ArayZ No.80 2018年8月発行タイの会計・税務 概観
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2018.08.20
目次
・2018年5月のタイ経済は堅調な拡大基調になりました。国内需要の回復が顕著になりつつあり、民間消費と民間投資が拡大しました。また、海外の需要増と世界市場の石油価格の上昇により、タイの輸出が拡大しました。内外需の拡大が製造部門の成長に貢献しました。
・2018年6月の消費者物価の上昇率は、前年同月比1.38%上昇し、12ヵ月連続で上昇しました。世界市場における原油価格の上昇により、国内燃油小売価格と調理ガス価格が上昇したことが主な理由です。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、同0.83%の上昇で、前月から伸びがほぼ横ばいでした。
・2018年のタイ経済は内外需に支えられ、引き続き拡大基調を辿っています。2018年下半期のタイ経済は、輸出と観光業が依然として重要な原動力になると見込まれます。それに加え、2018年度補正予算(1,000億バーツ)による政府支出が下半期のタイ経済を押し上げるもう一つの要因となります。公共投資やインフラ投資の実施もさらに加速する見通しです。民間投資も公共投資拡大に追随して上向く見込みです。よって、2018年のタイ経済成長率は、通常ケースで前年比4.5%増となると予測します。
・2018年の消費者物価は上昇傾向にある見込みです。コメなど農産物価格の回復傾向や、世界原油価格の上昇傾向などが消費者物価の押し上げ要因となる見通しです。カシコンリサーチセンターは、2018年のヘッドライン・インフレ率は通常ケースで前年比1.1%増となると予測します。
タイ中央銀行が発表した2018年5月の重要な経済指標によると、タイ経済は堅調に拡大を続けました。国内需要の回復が顕著になりつつあり、民間消費と民間投資が拡大しました。また、輸出の好調が持続しているほか、内外需の拡大が製造部門の成長に貢献しました。
5月の民間消費は前年同月比5・6%上昇し、前月の同5・8%増からほぼ横ばいでした。全ての項目で消費が上昇しました。農業所得の拡大と非農業部門の被雇用者の収入の増加が支援材料となっています。
一方で、民間投資は前年同月比2・4%上昇しました。特に国内の機械・設備と商用車への投資が寄与しました。機械・設備の輸入が、特に通信、エネルギー、コンピュータで拡大しました。建設投資も拡大しました。主に建材の販売高が伸びました。
5月の輸出は、前年同月比13・1%上昇しました。海外からの引き合いの増加と世界市場における原油価格の上昇によるものです。とりわけ石油関連製品や、乗用車と商用車、タイヤやギアボックス、エンジンなどの自動車部品の輸出が伸びました。また、ハードディスク駆動装置の輸出が設備増強の結果で拡大したほか、電流制御機器やワイヤーハーネスなどの電子部品の輸出が好調でした。
工業生産に関しては、前年同月比3・2%増となり、7ヵ月連続でプラス成長となりました。民間消費と輸出が順調に拡大した結果、工業生産は特に自動車、化学品、食品・飲料部門で拡大しました。
観光業では、外国人観光客数が前年同月比6・4%増の280万人となり、前月に引き続き拡大しました。サッカーワールドカップ・ロシア大会の開催を控えたロシアからの旅行者は前年同月比13%減少したほか、イスラム教の断食月(ラマダン)に当たり、マレーシアや中東からの旅行者も減少しました。
商務省が発表した2018年6月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比1・38%上昇し、12ヵ月連続で上昇しました。世界市場における原油価格の上昇により、国内燃油小売価格と調理ガス価格が上昇したことが主な理由です。
品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比2・20%上昇しました。4ヵ月連続で伸びが加速しました。昨年9月の物品税制改正の影響を受け、たばこ・酒が同5・9%上昇しました。それに加え、運輸・通信のうち燃料石油も同12・9%上昇しました。一方で、食品・飲料部門は同0・03%減となり、ほぼ前年並みでした。米・粉製品の上昇率が2・7%となりました。果物・野菜、肉・魚、卵・乳製品は下落したものの、非アルコール飲料が同1・60%上昇するなどその他はプラスでした。
