JBICの政策金融で現地の社会課題の解決や中堅・中小企業を支援

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JBICの政策金融で現地の社会課題の解決や中堅・中小企業を支援

公開日 2025.09.10 Sponsored

「大規模インフラへの融資」というイメージが強い株式会社国際協力銀行(JBIC)だが、近年タイでは中堅・中小企業向けの支援にも力を入れている。業界や案件規模を問わず、融資に加え、タイ側カウンターパートとの関係構築支援や情報提供を通じて、中堅・中小企業の海外展開を後押ししている。

今年4月には、在タイ日本国大使館および複数の日系公的機関と共同で、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の下で省エネ関連投資を促進するプラットフォームを立ち上げ、今後は省エネ分野にも力を入れていく方針だ。

中堅・中小企業向け支援の詳細やその活用メリット等について、JBICバンコク駐在員事務所の白石剛規首席駐在員に話を聞いた。

第6回】株式会社国際協力銀行(JBIC)


株式会社国際協力銀行(JBIC) バンコク駐在員事務所 首席駐在員 白石 剛規

株式会社国際協力銀行(JBIC) バンコク駐在員事務所 日本および国際経済社会の健全な発展に貢献することをミッションとし、日本企業や日系現地法人の機械・設備や技術等の輸出・販売を対象とした輸出金融、資源等の重要物資の輸入のための輸入金融、日本企業の海外投資事業に対する投資金融など、さまざまな金融スキームを用いて日本企業を総合的に支援。バンコク駐在員事務所は、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーを管轄。

お問い合わせ TEL: 02-252-5050 Website: www.jbic.go.jp/ja/about/bangkok.html


木下 まずは、JBICの役割、融資の特徴について教えていただけますか。

白石 政府系金融機関であるJBICは、重要資源の海外における確保、日本の産業の国際競争力強化、環境保全型事業の推進、国際金融秩序の安定の分野において、日本経済と国際社会の発展に寄与しています。

バンコク駐在員事務所は、JBICが世界18ヶ所に展開する海外駐在員事務所の中で最も長い歴史を誇り、タイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスの4ヵ国を管轄しています。実は、国・地域別の出融資承諾件数で見ると、2013年度以降、全世界においてタイは常にトップの位置を維持しています。

JBICによる融資の最大の特徴は、「民業補完」が原則で、民間の金融機関、例えば地方銀行などと役割を分担して共同で融資を行っているところです。民間資金を引き寄せる「呼び水」の役割を果たしており、JBICの直近の年間出融資・保証承諾額は約1.5兆円にのぼりますが、それによって2倍以上の民間資金が新たに市場に流れ込んでいます。こうした仕組みが、日本企業の海外事業を力強く後押ししています。

木下 特にタイで注力している分野やテーマはありますか。

白石 現在、JBICは中期経営計画に沿って、中堅・中小企業の支援を通じたサプライチェーンの強靭化や、タイの社会課題に対し日本企業の技術やノウハウをソリューションとして提供する形での案件形成に力を入れています。

中でも、特に注力しているのが、省エネ分野への投資です。今年4月には、在タイ日本国大使館や一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)バンコク事務所などと共同で、AZEC構想の下で省エネ関連投資を推進する枠組み「AZEC-SAVE(Smart and Advanced Value-chain for Environment)プラットフォーム」を立ち上げました。

このプラットフォームでは、省エネに取り組む企業と政府・公的機関を結びつけ、情報発信、人材育成、企業間マッチング、さらにファイナンスに至るまで、一貫した支援を提供します。タイの脱炭素化を加速させる“ハブ”として、官民一体となった取り組みを推進しています。

今年7月には、同プラットフォームを通じたJBIC初の支援が実現しました。東京センチュリー株式会社のタイ法人であるTISCO Tokyo Leasing Co., Ltd.(TTLCL)との間で、投資クレジットライン設定のための一般協定を締結。

