タイ発、世界を動かすダイキンの人と技術

THAIBIZ No.168 2025年12月発行

THAIBIZ No.168 2025年12月発行タイ発、世界を動かすダイキンの人と技術

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タイ発、世界を動かすダイキンの人と技術

公開日 2025.12.09 Sponsored

タイ発、世界へ【技術編グローバル水準に挑むR&Dセンター

アジア・オセアニア地域における研究開発ハブ

2005年にタイに設立されたR&Dセンターは、アジア・オセアニア地域における研究開発ハブとして、同地域各国のニーズや規格に対応した製品設計・商品開発を行っている。

R&Dセンター(写真提供:DIT)

R&D部門General Managerのサミット氏は「R&Dセンターは、もともと日本で設計したベース機種をもとに、各地域に合わせた形状変更や機能追加を施すマイナーチェンジを行ってきたが、次第に大幅な変更を伴うモデルチェンジを手がけるようになり、現在ではタイ発でDITがゼロから開発を行うこともある」と説明する。

同氏によれば、アジア・オセアニア地域は電気の不安定な使用環境や高温多湿といった特徴があり、求められる機能も独特であるうえ、各国ごとに規格や要求仕様が大きく異なる。そのため、他地域のダイキン工場と比べても、タイで生産される機種数は圧倒的に多いという。

同氏は「われわれの役割は、母体統合や部品の共通化を通じて効率的に生産できる基盤を整え、各市場の異なるニーズを汲みつつも開発を最大限効率化することだ。さらに、新技術を導入した差別化機能の開発にも注力しており、単なる“冷やす”ためのエアコンにとどまらず、健康を意識した湿度制御や室内空気質(IAQ)といった新たな価値を加える努力も行っている」と胸を張る。

グローバル水準の認証取得に挑み続ける理由

今年、R&Dセンター内の電磁両立性(EMC)試験室が、タイを含むASEANで初めて「環境エネルギー相互承認(EE MRA)」の認証を取得した。EMC試験室は、エアコンから放出される電波が他の機器やシステムに悪影響を及ぼさないかを測定するための施設である。

EMC試験室(写真提供:DIT)

従来は輸出先の国が有する認証機関に計測を依頼し、その国の政府にレポートを提出する必要があったが、今回の認証取得により、そうした煩雑なプロセスが不要となり、ダイキン社内で試験からレポート作成まで完結できるようになり、よりスピード感のある開発が可能になった。

サミット氏は認証取得までの道のりについて、「海外研修などを通じて測定スキルの向上に注力したほか、世界水準の設備も導入した。審査に向けた手続きに関しては、ダイキン工業本社やタイ政府機関とも連携し、入念な準備を徹底した」と振り返る。

さらに同氏は「EE MRA認証の取得に先立ち、同センターは“世界で最も取得が難しい”と言われる米国のISO(国際標準化機構)認証を獲得している。今後も世界水準の認証取得に挑み続け、世界に誇れる信頼性を確立していきたい」と意気込みを語る。

「意識改革」と「技術力の強化」でタイローカルのレベルを向上

世界水準の研究開発を実現するために現場では、「タイローカルメンバーの意識改革と技術力の強化に力を入れている」という。サミット氏は「まずキーマンたちに失敗例を共有することでプロセスの重要性を伝え、現場の部下たちに伝えてもらっている。同時並行で、OFF-JT(Off-the-Job Training)やOJT(On-the-Job Training)、海外研修などを各メンバーの経験や知識レベルに合わせて展開し、技術力を底上げしている」と、マインドセットと技術の両輪で人材育成を行うことの重要性を強調する。

そうした努力の結果、現在ではタイローカルメンバーだけの力で独自開発を推進できるまでに組織全体が成長した。同氏は「今後も、エアコンの信頼性および対環境性のさらなる向上に向けて、アジア・オセアニアの市場情報を継続的に調査・分析し、最適な設計基準を模索し続けることで、タイ発で地域の開発を牽引していく」と、展望を語った。

