ArayZ No.111 2021年3月発行コロナとタイ経済
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カテゴリー: 会計・法務
連載: New*GVA / TNY法律事務所 – タイビジネス法務
公開日 2021.02.28
新型コロナウイルスの影響で国際渡航が制限されて久しい。
この渡航制限は、人の往来のみならずEMSを含む郵便物等の配送網にも影響し、文書送付に想定外の期間を要する事態も頻発している。
日本ではデジタル庁創設、脱ハンコ等、急速にDX(デジタル・トランスフォーメーション)への期待が高まっており、これを受けて電子契約を導入する企業が急激に増えた。
電子契約は物理的な書類の取扱いに伴う不便さを解消可能だが、タイにおいてどのように扱われているのだろうか。
タイではElectronic Transactions Act B.E.2544(以下「ETA」)に従う限り、電子契約は法律上適法な形式であり、電子契約の形式によって契約を締結すること(=署名をすること)が可能である。
ただし、民商法典上の家族や相続に関する事項(婚姻届や遺書等)などについては電子署名の有効性が認められていない。
電子署名に関しては、本人の意思に基づいて署名がされたのかについて疑義が生じる場合がある。この点、ETA第26条によれば、4つの要件を全て満たす場合、その電子署名は「信用性がある」とされている。
①その電子署名が、当該データ内で利用されている範囲において、その電子署名の署名者にのみ紐づけられていること
②署名時において、その電子署名が署名者により管理されており、それ以外の者の管理下にないこと
③署名後、電子署名に対して行われた変更が検出できること
④電子署名について、データに記載された情報の完全性を保証することが法律上要求されている場合、電子署名が付された時以降のデータ内容変更の有無が検証できること
法令上は4つの要件に分かれているが、①と②は概念として近く、大まかに捉えれば「署名者特定機能」を要求していると言えるだろう。③と④も同様に近い概念であり、こちらは「改ざん防止機能」を要求しているものと言えよう。
そして、2020年5月に電子取引開発局は、電子署名の概要と条件を示すガイドラインを発表した。このガイドラインは、先述のETA第26条の要件を満たす「信用性のある」電子署名として、PKI(Public Key infrastructure)技術を利用した「デジタル署名」を例に挙げている。
ガイドラインに過ぎないとはいえ、タイにおいて法令の要件を満たす具体的な技術の例示が存在することの意義は大きい。
なお、用語が似ているため混乱するが、「デジタル署名」とは電子署名の一種である。技術的な詳細は割愛するが、電子署名にPKI技術という高度なセキュリティ技術を組み合わせたものが「デジタル署名」だと理解すれば分かりやすい。
デジタル署名は通常の電子署名よりもセキュリティレベルが高く、署名者特定機能と改ざん防止機能を備えていると理解されている。
このように、タイにおいても電子署名を使用することは可能とされている。
例えば、契約書を電子署名によって取り交わしたとして、電子署名であることだけを理由に裁判上の証拠能力が否定されることもない。
デジタル署名等のセキュリティ技術が確立してきたことにより、タイにおける電子契約の有用性は今後も益々高まるだろう。もっとも、会社登記事項変更届や、土地の譲渡書類等、当局への提出が必要な書類には、手書きの署名が求められる運用はまだ変わっていない。
そのため、電子契約や電子署名の利用可能範囲について、具体的な手続毎に確認を要することには留意されたい。
GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士藤江 大輔
2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。
URL : https://gvalaw.jp/global/3361
CONTACT : [email protected]
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THAIBIZ編集部
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