連載: 日系スタートアップ
公開日 2022.08.09
宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタイ地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)が6月28日に開催した「日タイ宇宙ビジネスウェビナー・マッチングイベント」に参加した宇宙スタートアップ紹介の第5回は、ワラユット・イェンバムルーン氏が2017年に創業した宇宙・衛星開発製造・衛星インターネットサービス提供でアジアのリーディング企業を目指すタイのmu Space and Advanced Technology(muスペース)だ。
2022年は宇宙ビジネスではイノベーションによりいろいろな技術が開発され非常に可能性を感じる年でした。宇宙専門の情報調査会社ユーロコンサルによると、宇宙経済(Space Economy)は2030年までに2021年比で約74%成長すると予測されています。特に500㎏以下の小型衛星は過去5年間で相当成長してきましたが、今後も市場規模や性能、ユーザーのニーズがより伸びていく見込みです。多くの企業が衛星ソリューションの研究開発チームを設置し、衛星ネットワークという形でより良いサービスを提供、新しい顧客ベースを増やすことができるようになったためです。さらに衛星ネットワークも拡大していくと見られ、より良いサービスを紹介していきたいと考えています。
小型衛星を利用するためのアプリケーションもコミュニケーションや観測、モノのインターネット(IoT)、安全、探査などの分野で数多く開発されています。宇宙産業のサプライチェーンは北米と欧州が中心ですが、過去3~5年、アジアの国々でも継続的に新たな技術が開発されています。特に日本は4番目に人工衛星を宇宙に打ち上げた国であり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、今も成長し続けています。また、今回のウェビナーに登壇した日本企業4社の紹介でもいろいろなイノベーションが開発されていることが分かり、muスペースとしてこの4社とも連携していきたいと考えています。タイ地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)がタイの新興企業を試験設備面で支援してくれたおかげで、タイのさまざまな新興企業が先進的な衛星部品や「衛星バス(衛星の科学機器や必要な部品をすべて保持する本体)」を迅速に開発することができるようになりました。
muスペースはアジアにおける衛星産業のリーディングカンパニーになりたいと考えています。現在、従業員数は約150人で、4つの施設を持っており、1つはヘッドクオーターで、他の3つは製造工場です。2023年には自社開発・自社製造の小型衛星打ち上げを予定しており、タイ国内で衛星を製造できることに大変誇りを持っています。muスペースの製品としては、「CubeSat」規格の衛星(縦10cmx横10cm)は1U(高さ10㎝)から6U(同60㎝)に対応し、同規格外の個別の衛星については最大500㎏級までの小型衛星を生産できます。さらに、衛星コンポーネント(部品)のリアクションホイール、タワーシステム、通信モジュールも提供しています。
コンポーネントは、Technology readiness levels(技術成熟度レベル)5(TRL5)の評価テストに合格したものです。muスペースの長所としては、開発した衛星バスのバッテリーがかなり高出力となっているため、特に速度と積載量が必要なレーダー衛星、通信衛星の顧客の条件を満たすことができます。そして、部品や衛星バスの納品が早いことも優位性です。一般的な小型衛星の衛星バスはおおむね2年くらいの開発時間がかかりますが、muスペースはコンポーネントを自社内では6カ月で製造ができ、衛星バスでは1年以内にお届けすることができます。これらの製品は最新技術を使っており、安心していただけます。また、研究開発チームを持っており、いろいろな技術を活用して顧客の課題を解決し、新しい製品として提供できます。
われわれの中心的ビジネスパートナーは、欧州・北米の企業が多いのですが、今日のイベントを通じて、GISTDAやタイおよび日本のスタートアップ企業にもっとサービスを提供できるようになると考えています。ぜひ当社をご訪問下さい。
TJRI編集部
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