連載: JICA - 日系企業の強い味方!タイで頼れる支援機関
公開日 2025.08.08 Sponsored
タイでの事業展開を成功させるには、市場動向の把握や現地拠点の経営ノウハウの習得が欠かせない。とりわけ製造業では、経営と技術が表裏一体の関係にあり、工場での不具合対応や試験・評価方法など、技術面での課題も無視できない。
実際、経営と技術の課題が複雑に絡み合うケースも少なくなく、両面からのアプローチによる総合的な支援が効果を発揮する。
公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下、「公社」)タイ事務所と、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(以下、「都産技研」)バンコク支所は、こうしたニーズに応えるべく連携を図り、日系企業のタイ展開を後押ししている。
両事務所の活動内容や連携体制、そして支援によって生まれた具体的な成果について話を聞いた。
公益財団法人 東京都中小企業振興公社 タイ事務所 所長 酒井 康秀 氏
お問い合わせ TEL: 02-611-2641 Website: https://thai.tokyo-sme.com/contact
地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター バンコク支所 支所長 川口 雅弘 氏
お問い合わせ TEL: 02-712-2338 Website: www.iri-tokyo.jp/form/26
木下 両事務所のそれぞれの役割と組織概要について教えていただけますか。
酒井 公社は東京都と連携し、企業の成長段階に応じた多様な支援を展開しております。2015年に設立されたタイ事務所では、タイ工業省や現地銀行と連携しながら、経営支援、ビジネスマッチング、ネットワーキング、ASEAN情報の提供など、現地密着型のサポートを行っています。
経営支援では、現地に精通した専門家が人事、会計、許認可など幅広い分野の相談に対応しており、平日午後1〜5時に常駐。無料で何度でも利用可能です。東京都内に登記があるか否かを問わずすべての日系企業が対象で、これまでの相談実績は3,000件を超えています。
また、東京都内に本店・支店・事業所の登記がある中小企業を対象としたビジネスマッチングでは、現地事情に詳しいアドバイザーが、販売代理店や調達先、生産委託先、合弁パートナーなどを紹介。ニーズに応じて、市場調査や候補企業リストの提供、個別マッチングなども行っており、これまでのマッチング実績は5,000件を超えています。
また、タイの食品メーカーの課題を起点に、都内中小企業の商品や技術でソリューションを提供する「食ビジネスマッチング」にも注力しており、健康志向商品への原料供給や生産工程を自動化する機械導入などの成約が実現しています。
川口 都産技研は、東京都内中小企業の振興と都民生活の向上を目的に設置された公設試験研究機関です。職員の約半数が技術職、そのうち約4割が博士号を有しています。東京本部・支所は技術支援と研究活動を主な業務としています。
2015年に設立されたバンコク支所は、①技術相談対応、②基礎技術セミナー、③企業交流会やラボツアー、の3つの事業を展開。
支援対象はASEAN地域に進出している、または進出を目指す日系企業および日本法人で、年間400件以上の技術相談に応じており、これまで延べ1,800社を超える日系企業・日本法人より技術相談が寄せられています。相談内容によって、東京本部との連携や現地研究機関・大学の紹介も行っています。
技術相談は分野を問わず幅広く受け付けており、業種別では機械・装置系からの相談が最も多く、そのうちの約4割を自動車関連が占めています。
木下 それぞれ経営と技術の分野で強みを発揮されている公社タイ事務所と都産技研バンコク支所ですが、どのように連携しながら企業を支援しているのでしょうか。
酒井 経営相談のなかには、技術的な課題が含まれるケースも多く見られます。そうした場合には、都産技研と連携して対応しています。昨年、都産技研バンコク支所が当事務所の隣に移転したことで、両機関の進捗状況の共有や連携が、より迅速かつスムーズに行えるようになりました。
例えば、日系企業がタイでの事業展開初期に研究開発を行う段階では、都産技研が技術支援を担当し、その後の商用化フェーズでは当事務所が市場調査やマッチング支援を通じて事業の軌道化を支援します。
さらに、事業運営中に工場等で技術的不具合が生じた場合には、再び都産技研が技術面をサポートするといった形で、事業のライフサイクル全体を見据えたシームレスな支援が可能となっています。 また、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(ジェトロ)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)など、他の日系公的機関とも連携することで、より重層的かつ多面的な支援が可能になります。
近年では、現地化を進める日系企業が増加しており、「いかにローカルに入り込むか」が共通の課題となっています。そこで当事務所では、タイの政府機関や業界団体、現地企業とも連携し、日タイ双方の共通課題を設定したうえでの協力やマッチングにも注力しています。
木下 実際に活用された企業がどのような支援を受けて成果につなげているか、読者の関心も高いと思います。特に印象に残っている支援事例についてお聞かせいただけますか。
川口 東京都のスタートアップ企業が、2014年に都産技研本部内にラボを設置し、石灰石を主原料としたプラスチックや紙の代替製品の研究開発に取り組んできました。
2023年には、公社タイ事務所の支援により、タイの大手スーパーマーケットグループの買い物カゴに同製品が採用され、さらにレジ袋への導入も実現しました。技術開発から市場展開まで、両事務所が連携してシームレスに支援したことで、成果につながった好例です。
酒井 リチウムイオン電池の蓄電量で世界最高水準を達成した東京の大学発スタートアップに対しては、当事務所がタイの国立大学発スタートアップとのマッチングを実施し、日タイ両国のスタートアップによる共同開発が実現しました。
日本の先端技術とタイの現地ニーズが融合することで、新たなイノベーションが生まれています。このようなオープンイノベーション型の取り組みも近年増加しており、日本の技術がタイの社会課題解決に貢献する可能性を強く感じています。
木下 実際の事例を聞いて、「自社も相談してみたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。最後にタイに進出を検討している、あるいは進出済みの日系企業の皆様に、メッセージをお願いします。
酒井 当事務所はどんなに小さなことでも真摯に向き合うことをコンセプトとしています。「タイ進出を検討しているが、まだ決めかねている」といった初期段階の企業から、現地市場やビジネス環境に関するご相談をいただくケースも少なくありません。
タイでの事業展開を考えている企業の皆様は、ぜひ困った時には些細な事でもお気軽にご相談ください。
川口 そもそも、技術相談に対応できる公的機関が限られている中、当支所では分野を問わず幅広く対応しています。さらに、公社タイ事務所と隣接していることで、連携を活かした対応力の幅も広がったと自負しています。
「タイにも技術相談ができる公的な窓口がある」ということを、まずは知っていただければと思います。技術に関する困り事があれば、どんなことでもご相談ください。
JICAタイ事務所
Representative
木下 真人 氏
タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。開発学修士、MBA保有。
Email:ti_oso_rep@jica.go.jp
JICAタイ事務所
31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey
Bangkok 10110, THAILAND
TEL:02-261-5250
Website : https://www.jica.go.jp/overseas/thailand/office/index.html
SHARE