タイにおけるeコマース規制

THAIBIZ No.162 2025年6月発行

THAIBIZ No.162 2025年6月発行激動するタイ市場を走破せよ! 三菱自動車が挑む日本のHEV最前線

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    タイにおけるeコマース規制

    公開日 2025.06.10

    (eコマース)登録の義務免除

    少し前のことではあるが、2024年6月5日、タイ商務省(MOC)は、「事業者が商業登記しなければならない事業および商業登記法の適用を受けない事業を定める商務省告示(B.E.2567)」を公布した。これにより、一定の法人形態に対して電子商取引(eコマース)登録の義務が免除されることとなった。

    この免除の対象となるのは、非公開有限会社、登録済み普通合名会社、有限責任合名会社、および公開有限会社である。これらの法人は、従来必要とされていたeコマース登録証の取得手続きを要せず、オンライン販売を開始するまでの時間とコストを大幅に削減できるようになった。

    在タイ日系企業は、非公開有限会社形態を採用している場合がほとんどであろうから、その射程は広く、歓迎すべき規制緩和といえる。

    直接販売およびダイレクトマーケティング法に基づく登録義務

    もっとも、この告示は商務省の所管する商業登記およびeコマース登録のみに適用されるものであり、それ以外の法規制が免除されるわけではない。見落としてはならないのが「直接販売およびダイレクトマーケティング法」の存在である。

    同法は、オンライン、電話、カタログ等を通じて遠隔地の消費者に対して商品やサービスを販売するすべての事業者に対して、原則として消費者保護委員会(OCPB)への登録と認証取得を義務付けている。

    上述の告示により、eコマース登録が免除される場合であっても、ダイレクトマーケティング活動を行っていれば、別途OCPB登録が求められる(実際、eコマースは原則としてダイレクトマーケティング活動に該当すると考えられている)。

    小規模事業者に対する免除措置

    しかし、OCPB登録は一律ではなく、免除対象が定められている。注目すべきは、中小企業振興法に基づく「中小企業(SME)」の扱いである。

    タイにおける中小企業の定義は業種ごとに異なるが、たとえばサービス業の場合、「年間売上高5,000万バーツ超〜3億バーツ以下」または「従業員31人以上〜100人以下」、製造業では「年間売上高1億バーツ超〜5億バーツ以下」または「従業員101人以上〜200人以下」が中小企業に分類される。

    これらの条件を満たし、かつ中小企業振興法に基づきSMEとして登録された事業者は、ダイレクトマーケティング事業者と見なされず、「直接販売およびダイレクトマーケティング法」に基づくOCPB登録義務が免除される(B.E. 2545)。

    この基準に照らせば、タイで事業を展開する日系中小企業の多くは、OCPB登録が不要になると考えられる。また、中小企業振興法に基づく中小企業登録は、決して難しい手続きではなく、比較的簡易に完了するものであるため、大いに利用すべきであろう。

    eコマース登録の義務が免除されたからといって、オンライン販売に伴う全ての法的責任が消滅するわけではない。商業登記法とダイレクトマーケティング法は別体系の規制であり、各法の射程と免除規定を正しく理解する必要がある。

    GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
    代表弁護士

    藤江 大輔 氏

    2009年、京都大学法学部卒業、2011年に京都大学法科大学院を修了後、司法試験合格。2012年にGVA法律事務所に入所。 2016年より同事務所パートナー弁護士に就任し、2017年にバンコクでGVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.を設立、同代表に就任。2021年より大阪に弁護士法人GVA国際法律事務所を設立し、代表を兼任。

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