公開日 2016.11.30
松下 駿太郎
Manager
2009年にあらた監査法人に入所、日本において製造業を中心に約5年間監査業務に従事。
2015年9月にPwCタイに赴任。タイ国日本企業の会計監査、内部統制監査などの監査業務のサポートだけでなく、会社設立やビジネスライセンス取得、事業再編などを税務および法務面でサポートしている。日本国公認会計士。
+66(0)2 344 1466(直通)、+66(0)98 282 1372(携帯)
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<質問>
歳入法典第76条bisによれば、外国法人(外国の法律の下で設立された企業)がタイ国にて事業を営むために、タイ国内にその使用人/代表者/仲介人を置き、これによりタイ国にて所得を得ている場合には、当該外国法人は、「タイ国にて事業を営んでいる」とみなされます。
そのような使用人/代表者/仲介人は、自然人または法人であるかに拘わらず、当該外国法人のタイにおける代理人とみなされ、外国法人のために当該事業所得に関する税務申告/納税を行う義務を負います。
第76条bisでは、外国企業に代わって注文を受けたり、契約を締結したり、価格交渉するような者は、外国法人の代理人とみなされます(最高裁判決仏暦2521年2637‐2639号)。ただしその適用は従属代理人に限られ、独立した代理人に対しては適用されません(税務委員会ルーリング仏暦2526年2号およびタックスルーリングKor・Khor・0802/23856号(仏暦2538年)。
独立代理人の要件として、以下が掲げられています。
①通常の事業として、ブローカーや代理人として複数の外国法人のために活動し、特定の外国法人・外国法人グループのために活動しないこと。
②サービスの提供先である外国法人から独立の立場にあること。すなわち、当該外国法人から事業制限を受けるような契約を締結しておらず、また、実態としてもそのような制限がないこと。
③事業上、物品販売に関する手数料以外の便益を外国法人から受けていないこと。
④物品販売に関して、購入者が直接、販売元である外国法人に対して代金を支払うこと。
外国企業がタイ国にて事業を営んでいるとみなされると、タイ国で稼得したすべての所得に対してタイ国法人税(20%)が課せられます。この場合、タイ国外への利益送金に対して更に10%の利益送金税が課せられます。歳入局規則仏暦2528年Taw Paw 4(仏暦2544年Taw Paw 101により一部改正)により、このような取引は源泉徴収対象取引となりますので、タイ内国法人は外国法人への送金時に源泉徴収を行う必要があります。
①請負サービス
請負(hire of work)に関するサービス報酬を支払う場合、支払者は、下記の税率に基づき、支払額から源泉税を徴収する義務を負います。ここで「請負契約」とは、業務の対価を支払うことを約した他者(雇主)のため、作業を遂行する契約を意味します。
●「恒久的支店(※1)」によってタイ国で事業を営む外国法人に対する支払:3%
(歳入局規則仏暦2528年第8節 (3)Taw Paw 4)
●「恒久的支店(※1)」がなくタイ国で事業を営む外国法人に対する支払:5%
(歳入局規則 仏暦2528年第12節Taw Paw 4)
②請負サービス以外のサービス
請負サービス以外のサービス報酬には、歳入局規則歳入局規則仏暦2528年Taw Paw 4(仏暦2544年Taw Paw 101により一部改正)の第12/1条に基づき、恒久的支店の有無に関わらず、3%の源泉税が徴収されます。
③その他
その他の所得に関する源泉税率については、本連載第8回、国内取引に係る源泉税の取扱いを参照ください。
タイ国で事業を営んでいない外国法人が、歳入法典第40条(2)~(6)に規定される以下の所得を得た場合、その所得がタイの国内で支払われたか否かに関わらず、その所得は課税所得となります。
①職位・職場・提供したサービスによって生じた所得
②営業権・著作権・その他権利の使用料、遺言/法律/裁判所の決定により受け取る年賦払の受取収益
③社債・預金・貸付金などからの利息、配当、株主が受け取るその他の所得
④資産の賃貸料、ハイヤーパーチェス/割賦契約に係る違約金
⑤自由職業の報酬
上記所得の支払者は、所得の種類に応じて定められた税率に基づいて源泉徴収を行う必要があります。法人に対して支払われる所得についての税率は、以下のとおりです。