一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・83%の上昇で、前月から伸びがほぼ横ばいでした。
7月に入り、円対ドルの変動は112円台まで上昇し、ドル高・円安傾向を見せました。ドル高の要因は、米長期金利の上昇や米経済の好調です。バーツ対ドルも同様にドル高傾向を見せました。
今後の外為相場の変動について、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米経済は非常に良好で失業率が近年まれに見る低水準にあり、インフレ率は当局の目標とする2%に近いと述べました。一方で、貿易摩擦が米経済成長に打撃を与えると警告しました。今後の外為相場は、ドル高傾向を継続する可能性が高いですが、リスク要因として米中貿易摩擦が長期化することが懸念されます。
2018年前半のタイ経済は順調に拡大を続けました。輸出と観光業の好調が持続しているほか、国内需要の回復が鮮明になりつつあります。内外需の拡大が製造部門の成長に貢献しました。その結果、2018年第1四半期のタイ経済成長率は前年同期比4・8%増となり、 過去5年間で最大の伸びとなりました。また、第2四半期のタイ経済成長率も同4・0%以上を維持する見通しです。
2018年後半のタイ経済に関しては、引き続き拡大基調にある見込みです。輸出と観光業が依然として堅調に拡大を続けると見込まれます。それに加え、2018年度補正予算(1,000億バーツ)による政府支出が下半期のタイ経済を押し上げるもう一つの要因となります。公共投資やインフラ投資の実施もさらに加速する見通しです。
タイ政府は、大型インフラ投資を通じて将来の経済発展を支える基盤を築くと同時に、経済成長を押し上げる景気対策の一つとしても投資を推進しています。2018年の主要な公共投資としてイエローライン・ピンクライン・オレンジラインの新電車路線に代表される国営企業関連大型交通インフラ整備があります。また、鉄道の複線化やスワンナプーム国際空港の第2期拡張事業などの現在進行中のプロジェクトもあります。その結果、カシコンリサーチセンターは、2018年の公共投資が昨年と比べ大幅に増加し、通常ケースで前年比8・0%増になると予測します。
一方で、民間投資も公共投資拡大に追随して上向く見込みです。公共投資拡大および政府による民間投資の刺激措置により、投資家の信頼感が改善傾向に転じ、全体的な投資環境が改善すると予想します。カシコンリサーチセンターは、2018年の民間投資が通常ケースで前年比3・5%増になると予測します。
民間消費は、依然として家計債務残高の重石により下押し圧力がかかる見込みです。しかしながら、農産物価格の上昇と農業生産量の拡大により、農業者の所得が増大傾向となる見通しです。また、タイ政府は家計消費を活性化させるため、低所得者向けの支援策など購買意欲の喚起を行う政策を昨年に引き続き実施しています。よって、カシコンリサーチセンターは、2018年の民間消費が通常ケースで前年比3・5%増になると予測します。
2018年も輸出の拡大基調は続く見通しです。タイの貿易相手国の景気全体が回復傾向にあることが、タイの輸出成長にプラスに影響することが一因です。
また、世界原油価格の上昇傾向により、石油価格に連動して輸出価格が変動する製品群では石油製品、石油化学品の輸出が拡大傾向にあります。カシコンリサーチセンターは、2018年のタイ輸出額が通常ケースで前年比8・8%増になると予測します。
一方で、消費者物価も上昇傾向にある見込みです。コメなど農産物価格が回復傾向にあることが一因です。また、世界原油価格の上昇傾向とともに交通費や電力料金などが上昇する見込みで、消費者物価の押し上げ要因となると予想します。カシコンリサーチセンターは、2018年のヘッドライン・インフレ率は通常ケースで前年比1・1%増となると予測します。
従って、カシコンリサーチセンターは、2018年のタイ経済成長率が、通常ケースで前年比4・5%増の見通しで、前年の同3・9%増から加速すると予測しています。
※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。
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THAIBIZ編集部
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