公開日 2024.01.16
TJRI(タイ日投資リサーチ)では昨年11月16日、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会『Open Innovation Talk』の第21回として、トラックなどの車体製造・販売事業を展開するチョー・タウィーに登場いただいた。タイ東北部「イサーン」の星ともいえる同社は現在、商用電気自動車(EV)の開発・製造や、EV充電装置のモバイルアプリシステム開発、スマートシティー事業などの新規事業に積極的に取り組んでおり、これらの分野のパートナーを探している。さらに、将来事業として自動運転技術やロボットテクノロジー関連、フィンテック、メタバースの開発パートナーも求めている。
日本の産業能率大学で経営学を学び、その後、家業のチョー・タウィーを引き継いだスラデート・タウィーサーンサックルタイ社長に現在の事業概要やコンケンでのスマートシティー計画、日本企業との提携機会などについて話を聞いた。
目次
スラデート氏:チョー・タウィーは1968年に日野自動車のディーラーとして創業し、トラックやバスの車体、輸送用の各種トレーラーの製造・販売を展開してきた。また、2013年にタイ証券取引所(SET)に上場し、2022年に特別買収目的会社(SPAC)方式で米国のナスダック(NASDAQ)市場にも上場した。われわれはモビリティーテック企業を目指しており、持続可能性を重視している。主な事業分野は次の3つだ。
(1)既存事業では、トラックとトレーラーの車体製造や、ライト・レール・トランジット(LRT=軽量鉄道)の開発、バス運行管理システム、飛行機にケータリング食品を積み込む地上支援車両の製造、防衛産業関連などの事業がある。
(2)新規事業では、電気自動車(EV)分野で、さまざまな会社と提携して、商用EVの開発・製造を始めている。例えば、サイアム・セメント・グループ(SCG)のバスやミキサー車、ピックアップトラックや、チャロン・ポカパン(CP)グループのミニトラック、バン(ロットゥー)などの改造車両を製造している。また、液化石油ガス(LPG)を燃料とするタクシーからエンジンを外し、EV化する事業も始めている。さらに、モバイルアプリで管理・支払いできるEV充電装置のバックエンドでのサーバー処理技術、そしてスマートシティー事業などに取り組んでいる。
(3)将来的な事業としては、フィンテックやEVの自動運転技術、メタバース関連事業などに参入する予定だ。
スラデート氏:われわれはタイの都市開発は新たなビジネス商品だと考えている。地域社会の活性化が利益を生み出すと考え、「コンケンモデル」に取り組んでいる。タイの都市開発はさまざまな問題があり、国家予算の7割がバンコクに充当されており、残り3割だけがバンコク以外の予算であり、この予算では地方の開発はできない。
また、タイの人口の4割は平均で月に約5000バーツの給料しかなく、貧富の格差は極めて大きい。このため、チョー・タウィーを含む20社の民間企業の協力で「Khon Kaen Think Tank(KKTT)」を設立し、国家予算に頼らず、コンケンの民間部門で都市を開発するコンケンモデルに取り組んでいる。また、コンケンの公共交通システム運営会社「Khon Kaen Transit System(KKTS)」の設立を後押しして、タイ内務省の許可を得て、コンケン県内の5つの自治体にKKTSの株主になってもらった。現在はKKTTが調達した資金とコンケン県の個人・法人からのクラウドファンディングにより、コンケン内の公共交通指向型開発(Transit-Oriented Development:TOD)として5路線のLRTを建設する計画だ。今後、KKTSをタイ証券取引所(SET)に上場し、株式公開による資金調達でさらに都市開発を推進していく。もしコンケンモデルが成功すれば、他の県にも展開できる。
スラデート氏:都市を1つの商品だと考えたら、さまざまなチャンスが出てくる。例えば、インフラ・商業施設の開発事業や不動産、モビリティー関連事業、デジタル・データ管理事業などの都市開発に関わる事業だ。タイと親しい先進国で、都市開発が得意なのは日本だろう。
スラデート氏:私は企業利益を上げることを目指しているが、都市が発展しなければビジネスもあまり拡大しない。例えば、タイ人の平均月給を5000バーツから1万5000バーツに引き上げられれば、タイ経済の成長度が高まり、都市開発も可能になる。一方、政府が推進しているデジタル通貨の配布計画は持続的な方法だと考えている。現在の政権は4年だけであり、この間にデジタル通貨配布を実現しなければならない。
(1)特装自動車製造:航空機地上支援車両やタイ防衛装備関連、LRTの設計・製造・メンテナンスサービス、路線バスの運行管理や24時間体制のサービスセンター運営など。また、日本国内での特装自動車(トラック、トレーラー)、航空機地上支援車両、大型商用車の販売・アフターサービスのディーラーなど。
(2)スマートモビリティー・商用EVの新技術開発:バス、タクシー、トラック、トレーラー、大型商用車のEV化やEV充電装置の関連技術、自動運転、人工知能(AI)、ロボットテクノロジー関連の最新技術の開発。また、EV充電のエコシステム(ハードウェア、ソフトウェア、インフラネットワーク、EV充電プラットフォームなど)開発の事業をタイで展開したい企業など。
(3)スマートシティー事業・先端技術サービス:新たなモビリティー関連技術や再生可能エネルギー、フィンテックやメタバース・拡張現実(AR)・仮想現実(VR)・クロスリアリティー(XR)の最先端技術サービス提供など。スマートシティー分野では、タイの都市発展や社会貢献の関連事業などが対象となり、またコンケンモデルへの投資・共同開発のパートナーを求めている。
TJRI編集部
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