 2025」に2017年ぶりとなるジャパンパビリオンを出展予定で、介護やデジタルヘルス関連製品も紹介予定です。

このような分野は、スタートアップや大手企業の新規事業部門による参入も多く、オープンイノベーションの広がりも期待されます。

木下 海外展開を目指す企業にとって、公的支援機関をどう活用するかは重要なテーマです。ジェトロがJICAをはじめとした機関と連携することで、どのような相乗効果が生まれると考えますか。また、最後に日系企業に向けてのメッセージをお願いします。

上江洲 企業支援においては、公的機関ごとに担う支援のフェーズは異なりますが、連携することでより効果的な支援が可能になります。

例えば、JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)」で、現地ニーズの把握や実証を通じビジネスモデルの精緻化を行い、その後、ジェトロのマッチング支援で事業化を進めるという、段階に応じた切れ目ない支援が可能になると考えています。

ジェトロは『世界とつながる。ともに、一歩先へ』を理念に掲げております。当事務所が70年にわたりタイで培ったネットワークを在タイ日系企業の皆様にご活用いただければ幸いです。初期段階のご相談から丁寧に対応しておりますので、ビジネスの一歩を踏み出す際は、ぜひお気軽にご相談ください。

JICAタイ事務所
Representative

木下 真人 氏

タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。開発学修士、MBA保有。
Email:ti_oso_rep@jica.go.jp

JICAタイ事務所

31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey
Bangkok 10110, THAILAND
TEL:02-261-5250

Website : https://www.jica.go.jp/overseas/thailand/office/index.html

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