タイ発、世界へ【人材編】 〜 海外で「快挙」を遂げるタイ人エンジニア

タイから海外赴任、新工場立ち上げを成功に導く

DITで育ったタイ人エンジニアが、異国インドネシアでの新工場立ち上げ主要メンバーに抜擢され、成功を収めた。PT Daikin Industries IndonesiaのPresidentを務めるブンタウィー氏と、Assistant General Managerのチャイウィット氏は、2022年にインドネシアへ駐在員としてDITから赴任。工場建設地がまだ更地だった当初から、ブンタウィー氏は工場コンセプト策定やリソースの確保、設備の導入など立ち上げに必要なさまざまな活動の遂行を主導した。

チャイウィット氏は地域のサポートチームと連携しながら技術導入を先導し、生産プロセス設計をゼロから行っただけでなく、現地エンジニアの採用など人事部門の立ち上げにも携わってきた。同工場は2024年12月に正式稼働をスタート。両氏が赴任してから僅か3年間という短い月日で、約1,000人規模にまで拡大した。

ブンタウィー氏は1990年にDITへ入社し、製造部のエンジニアから人事部まで多様な部門を経験してきた。2017年にはサブリーダーとしてベトナムの新工場建設プロジェクトに敷地の選定から参画し、成果を上げた。

チャイウィット氏は2006年に入社以来、一貫して生産技術部で経験を積み、2017年にはベトナムで日本チームとともに生産ラインの設計、設備の選定および導入を担い、立ち上げを支援した。「タイやベトナムでの経験があるから、今がある」異国で文化の違いや言語の違いを乗り越えながら挑戦を続ける彼らは口をそろえて、こう語る。

ISOの3規格も1年以内に認証取得

通常ダイキンでは、海外拠点の新工場立ち上げは日本人が中心となり、ローカルスタッフとの協力のもと行われる。そこにタイ人エンジニアが参画し、即戦力として立ち上げを牽引したことは「快挙」とも言える出来事だ。

ブンタウィー氏は、「タイでは話し合いを通じて認識の相違の原因を追求し、相互理解を深めることで解決できると学んだ。ダイキンの理念である“人基軸の経営”をベースに、従業員とマネジメントの壁を超えた意見交換により、全員が同じ方向に向かって行動できると実感した」と振り返る。

ベトナムやインドネシアといった異なる言語・文化の環境で、その学びをどう活かしているのか。同氏は「仕事への向き合い方や働き方は、環境が異なっていても基本は同じだ。タイでの指導経験を思い出しながら、単にプロセスを示すだけでなく、その理由まで説明するよう心がけている」と、タイで培った丁寧な指導方法に胸を張る。

チャイウィット氏は、「優秀な人材の育成はどの国でも重要だ。彼らがダイキンで働くことに誇りを持てるような環境づくりを心がけている」と意気込みを語る。

さらにブンタウィー氏は、「土地の選定から法規制に応じた書類手続きまで、工場設立に必要なことはすべてタイで学んだ。こうしたノウハウは海外工場の立ち上げに確実に活きている。実際、タイの仕組みをベースに、インドネシアでは工場の稼働開始から1年以内にISOの3規格(ISO9001、14001、45001)の認証を取得できた。私の経験上、これは最速の達成だ」と、工場運営において重要な品質、環境、労働安全衛生に関するマネジメントシステムの横展開の成果も明かした。

ロールモデルとなり、タイの発展に貢献

今後の展望についてブンタウィー氏は、「DITが地域拠点としてさらなる飛躍を遂げるために、より多くのタイ人が海外拠点で活躍できる仕組みづくりをさらに加速していく」と力強く語る。チャイウィット氏は、「タイ人スタッフのロールモデルとなり、海外での勤務経験がいかに素晴らしい機会であるかを示したい。海外経験を活かし、ゆくゆくは自国の発展に貢献できると信じている」と目を輝かせた。

THAIBIZ編集部

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