パリ協定を踏まえたメコン5各国の環境に対する取り組み

ArayZ No.124 2022年4月発行

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パリ協定を踏まえたメコン5各国の環境に対する取り組み

公開日 2022.04.10

みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋して紹介

宗像 朋之|国際戦略情報部 グローバルアドバイザリー第二チーム 調査役

パリ協定を踏まえたメコン5各国の環境に対する取り組み

パリ協定は、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で合意された。

その後、二つの発効条件(①55ヵ国以上が参加②世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准)が満たされ、16年11月4日に発効。

次のような世界共通の長期目標を掲示した。

1. 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする

    2. そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

    パリ協定は、歴史上初めて先進国・開発途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた、公平かつ実効的な気候変動対策のための協定である。

    メコン5(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)の各国も、パリ協定合意にあたって約束草案(INDC)を提出することで、30年および30年以降の排出削減目標を設定。

    ただし、COP決定文書は、今世紀半ばでの温室効果ガス(GHG)実質排出ゼロおよびその経過点である30年に向けて野心的な緩和策、適応策を締約国に求める内容となっており、各国削減目標(NDC)について、目標設定の内容や度合いは国によって多岐にわたっているため、野心の度合いや実現可能性は大きな違いがあるのが実態である。

    JCMスキーム

    今回はメコン5におけるGHG削減の取り組みを俯瞰しつつ、日系企業のビジネスチャンスについて考察したい。

    タイ

    プラユット⾸相は21年1月に「BCG(バイオ・循環型・グリーン)経済」モデルを国家戦略に位置付けるなど、気候変動対策は政府の重要なテーマである。

    同⾸相は21年11⽉1⽇、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、「気候変動問題を最重要課題と認識しており、次世代のためと、世界共通の目標を達成するため、世界の全ての国・セクターと協⼒する⽤意がある」と表明。

    また、気候変動課題に取り組み、50年にカーボンニュートラル、65年までにネット・ゼロ・エミッションの達成を目指すとも表明した。

    ベトナム

    ファム・ミン・チン⾸相は21年11⽉1⽇のCOP26で、50年までにカーボンニュートラルを目指すと表明。

    同⾸相は、全ての国が各々の能⼒や状況に応じてGHG排出量削減に取り組む必要があると言及。50年までに排出量実質ゼロを達成するため、再⽣可能エネルギー分野の強みを⽣かし、GHG排出量削減に向けた強⼒な対策を講じると表明する一方で、先進国に対して⾦融⾯や技術⾯での⼗分な⽀援も要望した。

    同国がパリ協定に基づくGHG削減目標として表明している30年までの削減に対し、50年のカーボンニュートラル達成は野心的な目標となっている。

    ミャンマー

    ミャンマーはNDCにおいて、国全体のGHG削減目標を定めていないものの、主力セクターである電力および土地利用変化・林業分野セクターのGHG削減目標に加え、その他の追加セクターにも言及している。

    NDCによれば、土地利用変化・林業分野セクターにおいて、途上国が森林減少・劣化の抑制により温室効果ガス排出量を減少させた場合や、森林保全により炭素蓄積量を維持・増加させた場合に先進国が途上国への経済的支援を実施するメカニズム(REDD+)への取り組みの継続に加え、十分な国際的支援が得られた場合には30年までに50%のGHG排出量削減、40年までにネット・ゼロ・エミッションの達成も可能と言及した。

    カンボジア

    カンボジアは1995年に気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に参加するなど地球温暖化への危機意識が⾼い。同国が成⻑産業として後押しする農業に気候変動が⼤きく影響することも、低炭素化を推進させる要因となっている。

    同国は30年までにGHG排出を40%以上削減、50年までにカーボンニュートラルを達成する計画を表明し、「カーボンニュートラリティー長期戦略(LTS4CN)」と呼ばれる工程表を21年12月30日、UNFCCCに提出した。

    気候変動対策の一環として「カンボジア⼤気浄化計画(CCAP)」を策定、各産業での温室効果ガスの削減目標などを盛り込むと考えられる。

    ラオス

    ラオスはNDCを21年3月に更新。NDCによれば、BAUと比較して60%のGHG排出量削減、CO2約6万2000キロトン削減を目指す。また、50年までにネット・ゼロ・エミッションの達成を目指す。

    まとめ

    COP26では、外国での排出削減プロジェクトによる排出削減量をクレジットとして取得し、自国の削減目標の達成に用いることができるパリ協定6条(市場メカニズム)ルールの大枠が合意され、日本は二国間の市場メカニズムであるJCM(Joint Crediting Mechanism)の経験を活かして、同ルールの交渉を主導。

    6条の実施により30年までに世界全体で年間最大で90億トンのCO2の追加的削減量が実現され得るとの試算もあり、18年のCO2排出量(エネルギー起源)の約3割に相当する量が追加的に削減できるとされる。

    メコン5各国は高いGHG削減目標を掲げている。日本とメコン5各国はすべてJCMパートナー国であり、日本政府は補助金制度により企業のJCM活用を後押ししている。JCM活用も含め、今後日系企業のGHG削減事業における積極的な案件組成に期待したい。


    月間USD市場推移 Monthly Market

    タイ – 4月の為替相場動向

    FRB(連邦準備理事会)が利上げに踏み切り、米金利が高い水準で推移していることに加えて、資源価格の高止まりはアジアの資源輸入国であるタイのバーツにとっては売り材料となる。しかし、大台の34を抜けるにはこれまで何度か上抜け失敗したことで抵抗もそれなりに強いだろうことが想定される。

    ベトナム – 4月の為替相場動向

    引き続き狭いレンジでの小幅な動きを予想する。米国の利上げ期待等を背景に為替市場全体ではUSD買いが優勢となっており、USDVND相場の上昇圧力がかかる状況ではあるものの、引き続き海外からの投資フローを背景としたVND買いに加え、ベトナム中銀がUSDVNDの上下限の目線を定めて為替相場をコントロールしてることから、22,800台を中心としたレンジ相場が継続する可能性が高いだろう。

    ミャンマー – 4月の為替相場動向

    中銀が主導する官制相場の下、現在の中心値=1,778.0を軸にオフィシャルには1,700台後半を中心に狭い範囲内でのトレーディングバンド設定になるものと推察する。

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    みずほ銀行メコン5課

    E-Mail : mekong5@mizuho-cb.com

    98 Sathorn Square Office Tower 32nd-35th Floor, North Sathorn Road, Silom, Bangrak, Bangkok 10500 Thailand

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