ミャンマーにおける著作権法および工業意匠法の施行

ArayZ No.145 2024年1月発行

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ミャンマーにおける著作権法および工業意匠法の施行

公開日 2024.01.09

1.著作権法および工業意匠法の施行

ミャンマーでは、著作権法(Copy Rights Law)および工業意匠法(Industrial Designs Rights Law)は2019年1月30日に制定されていましたが、施行が未定となっていました。

そのような状況が続いていた中、23年10月31日、著作権法および工業意匠法が施行されました。

著作権法および工業意匠法は商標法(23年4月1日施行)および特許法(未施行)とともに、日本政府が整備を支援した法律となっており、日系企業にとって利用しやすい制度となることが期待されています。以下では、著作権法および工業意匠法について概説します。

2.著作権の保護について

従前では、著作物がミャンマー国内で出版された場合またはミャンマー国民によって創作された場合にのみ保護される制度となっていたため、外国著作物の保護に乏しいという問題点がありました。

著作権法では、ミャンマー国内で初めて出版された著作物のみならず国外で出版された場合であっても、国外での最初の出版から30日以内にミャンマーで出版された作品については、著作者の国籍・居住地に関係なく、著作権法が適用されることになります。そのため、日本を含む国外の権利者がミャンマーで著作権等を行使することが可能な制度となります。

なお、著作者または著作権者の権利を保護する期間は、著作者の生存期間および死後50年と規定されています(著作者人格権の保護期間は著作者の生存期間に加えて死後無期限)。

著作権等の侵害に対しては懲役刑および罰金刑などの罰則が規定されています。

もっとも、著作権分野で最も基本となる条約である「ベルヌ条約」にミャンマーは加盟していません。ベルヌ条約に加盟している国々の著作物に対して、加盟国は原則として自国の著作物と同様の保護を与えなければならない(内国民待遇の原則)と規定されています。そのため、ミャンマーにおける著作物の保護は、日本人が日本における著作権保護と同様の保護が受けられるわけではないため、注意が必要となります。

3.工業意匠権の保護について

工業意匠法の施行によって工業意匠権が保護されます。工業意匠法における工業意匠とは、工業製品若しくは手工芸品の全部若しくは部分の線、輪郭、色彩、形状、表面パターン、質感、若しくは外形の特徴若しくは装飾、又はその特徴、装飾から生じる工業製品若しくは工芸品の全部若しくは部分の外観をいいます。

工業意匠法が保護されるためには、知的財産庁(Myanmar Intellectual Property Department)に対する出願・登録審査が必要となります。なお、工業意匠の登録期間は出願日から5年間であり、期間満了後は5年毎に最大2期まで更新できます。

4. 今後の知的財産法の動向

商標法、著作権法および工業意匠法については、23年に施行されたことから、今後ミャンマーにおいて細則・実務上の取り扱いなど知的財産権に関する法制度の整備が進むと予想されるため、今後の動向に注意が必要となります。

寄稿者プロフィール
  • 佐野 和樹 プロフィール写真
  • 佐野 和樹
    One Asia Lawyers パートナー弁護士(日本法) ミャンマー・マレーシア統括

    2013年からタイで、主に進出支援・登記申請代行・リーガルサポート等を行う「M&A Advisory Co., Ltd.」で3年間勤務。16年よりOne Asia Lawyersの設立に参画し、ミャンマー事務所・マレーシア事務所にて執務を行う。19年にミャンマー人と結婚し、現在はミャンマー在住。ミャンマー・マレーシア統括責任者として、アジア法務全般のアドバイスを提供している。
    E-mail:kazuki.sano@oneasia.legal

  • One Asia Lawyers
    One Asia Lawyersは、ブルネイを除くASEAN全域、南アジア及び東京、大阪、福岡にオフィスを有しており、日本企業向けにASEAN及び南アジア地域でのシームレスな法務アドバイザリー業務を行っております。2019年4月より南アジア、20年11月よりオーストラリア、ニュージーランドプラクティスを本格的に開始。
  • 【One Asia Lawyersグループ・ミャンマー事務所】
    #113, Building 1, Hotel Yangon, Corner of Pyay Rd., & Kabaraye Pagoda Rd., 8 Mile, Mayangone Township, Yangon
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THAIBIZ編集部

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