
カテゴリー: 会計・法務
連載: 知らなきゃ損する!タイビジネス法務 - GVA / TNY法律事務所
公開日 2025.12.09
2025年11月7日、労働者保護法(以下「LPA」)の第9号改正が官報に公布され、2025年12月7日から施行されます。今回の改正は、出産・育児に関する休暇制度の拡充を中心とするものであり、企業における休暇制度の運用にも影響を与える内容です。本コラムでは、改正前の規定を踏まえつつ、主な改正点を整理します。

目次
従来、妊娠している女性労働者は、1回の妊娠につき、検診日を含めて最大98日間の出産休暇を取得することができました(LPA41条)。また会社は、この出産休暇期間のうちの45日間については、当該労働者に対して通常賃金を支払う必要がありました(LPA59条)。
今回の改正は、これらの出産休暇に関する規定を拡充するものになっています。
LPA41条1項の改正により、出産休暇の取得可能期間は98日から120日に延長されます。これにより、女性労働者は、1回の妊娠につき、最大120日間の出産休暇を取得できるようになります。
また、LPA59条の改正により、会社が賃金を支払う出産休暇の期間は、45日から60日に延長されます。そのため、会社は今後、出産休暇期間のうちの60日間分の通常賃金を支払う必要があります。
LPA41条4項の新設により、女性労働者は、子が合併症、異常または障害を生じるおそれがある状態の場合、最大で連続15日間の追加の出産休暇を取得できるようになります。この休暇を取得する場合、当該労働者は、子の状態を示す医師の診断書の提出が必要になります。
また、LPA59条の1の新設により、会社はこの休暇が取得されたすべての期間に対して、通常賃金の50%を支払うことが必要になります。
LPA41条の1の新設により、労働者は配偶者の出産の支援のため、出産前後において最大15日間の休暇を取得できるようになります。この休暇は、出産日から90日以内に限り取得することができます。
また、LPA59条の2の新設により、会社はこの休暇が取得されたすべての期間に対して、通常賃金を支払うことが必要になります。
出産休暇に関する改正とは別に、今回の改正ではLPA115条の1の規定も見直されています。同条は、10名以上の労働者を雇用する会社に対し、毎年1月に労働条件の報告書を提出する義務を定めています。この提出義務自体は従来から定められていましたが、旧条文では、これに加えて労働監督官が毎年12月に報告書の書式を企業へ送付するという手続きが定められていました。
今回の改正では、行政手続きの簡素化を目的として、この行政側の手続きに関する文言が削除され、今後は事務総局長が定める基準に従う旨が規定されました。そのため、運用面の基準については、今後のさらなるアナウンスを引き続き確認しておく必要があります。
今回の改正は、2025年12月7日から施行され、同日以降、タイ国内のすべての会社に適用されます。そのため、各会社において今回の改正に応じて出産・育児に関する制度の拡充を図り、就業規則や社内規程の改訂、従業員への制度説明、休暇申請時の運用ルールの整備など、必要な対応を進めていくことが必要となります。
また、今回新設・改正された各種制度については、内容の詳細が明確でない部分もあります。この点に関して、今後行政からガイドライン等が発表される可能性があるため、これらの動向を継続的に確認しつつ、必要に応じて自社の制度運用を見直していくことが重要です。

GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士
藤江 大輔 氏
2009年、京都大学法学部卒業、2011年に京都大学法科大学院を修了後、司法試験合格。2012年にGVA法律事務所に入所。 2016年より同事務所パートナー弁護士に就任し、2017年にバンコクでGVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.を設立、同代表に就任。2021年より大阪に弁護士法人GVA国際法律事務所を設立し、代表を兼任。
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CONTACT : info@gvathai.com
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