コロナ禍の規制動向を踏まえた企業の対応事項

ArayZ No.115 2021年7月発行

ArayZ No.115 2021年7月発行企業価値を高めるタイ事業再編

この記事の掲載号をPDFでダウンロード

ダウンロードページへ

掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。

コロナ禍の規制動向を踏まえた企業の対応事項

公開日 2021.07.09

コロナ禍に対応した直近の規制動向

新型コロナウイルスにより顕在化した経済インパクトからの回復や非対面接触等のデジタル化、関連ビジネスの促進を目的にして企業努力が進む中、政府もそれを後支えするような規制緩和や対策強化、方針を打ち出しています。

タイの保険規制を管轄する保険委員会(OIC:Office of Insurance Commission) は2020年に生命保険と損害保険業界に対し、さまざまな法律と規制を発行し、パンデミックと景気低迷に対処するために業界を後押ししています(図表1)。

図表1: 2020年の保険規制の主要内容

目立ったものとしては、代理店やブローカーを介した対面販売が大幅に減少したため、一定の条件下(※1)で保険証券のオンライン(動画、音声、画像)によるデジタル販売を可能にしました。当初は一時的な規制緩和とされていましたが、21年以降も継続される見込みです。

 

(※1)①変額保険等複雑な商品は対象外、②販売時のやり取りの記録、事前承認、③保険証券の電子発行、④保険会社のデジタル対応に則したプロセス整備、等

サイバーセキュリティ対策の欠如は膨大な個人情報や機密情報を抱える保険業界全体に重大なリスクをもたらす可能性があるため、IT・セキュリティリスク管理に関する規則を発行し、保険会社に適切な監視と管理を義務付けました。

21年以降に見込まれる保険規制

OIC事務局長の発言を基に今後の保険規制の動向を占うと、主な内容として

①保険規制サンドボックス(一定の制限下で現行規制で困難な取り組みを可能にする制度)の活用によるイノベーションの促進

②保険商品認可の承認プロセスの迅速化

③サイバーリスク対策の義務化

④保険会社による投資対象の多様化

が挙げられます(図表2)。

図表2: OICによる2021年以降の主な保険規制見込み

近年OICは保険規制サンドボックスの活用等を通じて、技術の変化に備えるためにイノベーションとデジタル変革プロセスを促進し、利害関係者の進化する要件を満たして保険会社間の健全な競争を促進すエコシステムを作る動きが加速しています。

18年、OICはタイの保険業界のデジタルインフラストラクチャを開発するためにCIT(Center of InsurTech Thailand)を設立し、InsureTech(保険関連の技術優位性を持つスタートアップ)と保険会社が出会い、ビジョンと経験を共有して、業界をサポートし、新しいイノベーションを創出するプラットフォームを実現しました。

並行して、CITはOICゲートウェイと呼ばれるプラットフォームを開発しており、通信業界の5Gテクノロジーに匹敵する、OIC、保険会社、保険契約者間の情報連携システムを提供しています。近い将来、OICは、収集した情報をプラットフォームに接続して、契約者に優れた顧客体験を提供することを計画しています。

今後、保険業界が取るべきアクション

ここまでタイ保険規制を司るOIC視点で規制動向・取組を見てきましたが、タイで事業活動を行う保険会社にとって、どのような対応が必要になってくるのでしょうか。

当然、規制強化・緩和に則して対応していく事は必要ですが、市場環境や自社の方針を併せて、判断していくことになると考えます。

図表3:タイの市場環境、規制動向を踏まえた保険会社が取るべきアクション

図表3では、これまで述べた規制動向に加え、タイの保険市場環境、保険会社固有の戦略・方針を加えた自社の対応の導き方を示しています。

顧客接点のデジタル化・内部プロセスのデジタル化、デジタル化に伴うサイバーレジリエンスの高度化、ESG配慮の経営促進の観点では他業界でも考慮を入れるべきトレンドであり、在タイ企業に求められるアクションと想定されます。

保険業界は他業界よりも色濃く当該国の規制の影響を受けるため、規制強化や緩和に基づき対応方針を定めることは必要になりますが、自社のタイ市場における商品・ポジショニング戦略等により、打つべき施策の優先順位が異なると思われます。

特に日本と比して企業数が多く競争環境が激しい中、適切にエコシステム形成を進めデジタル化に対処している現地企業も複数見られます。

弊社では保険業界に限らず、上記テーマにおいて専門家が在籍しておりますので、必要に応じてお問い合わせいただけますと幸甚です。

寄稿者プロフィール
  • 森 厚之 プロフィール写真
  • PwC Thailand Japanese Business Desk
    コンサルティング部門 マネジャー
    森 厚之

    日系損害保険会社(企業商品開発部門)、総合コンサルティングファーム(保険部門)を経て現職。これまで、保険・自動車業界、官公庁を中心にテレマティクス・MaaS等のデジタル、モビリティ、ファイナンス周辺の経営戦略・M&A、サイバーセキュリティ等のテーマおよび東南アジアにおけるクロスボーダー案件を数多く経験。2020年9月よりPwC Thailandに赴任。

    E-mail : [email protected]

  • PWC ロゴマーク
  • PricewaterhouseCoopers
    Consulting (Thailand) Ltd.
  • Tel : 0 2344 1000
    15th Floor Bangkok City Tower, 179/74-80 South Sathorn Road, Bangkok 10120, Thailand

\こちらも合わせて読みたい/

デジタル時代の人材改革 アップスキリングの必要性

ArayZ No.115 2021年7月発行

ArayZ No.115 2021年7月発行企業価値を高めるタイ事業再編

ダウンロードページへ

掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。

THAIBIZ編集部

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP

SHARE