●歳入法典第40条(4)(b)に定められた所得(配当所得):10%
●歳入法典第40条(2)~(6)に定められた所得:15%
源泉税は、10%が適用される配当を除き、概ね15%の税率が適用されます。また、この税率はタイ国と租税条約のある国へ所得を支払う場合には、租税条約により減免される場合があります。また、タイ国政府、農業・商業・製造業振興のために特別法に基づいて設立された金融機関から受け取る利息は、源泉対象取引となりません。
サービス取引について、タイ国で事業を営んでいない外国法人が、タイ国法人からサービス報酬を受け取る場合に、これが日タイ租税条約上のロイヤルティと事業所得のどちらに該当するかという論点があります。
ある特定のサービス報酬は、租税条約第12条によりロイヤルティとみなされます。同条によるとロイヤルティには、著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式または秘密工程、産業上・商業上・学術上の経験等の使用に関する支払が含まれます。その意味は幅広く、特定の状況における専門的なサービス報酬や、サービス提供にノウハウが含まれる場合もロイヤルティとして扱われます。歳入局は、支払がロイヤルティかどうかを判断する際には、契約の文言ではなく提供されたサービスの具体的内容を検討します。
報酬がロイヤルティとみなされた場合、歳入法典第70条に基づき、15%の源泉徴収税が課されます(日タイ租税条約第12条では、15%より低い税率を規定していません)。
ロイヤルティ以外のサービス報酬は、租税条約第7条の事業所得として扱われ、外国法人がタイ国に恒久的施設(Permanent Establishment : PE)を有していない限り、タイ国の法人税を課されることはありません。ここでPEとは、下記のようなものを指します。
日タイ租税条約上、PEとは、日本法人がタイ国にて事業を遂行するための固定的な事業拠点をいいます。租税条約第5条には、典型的なPEの具体例として以下を掲げています。
(a)事業の管理の場所
(b)支店
(c)事務所
(d)工場
(e)作業場
(f)鉱山、油田、その他天然資源の採掘場所
(g)農場、プランテーション
(h)他者に保管施設として提供した倉庫
加えて、日本企業がタイ国で従業員またはその他の者を使って、1つまたは複数の関連するプロジェクトに12ヵ月間の内合計6ヵ月以上、コンサルティングサービスを提供した場合、その従業員またはその他の者そのものがPEであるとみなされます。
外国法人がタイ国にPEを有する場合、事業所得に対してタイ国の法人税(20%)が課されます。また、税引後利益に対して利益送金税(10%)が課されます。
さらに、この場合のサービス報酬の支払いについて、報酬の支払者は源泉徴収義務を負います。源泉税率および条件は、歳入局通達仏暦2528年Taw Paw 4(同通達仏暦2544年Taw Paw 101および2528年Paw 8などによって改正)の第1条「タイ国において事業を行う外国企業」に規定されています。源泉税はタイ国の法人税から控除できます。
《質問への回答》
※1 下記のいずれかに合致する場合、タイ国にて「恒久的支店」を持っているとみなされます。これはいわゆるPE (恒久的施設(※2)) とは異なる概念です。
(a)タイ国内に事務所を有している。 (b)タイ国にて請負サービスとともに、それ以外の事業(物品の売買など)を営んでいる。
(c)財務省令183号に基づき、従業員の福利厚生のため、プロビデントファンドを設けている。
※2 租税条約が定義するPE(恒久的施設)をタイ国に有する請負契約者(例:タイ国へ販売した機械の据付のため、従業員を一定期間派遣するような契約者)は、タイ国にて恒久的支店を持っているとみなされません(歳入局通達仏暦2528年Paw 8)。
◎このコラムは「時事速報BANGKOK」で以下年月に掲載されたものです。
2016年2月3日、3月2日
PricewaterhouseCoopers Legal & Tax Consultants Ltd.
15th Floor Bangkok City Tower, 179/74-80
South Sathorn Road, Bangkok 10120, Thailand
Tel: 0 2344 1000
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