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公開日 2025.11.18
11月10日付のバンコク・ポストによると、高齢化が進むタイで、民間企業によるシニア人材の活用が加速している。タイはすでに総人口の約21.5%が60歳以上を占める。出生数の減少などにより人口はさらに縮小傾向にあり、労働供給の不足が深刻化。アヌティン首相は公務員の定年を60歳から65歳へ引き上げる案を示すなど、政府も制度面の見直しに着手している。
外食・小売大手のセントラル・レストラン・グループ(CRG)は、2023年以降シニア採用を進めている。KFCやAuntie Anne’sを含む全ブランドで80名を超える高齢者を雇用しており、一部店舗ではベテラン料理人が若手への技能伝承に貢献しているという。同社は職務負荷を見直し、重作業から接客・レジ対応など適性に応じた配置転換も進めている。
政府はシニア雇用への税優遇(賃金の2倍を損金算入可能、上限1.5万バーツ)を設けているが、企業からは上限引き上げや高齢者人材の統合データベース構築を求める声が出ている。加えて、タイ労働法が時給制を認めていない点についても、高齢者に適した短時間労働を実現するための制度見直しが指摘されている。
11月11日付のバンコク・ポストによると、2026年1月1日から、1,500バーツ以下の小口輸入品にも関税が課される方針が決まり、電子商取引(EC)業界で対応が進んでいる。タイEコマース協会のクンティラット会長は、この措置には「国内と海外の販売者の税負担を均等にする」「低価格輸入に依存してきた小規模販売者への負担増」という二つの側面があると指摘した。
従来、中国などからの低価格商品は免税で流入しており、関税・VATを負担していた国内メーカーや国内販売者(高価格帯輸入品を扱う事業者)は不利な競争環境に置かれていた。今回の課税により、この点での公平性は確保される。一方で、低価格輸入に依存してきた小規模EC事業者にとっては仕入れコストの上昇につながり、価格転嫁か利益圧縮かを迫られる。
中国の越境EC制度と比べると政策の方向性が対照的だ。中国は関税ゼロ、付加価値税(VAT)70%の軽減、年間2.6万元の個人免税枠など、「消費を促すインセンティブ型」を取っている。一方タイは「税収確保と競争条件の平準化」を主眼としており、アプローチが大きく異なる。
業界団体からは、①インドネシアのような「低価格輸入品の販売禁止」モデルの検討、②ECプラットフォームと連動したデジタル税関システムの導入、③通関プロセスの透明化、などを求める声が挙がっている。
税関局によれば、この措置により約30億バーツの追加歳入を見込む。EC市場が急拡大する中、税制・ルール整備が本格化してきた形だ。
11月7日付のバンコク・ポストによると、クレジットカード消費は経済と同様、年末にかけても低調となる見通しだ。UOBタイによると、政府による消費刺激策が実施されたものの、第4四半期(10〜12月)の支出動向を押し上げるかどうかは判断が難しいとしている。
同社のカード支出は今年1〜9月期でほぼ横ばい。市場全体でも同期間の伸びは2〜3%程度にとどまり、年末まで大きな増加は見込みづらいという。一方、月収20万バーツ以上の高所得層に限ると、「外食・旅行・高級品」での支出は堅調で、セグメント間の二極化が鮮明になっている。
また、UOBの調査によれば、45%の消費者がこの1年でSNS経由の購買を増やした一方、47%が「以前より購入判断に時間をかける」と回答。ライブ配信などを視聴しつつ比較検討する行動が増えており、即時の購買につながりにくい傾向が見える。
RX BITECは11月4日から3日間、バンコクの展示場BITECにて、化粧品・健康補助食品・パーソナルケア業界を対象とした展示会「COSMEX 2025」を開催した。会場では、同業界に関連するさまざまなテーマでセミナーやワークショップも行われ、20ヵ国から250ブランドが集結した。
同業界の近年のトレンドの一つが「サステナビリティ」だ。体や地球環境に配慮した化粧品を意味する「Green Beauty(グリーンビューティ)」に加え、最近では、製品に使用される水資源や、製品使用後の排水など、水に関するあらゆる要素を包括的に考慮する「Blue Beauty(ブルービューティ)」という概念にも注目が集まっている。
11月5日に開催された「Green to Blue Beauty」をテーマとしたセミナーでは、Conimex Co., Ltd.の中小企業・輸出マネージャーであるパッサチョン・リムトンチャイ博士が、海洋ごみや汚染が水産物を通じて消費者の健康に直接影響を与えると指摘。化粧品化学者協会(SCCT)会長のティーラヤー・クリッサダーポン博士は、「海洋生態系への影響を踏まえ、特定成分の使用を禁止・規制する国も出てきている」と述べ、「ブルービューティはもはやトレンドではなく、企業が対応すべき法的要件になりつつある」と強調した。

同セミナーでは、ブルービューティ実現の取り組みの一つとして、パッケージの脱プラスチック化についても議論が交わされた。
一方で、環境配慮型パッケージの導入にはコストの課題があり、慎重な企業も多いという。竹やバガス由来のエコ成形素材「PULP MOLD」などを展示していたTakaraPac(Thailand)Co., Ltd.のセールスマネジャー 栁下献氏は、「エコ素材パッケージへの関心は、日本や欧州への輸出を前提としたメーカーでは高いが、タイ国内向けメーカーではまだ限定的だ」と説明した上で、「とはいえ、今後こうした素材へのニーズは確実に高まっていくだろう」と期待を示した。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / 白井恵里子 / 和島美緒

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