公開日 2023.02.07
1月25日、破壊的(disruptive)な技術課題への挑戦を支援する総務省の『異能vation』プログラムのタイにおける授賞式『OPEN 異能vation 2022(OPEN INNO-vation 2022)』が在タイ日本大使館内の多目的ホールで開催された。同プログラムは2014年にスタートし、2020年からは海外では初めてタイで現地募集活動も開始していたが、今回はこのプログラムにおける大賞である「破壊的な挑戦部門」で、タイから応募した1件も選出された。
この日のイベントには、受賞者に加え協力・協賛企業、関係者が参加し、破壊的な挑戦部門賞、ジェネレーションアワード部門分野賞及び企業特別賞の表彰の後、同日に東京で開催されたOPEN 異能vation会場とのライブ中継も行われた。
授賞式ではまず在タイ日本国大使館の細野慶介一等書記官(デジタル・ICT・科学技術・イノベーション担当)が開会あいさつし、「本プログラムのキーワードの1つが『挑戦』だ。『バー・クラー・キット(ba kla khid=馬鹿げた・勇気ある・考え)』を持つ皆様は、その感性や発想力を大事にしつつ、あきらめずに行動に移し、挑戦を続けてほしいと願っている」と強調。さらに、「世界に変化と革新が起きている今、本プログラムをきっかけに、皆様が新たな技術を活用しながら、独創的なアイデアを考え抜き、勇気をもって挑戦していくことがさまざまな課題の解決につながり、タイや日本、世界がより良い社会になっていくと期待している」と述べた。
続いてタイ・デジタル経済振興機構(DEPA)のチャッチャイ・クンピティラック(Chatchai Khunpitiluck)副長官は、「本プログラムは協力と開発の始まりであり、社会と国に恩恵をもたらす出発点だ。そして、創造性の発揮を支援しながら、社会のデジタル化を推進し、世界に認められるよう後押しするとともに、経済を活性化して国内に持続的なキャッシュフローを生み出すと信じている」とアピールした。
2022年度の異能vationプログラムでは、世界中から「破壊的な」技術課題に取り組む挑戦者や、世の中を変えるかもしれない独創的なアイデアを募集。全世界から2万1396件、タイからは1716件の応募があった。選考の結果、タイからは、「破壊的な挑戦部門」で1件、「ジェネレーションアワード部門」で36件が選ばれ、表彰された。
「破壊的な挑戦部門」はICT分野において破壊的価値を創造する、奇想天外でアンビシャスな技術課題への挑戦を支援するもので、社会や産業における大変革をもたらすような課題に対し、失敗を恐れずに果敢に挑戦を行うような提案を募集。今回はタイから、ソンパコーン・プーノーンオーン(Songpakorn Punong-ong)氏の視覚障害者の点字読書器『ReadRing Scanning Braille Display』が選ばれた。紙をめくるだけで本の文章を点字に翻訳してくれる機械だ。ソンパコーン氏は「視覚障害者用の点字読書器は非常に高い。手に入りやすいものを作り、視覚障害者の生活をより良くしたいと思っている」とアピールした。
一方、「ジェネレーションアワード部門」はちょっとした、けれども誰も思いついたことのないような面白いアイデアや自らが発見した実現したい課題などを表彰。各国の協力・協賛企業による企業特別賞があり、本年度はタイの26団体(政府機関・企業等)から賞が提供された。タイからは、ドリアン収穫ロボット、PlantHere 農地レンタルプラットフォーム、廃棄物分別QRコード、Smart Care 高齢者・持病患者・一人暮らしをケアするプラットフォーム、スマート処方自動販売機、〜睡眠中に知識を吸収する〜学習機械、ロックを決して忘れない鍵-などの36件(61人)が表彰された。
イベントの最後に梨田和也駐タイ特命全権大使が閉会あいさつで登壇、「社会環境が目まぐるしく変化していくこれからの未来において、皆さんのような『バー・クラー・キット』が、より独創的でクリエーティブな発想をもって、タイや日本にとどまらず、世界の人々の生活や社会を一変してしまうような『破壊的イノベーション』を起こしていくことを期待している」と述べた。さらに、「本プログラムを通じて、日タイ間でイノベーション推進に関する知識や経験が共有され、政府機関、企業、研究機関などさまざまな分野で連携が進めば、両国の経済・社会の発展に大きく資するものと信じている」などと訴えて、イベントを締めくくった。
TJRI編集部
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