カテゴリー: バイオ・BCG・農業, スタートアップ, DX・AI
連載: 日系スタートアップ
公開日 2022.08.23
宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタイ地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)が6月28日に開催した「日タイ宇宙ビジネスウェビナー・マッチングイベント」に参加した宇宙スタートアップ紹介の第6回は、米マサチューセッツ工科大(MIT)で出会ったパキスタン人のウスマン氏とタイ人のウグリット氏が2015年に創業した衛星画像データなどを活用して農業・農家の課題解決に取り組むITスタートアップ企業Ricultだ。
Ricultは現在、衛星データや人工知能(AI)、機械学習を利用した農作物栽培・農場管理サービスを提供しています。Ricultの農家向けアプリケーションをダウンロードしているタイの農家数は約50万戸以上に達し、そのカバー農地面積は先月には約1000万ライ(1ライ=1600平方メートル)に達しています。また企業や精米業者など向けの農業経営サービスのアプリである「RicultX」を利用している上場企業数は約10社です。
Ricultは3つの分野でサービスを提供しています。1つ目は、技術提供プラットフォーム(RicultX、RicultM、RicultF)で、農場管理や、収量の確認、収量予測も行い、結果として、農家の経営管理がより簡単になります。2つ目は農業金融サービス(RicultFS)の提供で、短期ローンを運転資金として供与。そして3つ目はデータサービス(RicultDS、RicultAS)で、例えば、どのような品種で農業生産をしていくかの判断、決定ができるようになります。
Ricultは、気象情報、衛星画像、栽培情報などさまざまなビッグデータをデータベースに保存し、それを人工知能(AI)で分析、RicultXというプラットフォームで表示し、農家と工場の両方が情報を閲覧できるようになっています。工場側は農場の所有者名、生産量、品質を確認でき、生産・出荷の判断をより効率的に行え、コストを大幅に削減できます。
RicultXは次の3つの農業生産支援サービスができます。①Supply Securing(供給確保) ②Data Collection & Contract Farming(データ収集と契約農業) ③Crop monitoring(作物モニタリング)です。結果として農家の収入増加につながります。
1つ目の「供給確保」では、それぞれの農地でどんな作物が栽培されているかを衛星画像データで確認できます(Crop Type Identification)。タイの商業作物であるサトウキビ、キャッサバ、トウモロコシ、コメを特定することができ、最近では天然ゴムも可能になりました。衛星データのため、全国の栽培作物を確認できます。
2つ目の「データ収集と契約農業」では、AIを活用して衛星画像を分析し、健康状態をモニタリングできます。どのような品種をいつ作付けするか、いつ収穫するかということも確認することができます。契約企業が収穫の計画を立て、収穫量の予測も可能です。Ricultのエコシステムの中にある全情報を使って農業生産性を事前予測することもできます。AIと機械学習でそのデータの精度を上げています。例えばサトウキビでは今年の全国の収量を約9200万トンと予測しましたが、実際の収量は9300万トンと非常に精度が高くなりました。このプラットフォームでは農家や企業がデータを確認することができます。農地でどのような準備をしていくかなどRicultが相談に応じることもできます。
3つ目の「作物モニタリング」では、リアルタイムで各農地のモニタリング結果を確認することができます。土地の肥沃さや、どのような活動がどの土地で行われているのか、土地が分散している場合でも農家は自分たちで確認をすることができます。農地の異変(anomaly)も探知できます。例えば5日ごとのデータを使って、そのデータから異変があるかを衛星データから確認することができます。衛星画像でチェックした後、実際に現場に見に行くことができます。
以上がRicultの技術体系です。AI技術を使って農地のマネジメントを実行することで収量の向上にもつながります。ご関心がある方は連絡いただければ幸いです。
TJRI編集部
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