

ArayZ No.138 2023年6月発行ASEANシフトが進む昨今、新たなる舞台での変革 ベトナム市場のポテンシャル
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2023.06.10
インドでは州ごとに最低賃金が異なります。インドは連邦制国家であり、中央政府は一部の産業について最低賃金を定めていますが、その他の多くの業種では各州が経済状況に応じて最低賃金を設定しています。職種や労働者のスキルレベルによっても異なる最低賃金が定められており、州ごとに分類の仕方も違い、数十種類にわたるカテゴリーに分かれている州もあります。
また、最低賃金は定期的に見直されますが、その見直しのタイミングは州によって異なります。インフレーション率や生活費の上昇、労働市場の状況を踏まえて年次ベースで見直しが行われる場合もあれば(毎年4月に改定されることが多い)、特定の需要が生じたときや労働者団体からの要求があったときなどにのみ最低賃金が調整される場合もあります。
さらに、例えばムンバイは半年で20%ほど最低賃金が引き上がったこともあり(2020年1月と7月の比較)、変化も激しいため注意を要します。
日系企業拠点数の多いインド各都市が所在する州における、非熟練労働者と高技能労働者のカテゴリーに相当する最新の最低月給は、図表1のようにまとめられます。
チェンナイのようにスキルによりほとんど最低賃金に差を設けていないエリアがあれば、デリーのように大きな差を設けているエリアもあります。マハラシュトラ州は、ムンバイやプネといった大都市での警備員など特定の業種については最低賃金の水準を高く設定していますが、その他の多くの職種については一律の水準です。
比較した州の中ではデリーの最低賃金水準の高さは突出しており、州境を超えて通勤する労働者も多いグルガオンやノイダの賃金と対照的であるといえます。また、ムンバイはデリーよりも物価が高く、平均賃金も高い傾向にあるにもかかわらず、最低賃金にはその傾向が十分に反映されていない点にも留意が必要です。
最低賃金は労働者が生計を立てるための最低限の保証として、州全体の指標として定められています。しかし、ムンバイやグルガオンの例のように、最低賃金が必ずしも労働者の経済圏における生活費をカバーする十分な額であるとは限らないケースもありえます。
インドでインド人を雇用する日本企業においては、このような観点も考慮した上で、事業所の所在する各州(本社だけでなく、拠点ごと)の労働省や関連政府機関のウェブサイトを定期的にチェックする、現地の労働法専門家と連携する(州レベルの通知は、英語版がないケースも多く見られます)などの対策により最新の最低賃金の情報を確認し、労働者への公正な賃金を定期的に見直すことが求められます。

志村 公義
南アジア代表(弁護士)。日系一部上場企業のアジア太平洋General Counsel、医療機器メーカーのグローバル本部での企業内法務に従事。19年4月からインドに駐在し、インドをはじめとしたバングラデシュ、ネパール、スリランカ等の南アジアの法務案件の対応を行う。21年9月には、南アジア全8ヵ国の最新法務をまとめた日本初の書籍となる『南アジアの法律実務』(中央経済社)を出版。
mail:kimiyoshi.shimura@oneasia.legal

山田 薫
One Asia Lawyers南アジアチーム所属パラリーガル。日系・外資系民間企業や政府系国際協力機関での実務経験を経て、南アジア各国の現地弁護士と協働して日系進出企業に対する法的サポート、各種法律調査等を行う。


THAIBIZ編集部



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