カテゴリー: 自動車・製造業
公開日 2023.07.09
「誠実一路」を信条とし、社名の「セイロ」もここから採ったという工作機械・金型向けCAD/CAMソフト販売のセイロアジアネット。1980年代後半には早くも東南アジアに進出し、93年3月にはタイ法人を立ち上げた。優れた技術を持ちながら海外に販路を持たない中小工作機械メーカーの代理店として、現地のモノづくり現場との橋渡し役を務める。評価されているのは、単に製品を輸入販売し、セットアップするだけではないアフターサービスを加味した総合エンジニアリング力だ。タイの製造業の今を「分岐点にある」(黒須義明MD)と解説する。
INTERVIEWEE
SAEILO (THAILAND) CO., LTD.
Managing Director
黒須 義明 氏
タイ進出翌年の94年からManaging Directorを務めて今年で30年。この間、通貨危機(97年)からリーマンショック(2008年)、タイ大洪水(11年)といくつもの困難を経験してきましたが、タイの製造業はそのたびに大きく成長してきました。当初の最終組立工場としての位置付けから、現在は部品生産に加えて、研究開発まで行われるようになりました。
使われる機械や生産される部品も年とともに複雑化し、より高い技術力が求められるようになっていきました。一方で、生産現場は今でも手作業に負うところが少なくなく、自動化が進んでいるとはいえ、安価な労働市場としての魅力も依然として残っています。タイのモノづくりは、安い人件費を背景に安く生産を行うか、いいものを作るために技術力を向上させていくかの分岐点にあると考えています。
高い技術レベルのものを作っていくためには、機械の性能もさることながら、それを操作する人の育成が欠かせません。ですから当社は、機械を売るだけにとどまらず、しっかりと使いこなしていただけるようなアフターサービスにも力を入れています。私が「当社はブローカーではありません」とよく口にするのは、そうした理由からです。
常駐日本人の技術者から教育・指導を受けたタイ人エンジニアが、顧客の元をお訪ねしています。新しい機械から古い機械まで、さまざまなマシンに精通したスタッフたちです。CAD/CAMのソフトウエアにしてもお客様がきちんと使いこなせるよう、的確なアドバイスを提供して、より良いモノづくりの環境を整えています。
主力の自動車については、モデルチェンジの時期との兼ね合いから、現在は設備投資が抑制的と見るべきでしょう。これが2024~25年にかけてどう動いていくかに注目です。電気自動車(EV)ばかりが話題となりますが、東南アジア市場ではまだまだ内燃機関のニーズが高く、一気にEV化が進むとは考えにくいと思われます。
そのEV化ですが、タイ政府の立ち位置が今一つ不明で、その点についても注視しています。環境立国を目指すという基本姿勢は理解できたとしても、使用する電力をどう国内で賄っていくのか、しっかりとした未来図が描かれているとは言えない状況が続いています。天然ガス火力発電という安価なエネルギーに依存してきたこれまでの立ち位置を捨て去るのであれば、それに変わるエネルギー戦略が提示されなくてはなりません。
国を発展させ豊かにしてくためには、技術の向上が欠かせません。古い機械はもとより、新しい機械、新しいソフトウエアを使いこなし、生産力を上げていかなければ大国には成長できません。そのための成長のきっかけとなる一つに、Manufacturing Expoのような見本市の場があると考えています。
同エキスポには毎年出展を続けています。先ほど申し上げたように、自動車部品メーカーなどの現在の投資意欲は必ずしも高いとは言えません。今年も様子見をする企業が散見されました。ただ、だからと言って、技術力向上のための提案を止めてしまっていいとは思いません。来るべき時期に備え、投資としてのエキスポ出展を続けていきたいと考えています。
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