同クレジットラインは、TTLCLがタイにおける省エネ機器等に関連するファイナンス・リースを提供するための必要資金を対象とした、民間金融機関との協調融資です。協調融資総額は5,000万米ドル(約18億バーツ)にのぼります。

株式会社国際協力銀行(JBIC) バンコク駐在員事務所 首席駐在員 白石 剛規 氏

木下 省エネ関連事業を展開する企業には朗報ですね。その他、JBICの融資支援はどのような企業やプロジェクトに適しているとお考えでしょうか。また、JBICを活用するメリットについても教えてください。

白石 JBICの支援は業種や分野、金額規模を問わず、幅広く対応しています。中堅・中小企業向けの融資には、条件面での優遇措置があり、地方銀行との協調融資案件も年々増加しています。 また、JBICの強みは資金提供にとどまりません。

例えば、タイ政府や地場企業との関係構築を希望される場合には、JBICのネットワークを活かしてマッチング支援を行っているほか、タイでの事業展開に関する情報提供にも対応しています。こうした具体的な支援事例は、広報誌『JBIC Today』にも多数掲載していますので、ぜひ参考にしていただきたいです。

JBICを活用するメリットは、大きく3つあります。まず、競争力のある金利です。 次に、政府系機関を含むタイでの広範なネットワークを活かし、問題発生時には迅速な対応支援を行えるという付加価値があります。

そして、現地通貨建てでの融資が可能な点です。現地通貨建てであれば為替リスクを回避でき、さらにニーズに応じて米ドル建てにも柔軟に対応します。こうした仕組みにより、企業ごとの事情に合わせたきめ細かなサポートを実現しています。

木下 JBICの支援を受けたい企業は、まずどのような準備を行う必要がありますか。また、融資の評価ポイントも教えていただけますか。

白石 一般的な投資案件では、まず事業・投資計画と、社内での当該事業の位置づけや狙いを明確にしていただくことをお願いしています。これら基礎情報がそろっていると、JBICとしても「その事業が、日本企業の国際競争力の強化に資するか、タイのニーズにどう貢献できるか」を具体的に検討できます。

ただし、計画が完成していなくても構いません。むしろ、できるだけ早い段階でご相談いただければ、与信面も含めて案件組成に向けた可能性を一緒に検討することができます。将来を見据えた初期段階でのご相談も大歓迎です。

融資における評価ポイントとしては、事業の収益性や位置づけに加え、「その事業が日本企業の国際競争力の強化にどう寄与するか」という観点も重視しています。JBICの融資は、単なる資金提供ではなく、政策的な目的を持った金融支援です。だからこそ、意義のある案件を積極的に応援したいと考えています。

木下 JICAなど他の公的機関との連携の重要性については、どのようにお考えですか。また、資金調達ニーズのある日系企業に向けてメッセージをお願いします。

白石 AZEC-SAVEは、在タイ日本国大使館、AOTSバンコク事務所、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)バンコク事務所と共同で構築した枠組みです。

インドネシアではJICAと連携して案件を進めた事例もあります。それぞれの機関が持つ強みを掛け合わせることで、調査から事業化、ファイナンスまで一気通貫の支援が可能になる。ここに公的機関同士が連携する大きな意義を感じています。

一般投資案件においても、他の公的機関と連携することで、事業のフェーズに応じた重層的な支援が実現できると考えています。

融資に関するご相談はもちろんですが、タイでの事業展開に必要な情報をお探しの際も、日本の東京本店・大阪支店、またはバンコク駐在員事務所にお気軽にご連絡ください。日系企業の皆様からのご提案やご要望を伺いながら、互いに知恵を出し合って、より意義のある案件を一緒に形にしていければと考えています。

JICAタイ事務所
Representative

木下 真人 氏

タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。開発学修士、MBA保有。
Email:ti_oso_rep@jica.go.jp

JICAタイ事務所

31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey
Bangkok 10110, THAILAND
TEL:02-261-5250

Website : https://www.jica.go.jp/overseas/thailand/office/index.html

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