最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中
カテゴリー: 会計・法務, ASEAN・中国・インド
公開日 2025.09.01
民間警備サービス法は、2025年2月18日に公布され、ミャンマーにおける民間警備サービスの提供を規律し、安全保障の補完、公共秩序の維持、違法行為の防止、そして国際基準への適合を図るものである。
特に企業にとっては、警備業務の委託・自社運用の双方に関わる義務と責任が定められており、以下に主要な点を記載する。
本法の基本的目的は、民間警備サービスが国家の安全に貢献するよう制度的に整備され、法の支配と公共の秩序を維持しつつ、質の高い警備を実現することにある。
民間警備サービスは、企業・個人の財産や人命を守る目的で提供され、対象施設にはオフィス、工場、ホテル、学校、病院、金融機関、宗教施設など多岐にわたる(第2条)。
ライセンス保有者の義務は以下のとおりである(第16条)。
(a)ライセンス条件に従って民間警備サービスを提供しなければならない。
(b)本法律の下で発行された規則、規制、附則、通達、命令、指令、手続きに従ってサービスを提供しなければならない。
(c)国家安全保障機関と協力する場合には、関係する監督委員会および国家安全保障機関の計画に従って体系的に協力しなければならない。
(d)護衛として人員を任命する場合、以下の条件を満たす者を任命しなければならない:
(i)18歳以上であること。
(ii)健康で警備業務が遂行可能なこと。
(iii)関係政府機関が発行する労働登録カードを有すること。
(iv)過去30日以内に発行された無犯罪証明書および自己申告書を提出すること。
(v)中央委員会が随時定めるその他の資格要件に反していないこと。
(e)任命された民間警備員に対し、中央委員会の許可の下で開講される警備訓練を受講させなければならない。
(f)外国人を民間警備員として任命する場合には以下の条件を満たす必要がある:
(i)労働省が定める基準を満たすこと。
(ii)出身国の当局からの無犯罪証明を取得すること。
(iii)外国軍の一員でないことを確認すること。
(g)国際機関から警備関連の技術や装備を導入する場合は、関係する監督委員会を通じて、必要な情報を提供し、中央委員会の承認を得なければならない。
(h)民間警備会社の名称、警備提供場所、配属する人数、サービス期間などを定められた基準に基づき、監督委員会に報告しなければならない。
(i)ライセンスを会社事務所内の見やすい場所に掲示し、一般の閲覧に供さなければならない。
(j)管理取締役または事務所の所在地に変更がある場合、ミャンマー会社法に基づいて手続きを行い、監督委員会の承認を得なければならない。
(k)各警備員の個人情報および勤務記録を体系的に管理しなければならない。
(l)民間警備員の増減があった場合は、監督委員会に報告しなければならない。
(m)警備員が遵守すべき規律と違反時の処置を明確に定めなければならない。
(n)警備員が現行法に違反していることが判明した場合、直ちに関係当局に報告しなければならない。
(o)民間警備業を継続する意思がない場合は、業務を停止する前にライセンスを監督委員会に返納し、承認を得なければならない。
(p)中央委員会が随時定めるライセンス規定を遵守しなければならない。
外国企業がライセンスを保有する場合には、雇用する民間警備員の少なくとも75%はミャンマー国籍でなければならない(第17条)。
ライセンス保有者は、(a)顧客と契約を締結することで、民間警備サービスを提供することができる。また、(b)通信機器、技術的支援機器、その他関連物品の購入・販売・所持・使用について、中央委員会の許可を得て、現行法およびライセンス規定に従って行う。(c)警備員に、中央委員会が承認した制服、バッジ、階級章を勤務中に着用させなければならない。(d)警備訓練課程を開設する場合には、カリキュラム、教科、訓練期間、スケジュール、訓練場所などを監督委員会を通じて中央委員会に提出し、承認を得なければならない(第18条)。
民間警備サービス訓練を提供する許可を受けた者は以下の義務および権利を有する(第19条)。
(a)少なくとも5年の警備関連の経験を有する訓練講師を任命しなければならない。
(b)講師は、関連技術に関する認定証を有していなければならない。
(c)関連科目に対応できるだけの講師を十分に確保しなければならない。
(d)民間企業またはその支社の警備員が訓練を受けることを希望する場合には、許可を得て対応することができる。
(e)訓練を修了した者には、修了証明書を発行しなければならない。
民間警備サービスにおいて、武器や弾薬、関連装備を携行する必要がある場合には、中央委員会の承認を得て、武器法および関連規定、現行法に基づいて実施しなければならない(第20条)。
(下)では、民間警備会社のライセンス取得要件、民間警備員の権限及び制限等について紹介する。
TNY国際法律事務所 (ミャンマー)
代表弁護士
堤 雄史 氏
会社設立、合弁契約書および雇用契約書などの各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等のミャンマー法に関するサービスを提供している。世界13ヶ国に展開するTNY国際法律事務所グループの共同代表。
TNY国際法律事務所
各国に日本人弁護士と現地弁護士が常駐
日本語で、日本クオリティの現地法務サービスを提供
[主な業務]
・ 各業種の外資規制や許認可制度のリサーチ、投資や事業スキームの適法性の確認
・ 会社設立手続、各種契約書の作成(雇用契約、賃貸借契約、合弁契約、業務委託契約等)
・ 労務、紛争解決、M&A、企業法務、知的財産業務、各種法律相談等
E-mail:info@tny-legal.com
Website : http://www.tnygroup.biz
SHARE