
カテゴリー: 対談・インタビュー, 特集, 食品・小売・サービス
公開日 2026.03.10
目次
ペプシコとSBFというグローバル食品・飲料企業がタッグを組み、約8年前に誕生した合弁会社、SPBT。同社は現在、「PEPSI」「7UP」などの炭酸飲料を軸に、「TEA+」「GATORADE」「BOSS COFFEE」といった多彩なブランドを展開し、タイ飲料市場で確かな存在感を放っている。
とりわけ注目されるのが、独自の価値観と消費行動を持つZ世代を的確に捉えた商品開発とマーケティングだ。タヌージ・チャダCEOに、SPBT誕生の背景やタイ市場の特徴、Z世代を取り込むための戦略などについて話を聞いた。

タヌージ・チャダ 氏
Suntory PepsiCo Beverage(Thailand)Company Limited
Chief Executive Officer
2004年にペプシコ・インディアに入社し、テリトリー・ディベロップメント・マネジャーとしてキャリアをスタート。ユニット・マネジャーなど、要職を歴任。2019年にはSPBTに営業担当ディレクターとして入社し、実行力・展開力・エンゲージメントを重視しながら、「ルート・トゥ・マーケット」基盤の強化を主導。その後、SBFアジアパシフィックにてチーフ・コマーシャル・エクセレンス・オフィサーを務め、アジア太平洋地域全体でのコマーシャル・エクセレンスの拡大において中心的な役割を果たした。2025年2月より現職。
世界200ヵ国以上で事業を展開する巨大食品・飲料企業であるペプシコと、グローバルに展開する清涼飲料会社であるサントリー食品インターナショナル(SBF)。飲料業界の二大勢力である両社が、タイの消費者ニーズに応えるために合弁会社 SPBTを設立したのは、2018年3月のことだ。
合弁の目的について、タヌージCEOは「両社が持つ最高のブランド、つまり日本や世界各地で展開している象徴的なブランドやソリューションを、タイの消費者に届けることだ」と話す。
さらに、合弁の背景について同CEOは、「両社は『Growing for Good(社会のために成長し続ける)』を軸とする共通の価値観を持っている。これは、事業としての長期的な価値創出につながる持続的な成長を目指すと同時に、サステナビリティへの取り組みや地域社会との関わりを通じて、タイ社会や環境にポジティブな貢献を果たしていくという考え方だ」と説明。
さらに、「ベトナム、米国、日本など、他国での協業を通じて良好な実績を積み重ね、互いを深く理解し、強固なパートナーシップを築いてきたことも、合弁に至った大きな要因だ」と補足する。
SPBTは現在、ラヨーン県のアマタ・シティ・ラヨーン工業団地およびサラブリー県のノンケー工業団地に、計二つの生産工場を保有。26の地域ディストリビューションパートナーと連携し、全国で27万5,000店以上におよぶ販売網を構築している。
タヌージCEOは、ペプシコ・インディアで14年間にわたり事業に携わってきた経験を持つ。インド市場とタイ市場の違いについて同CEOは、「タイ市場はより発展しており、製品カテゴリー数が多く、消費の成熟度も高い。加えて、イノベーションのスピードも速いと感じている」と語る。
さらに、「タイ市場の強みは、あらゆるカテゴリーにおいて品質と価値の水準が非常に高い点にある。消費者の嗜好も極めて速いペースで変化しており、近年は機能性飲料や健康関連飲料への関心が一段と高まっている」と分析する。
同CEOは、「タイ市場は大きく二つのセグメントによって成長している」と見る。一つは「アフォーダビリティ(値ごろ感)」で、適切な価格設定により普及率を高めることが鍵となるセグメントだ。SPBTでは、コーラや炭酸飲料などがこの層を担っている。
もう一つは「プレミアム(付加価値)」である。より健康的で機能性の高い商品に対し、相応の対価を支払うことを厭わない消費者層を指し、プレミアムなRTD飲料であるお茶やコーヒー、スポーツ飲料などがこれに該当するという。
SPBTでは、サントリーの理念である「Together with Seikatsusha(生活者とともに)」—消費者を“生きた個人”として捉える考え方—が、単に消費の瞬間にとどまらず、人生の全体を通じて生活者とつながろうとする同社の姿勢を示している。
さらに、「やってみなはれ」のスピリットと相まって、これらの理念は同社に深く根づき、Z世代のエンゲージメントに向けた取り組みにおいても積極的に活かされている。
タヌージCEOは、「既存ブランドを軸に、Z世代を中心とする若者層向けのフレーバーやパッケージを採用した新商品の投入にも注力している」と説明する。例えば、TEA+では、「ハニーレモン・ウーロン」フレーバーを発売し、若者層への浸透率が大きく向上したという。

また、「タイではコーヒーにフルーツジュースを組み合わせるスタイルが流行していることを現場で捉え、ゆずフレーバーの『BOSS YUZU』を発売した。

今年2月に発売した『Pepsi Treats(ペプシ・トリーツ)』は、デザート感覚のフレーバーとプレミアム感のあるパッケージが特徴で、これもZ世代に強く響くと確信している」と、同CEOは自信をのぞかせる。

タイの若者層へのリーチに課題を抱える日系企業に対し、同CEOは「タイでは、日本という国や『日本らしさ』が非常に高く評価され、尊敬されている。われわれの製品でもカタカナや漢字を用いているが、こうした表現は若者にとって憧れの対象となりうる手法の一つだ」と、日本の強みを活かす考え方を示した。
さらに、「新しい世代は、カスタマイズ性や新しい体験、これまでにない食感などを求めている。日本企業は、日本ならではのイノベーション文化を強みに、こうした独自性のある製品を開発していくことが重要だ」と、日本企業への期待を語った。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / 白井恵里子

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