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公開日 2025.12.04
タイの首都バンコク近郊で11月29日、自動車展示・販売会「第42回タイ国際モーターエキスポ2025」が開幕した。低迷が続いていた新車市場が底を打ち、回復傾向に向かう中で始まった年末商戦の同エキスポで、日系ブランドはハイブリッド車(HV)を前面に押し出している。中国系ブランドが電気自動車(EV)に注力することにより、日中のブランドですみ分けが鮮明化するタイ市場において、日系各社はHVの上積みを狙う。

日中を中心に自動車42ブランドと二輪車16ブランドが出展したモーターエキスポの開幕日に最もにぎわったブースの1つが、トヨタ自動車だった。日系ブランドでは最大の展示スペースを確保し、11月10日に発表したピックアップトラック「ハイラックス」の新型「ハイラックストラボ」のEVモデル「トラボ-e」や、8月に販売再開を発表したスポーツタイプ多目的車(SUV)のEV「bZ4X」をアピールした。
一方で、EVモデル以上に来場者が見入っていたのはHVモデルだった。HVでは、8月に投入した小型セダン「ヤリスATIV(エーティブ)HV」や、小型SUV「ヤリス・クロス」の特別仕様車「ヤリス・クロス・ナイトシェード」などが展示された。ヤリスATIV HVは、トヨタがタイで販売するHVで最安の71万9,000バーツ(約350万円)からで、ヤリス・クロスはタイで今年最も売れているHVとなる。

トヨタのタイ法人タイ国トヨタ自動車(TMT)の山下典昭社長は11月28日のプレスデーの発表で、トラボ-eを含めてハイラックスは新型発表以降に約1万台を受注し、bZ4Xは再発売の発表から1カ月で2,000台の予約が入ったと明らかにした。
タイ運輸省陸運局によると、今年1~10月に新規登録されたHVは前年同期比5%増の11万7,189台で、トヨタが12%増の5万7,023台でトップだった。
新規登録台数全体に占めるHVの割合は23%、EVは19%。プラグインハイブリッド車(PHV)を含めた3カテゴリーを合わせた電動車の割合は44%となっている。

ホンダ、中型SUVのHV新型投入
1~10月のHV登録台数で2位のホンダ(前年同期比8%減の4万3,694台)は、モーターエキスポで「エキサイティング・ハイブリッド」をコンセプトとし、ハイブリッドシステム「e:HEV」の搭載車を前面に押し出したブースを展開している。
ホンダは28日に、中型SUV「CR-V」のHVモデルの新型を発表した。価格は139万9,000バーツから。CR-Vと小型SUV「HR-V」のHVモデルでは、アウトドアテイストを取り入れた「Hunt(ハント)」仕様をそれぞれ投入した。

また、ホンダがタイで展開するHVでは最安値の小型セダン「シティ」やシティのハッチバックモデル「シティ・ハッチバック」(ともに72万9,000バーツから)を展示。このほか、再販売となるミニバン「ステップワゴン」からHV「スパーダ」の投入と事前予約の受け付け開始が発表された。ステップワゴン スパーダは日本からの輸入車で、価格は170万バーツ台となり、来年に納車される予定。
三菱自と日産もHV販売強化
今年HVの販売が急増している三菱自動車は、SUV「エクスフォース」とクロスオーバー多目的車(MPV)「エクスパンダー」の上位モデル「エクスパンダークロス」のHVモデルの販売を強化している。三菱自の1~10月のHV新規登録台数は前年同期比91%増の8,327台。今年投入したエクスフォースのHVモデルが好調だ。
一方、同期のHV新規登録台数で4位の日産自動車はエキスポで、中型SUVのHV「エクストレイル・eパワー」を披露したほか、今年発売したMPVのHV「セレナ・eパワー」などを展示した。

タイ日産自動車(NMT)の代表を務める藤木稔大氏は28日のプレスデー発表で、「タイ市場に刺激的なモデルを投入し続け、日産ブランドをよりいっそう強化していく」と述べた。その上で、「今年初めに投入したセレナ・eパワーは好評を頂いている」とした。
マツダはEVの予約受け付け

マツダはタイに投入する初のEVとして、中国自動車大手の重慶長安汽車との合弁会社である長安マツダが製造した「マツダ6e」を展示し、事前予約の受け付けを開始した。販売価格は未発表だが、モーターエキスポ期間中に事前予約をした場合は2万バーツの割引を適用する。
スズキは、世界戦略車の小型SUV「フロンクス」を前面に押し出した。販売価格は68万9,000バーツから。スズキ・モーター(タイランド)の鈴木忠臣社長は28日、NNAに対し「モーターエキスポでは、フロンクスを中心に700台の予約受注が目標」と話した。
ピックアップ苦戦、回復は来年後半
タイの1~9月の新車販売台数は前年同期比2.1%増の44万7,969台だった。上向いているものの、本格回復とは言い切れない。日系ブランドのシェアが高いピックアップトラック市場の落ち込みが続いているためだ。ピックアップトラックをベースにした乗用車「乗用ピックアップ(PPV)」を除いた従来型のピックアップトラック(ピュアピックアップ)の販売台数は、15.3%減の10万7,150台。ピュアピックが新車販売台数全体に占める割合は24%で、2022年1~9月の46%から半減している。
ピックアップが主力製品のいすゞ自動車は、モーターエキスポで、10月に発売したピックアップトラック「D-MAX」とPPV「MU-X」の新型を中心に展示した。
いすゞのタイ販売会社トリペッチいすゞセールスの河野通正副社長は、「タイの経済はまだ厳しい状況にあるとみている。(ピックアップトラックの主要顧客層の)農家の収入があまり上がってきていない」とした上で、「ファイナンスも依然厳しい審査が継続している」と述べた。

ピックアップ市場については、TMTの山下氏も「ピックアップ市場は深刻。徐々に回復していき、26年後半に良くなると考える」と語った。今年の新車市場全体は60万台ペースで推移しているとし、来年も緩やかに回復して63万台になると予測しているとした。
モーターエキスポは12月10日まで、バンコク北郊ノンタブリ県ムアントンタニの展示会場「インパクト」で開催されている。

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