カテゴリー: 対談・インタビュー, 食品・小売・サービス
公開日 2021.08.09
TJRIプロジェクトの一環として行っているオンラインプログラム「Open Innovation Talk」3回目のゲストは、タイの経済成長を支え、今や東南アジア最大級の財閥企業となった「Charoen Pokphand Group(以下C.P.グループ)」。今年で創業100周年を迎え、畜産・食品加工業(CP Foods)やセブンイレブンの運営を行う小売業(CP ALL)、携帯電話サービスなどの通信業(True)といった幅広い事業を展開しています。そんな同グループが掲げるビジネスモデル、そして現在抱える課題について、CPF社のプラシット社長、C.P.Group副社長のウィラノン氏をはじめとする4人にお伺いしました。
< Guest Speaker >
Mr. Prasit Boondoungprasert CPF PCL 社長(写真左下)
Dr. Netithorn Praditsarn C.P. Group CEO及びSenior Vice President (SVP)の役員補佐(写真右上)
Mr. Viranon Futrakul C.P. Group副社長(写真中央上)
Mr. Poom Siraprapasiri C.P. Group副社長補佐(写真左上)
ガンタトーン:
はじめに、現在C.P.グループがサステナビリティに取り組む理由、その概要をお伺いできますか?
Dr. Netithorn Praditsarn(P・ネティトーン氏):
業界や産業問わず、共通している課題がサステナビリティだと捉えています。現在COVID-19によって大変なダメージを受けている企業は多くあると思いますが、COVID-19が収束したとしても、サステナビリティを意識した取り組みは継続してあり続けると考えています。企業としていかに取り組んでいくか。その一つとして組織の内側から意識を変えていくこと、特にグループを率いるリーダー陣の意識が変わることが重要だと感じています。
Mr. Poom Siraprapasiri(S・プーム氏):
弊社は2015年から5カ年計画で、サステナビリティにおけるグループ共通の12の目標を掲げてきました。そして今第2フェーズに入り、2030年までの10カ年計画として人権・健康・環境という3つをテーマに、15の目標を掲げました。これらを達成するためにはさまざまな技術やご協力が必要です。公共交通指向型都市開発(TOD)や再生エネルギー、リジェネラティブ(環境再生型)農業、代替タンパク質といったノウハウをお持ちの方で、弊社の考えに賛同いただける方はぜひご連絡いただければと思います。
ガンタトーン:
ではグループ全体としての事業展開につきまして、C.P. Group副社長・Mr. Viranon Futrakul(ウィラノン氏)にお伺いしていきます。
Mr. Viranon Futrakul(ウィラノン氏):
弊社は1921年に創業し、今年100周年を迎えました。もともとは野菜や果物といった種子の売買から始まり、その後、畜産業(鶏・豚・エビ)から食品加工・小売業へと拡大してきました。現在は8つのカテゴリー、14のビジネスユニットを設け、なかでも農業・食品、小売、通信の3つが弊社の柱になっています。最近ではeコマースや金融、鉄道などの事業にも広がり、世界21カ国で40万人以上の従業員を抱えています。
ガンタトーン:
これまでに結んだ日本企業とのパートナーシップを教えてください。
ウィラノン氏:
複数ありますが、例えばタイ人にとってお馴染みのセブンイレブンは1988年から始まり、現在はタイ国内の出店数が1万店舗を超え、ラオスやカンボジアにも拡大しています。また明治(タイではCP 明治)は1989年からタイでの事業をスタートし、今ではアジアを代表する製菓事業の一つに成長しました。この他、中国最大級の政府系コングロマリットCITICや自動車ブランドMGなどさまざまな企業とパートナーシップを結ぶことで、自社の成長へと繋げてきました。
ガンタトーン:
ここからは、食品加工・生産を行う「Charoen Pokphand Foods(以下CPF)」のCEO・プラシットさんにお話を伺っていきます。CPFの主な事業について教えていただけますか?
Mr.Prasit Boondoungprasert(B・プラシット氏):
弊社は「食を通して人々に幸せを届ける(We put our heart into food)」というミッションを掲げています。我々が取り組むビジネスにとって、食・人・自然環境は切っても切り離せません。今後も長く事業を続けていきたいからこそ、サステナブルフードが重要になってくると考えています。
弊社が提供する多くの食品は畜産で、鶏や豚、アヒルなどを飼育し、そのまま食材として提供したり、ハムやソーセージなど加工食品として提供しています。その際に徹底しているのが、飼育から販売までの総合的な品質管理です。厳選された飼料を与え、ファームでは常に最先端技術を導入。出来上がった商品は品質基準の厳しいヨーロッパをはじめとする30カ国で展開されるなど、その品質の高さは世界レベルだと自負しております。
また今後は、食品をただ作るだけでなく栄養価も含めた「食品の価値」を高めていきたいと考えています。同時に、デジタル技術を活用しながら畜産農業のロボティクス化を図るなど、さらなる技術発展に寄与していきたいですね。
ガンタトーン:
現場では、どのような技術を導入しているのでしょう?
B・プラシット氏:
豚の飼育を例に挙げますと、近年話題を呼んでいる「スーパーフード」を飼料に活用しています。特に、健康にいいとされるオメガ3脂肪酸(魚などに含まれるDHA、EPAなどを含む)に焦点を当てて飼料開発を行ったり、オメガ3脂肪酸を含む豚の品種開発を行ったりと、研究に基づいたさまざまな取り組みを実施しています。
またファームでは20年ほど前からシステム化が進んでおり、水やエサやり、室内の換気などほぼすべての工程が自動化されています。またニワトリの事例ですが、鶏舎内にカメラを設置し、そのデータをAIで読み取ることでそれぞれの身長・体重などを算出。各個体に合わせたエサの配合や摂取量を自動で調整でき、健康状態などもデータ上で管理できるようになっています。
食品加工では新商品開発を常に念頭に置いているのですが、近年は代替肉(プラント・ベースミート)やベジタリアン向け・高齢者向けの商品などが仲間入りするなど、時代に合わせた新商品を生み出し続けています。
ガンタトーン:
現在、抱えている課題や日本企業に求める技術・サービスなどあればお聞かせください。
B・プラシット氏:
大きくは以下5つが挙げられます。
① 飼料の栄養価を高める技術・方法
② 環境に優しいファーム・畜舎の資材
③ 鶏舎内に設置するAI搭載カメラ(より解像度の高い映像・撮影を行うためにどうしたらいいか)
④ エビの養殖時に使用できる、海水に強い設備
⑤ C.P.グループが未開拓の国の販路を持っている企業
TJRI編集部
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