タイの人材採用と育成のポイント|第二回タイ人事マネジメント塾 開催リポート

最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中

タイの人材採用と育成のポイント|第二回タイ人事マネジメント塾 開催リポート

公開日 2025.08.21

本講座シリーズは、タイにおける日系企業の人事・組織マネジメントの知識を深め、優秀人材のリテンションとより効果的な組織運営を実現することを目的としています。人事戦略、採用と育成、評価制度、組織文化の変革など、日々の実務に直結するテーマについて学び、議論し、実践に活かすことを目指します。

THAIBIZは7月25日、Asian Identityと共催で「タイ人事マネジメント塾」第二回講座を開催しました。Asian Identityオフィスにて対面で実施した本講座では、18名の参加者が「優秀なタイ人を惹きつけるための」人材採用、業務アサインメント、育成について学び、グループワークでも積極的な議論が交わされました。本講座の講師はAsian Identityの中村 勝裕氏および山内 崇氏が務めました。

本講座シリーズは、タイ人事の基礎知識の実例を交えた学習および、参加者同士の“熱いコミュニティ”づくりを目的として、①「人事戦略」、②「人材採用と育成」、③「評価制度と報酬」、④「カルチャー変革」の4つのテーマで4回にわたり開催。本記事では②「人材採用と育成」をテーマとした第二回の様子をお届けします。

第二回人事マネジメント塾02
撮影:THAIBIZ編集部

 タイにおける人材採用の難所

最初に中村氏は、採用テーマの導入として「一般的に採用の流れは、①ターゲット策定、②募集(広告・紹介)、③選考(面接・テスト)、④オンボーディング(受け入れ)、の大きく4つに分けられる」と説明した上で、「特に①と④が盲点になりやすい」と警笛を鳴らしました。

同氏は、「タイの採用には、『人が集まりにくい』『学歴や経歴などのスペック採用になりやすい』などの募集段階の難しさと、『面接スキルが無い日本人駐在員が多い』『タイ人の自己評価が高い』『内定承諾に至らない』など選考段階の難しがある」と解説。自社を選んでもらうための要素についても説明し、特にSNSを活用した自社の魅力訴求などにより、自社のポジショニングを確立する重要性を強調しました。

採用面接のポイント

次に中村氏は、「採用にあたっては、求める人材像を定義し言語化しておくことが重要だ」とし、そのポイントを解説しました。続く“面接ミニワーク”では、「人事部門マネジャーが退職してしまったので、補充の採用を行う」という架空の設定で、候補者へどのような質問を投げかけるか、グループ内で議論した結果を全体で発表しました。

発表内容に対して同氏は「限られた時間内で優先度の高い情報を得るためには、ファクトを聞き、そこから話を深堀することが有効だ」と説明し、予め設定した採用基準を質問に落とし込む方法について解説しました。

続いて、タイの採用の難所に対する攻略法の総括として、求める人物像を「価値観・態度」レベルでもすり合わせることや、面接官としての経験を積むこと、エビデンス・ベースで質問すること、自社アピールを忘れないことなどの重要性を強調しました。

「未来」を見据えた業務アサインメントの重要性

次に、講師の山内氏が「タイ人への業務アサインメント」について解説しました。同氏は「特にタイでは、若者のキャリアのスピード感が早巻きになっていることや、自分らしいキャリアを求める傾向、日系企業の将来像の不透明さなどから、“仕事の意味づけ”が必要な時代へと突入しているため、アサインメントの重要性が増している」とした上で、「業務目標、本人の得意分野、やりがいといった現在の要素だけでなく、組織ビジョン、本人の成長ポテンシャルやキャリアプランなど未来を見据えたアサインメントが求められている」と訴えました。

出所:Asian Identityが作成

山内氏は「長期視点がなく、現在の能力重視の業務アサインメントを続けていると、優秀人材が疲弊し、退職につながってしまう。また、業務目標や組織ビジョンのみに偏っていると、従業員が本音を言いにくい組織になってしまう。かと言って、本人の想いだけを尊重しすぎたアサインメントは、まとまりのない組織を作ってしまう」と、よくあるアサインメント失敗パターンを解説し、バランスのとれたアサインメントのコツを明かしました。

第二回人事マネジメント塾01
撮影:THAIBIZ編集部

タイ人育成にあたり「知っておくべきこと」

最後に中村氏から、タイ人育成のポイントについて解説がありました。さらに、タイ人育成の難所として「結果を重視するタイ人と、型を守ることを重視する日本人」という価値観の違いを取り上げ、「型の裏にある背景や得られる成果(アウトカム)を説明することで、すれ違いを防ぐことが可能だ」と見解を述べました。

出所:Asian Identityが作成

その他、ハイコンテキストの罠から逃れるための方法や、実力より少し高めの目標を設定するストレッチ経験など、タイ人育成にあたり「知っておくべきこと」を説明し、最後に、人材育成OJTで上司がやるべきことを一覧化したチェックリストを紹介し、各項目についてポイントを解説しました。

同氏は「期待している社員にこそ、現在だけでなく未来を提示することが大切だ。そのために、業務アサインメントや育成に力を入れてほしい」と参加者に訴えかけました。

参加者の声

講座の参加者からは、以下のような感想が寄せられました。

「自身の業務に通ずる部分が多々あった。内省の時間を通じて、理解の深まりが得られた。フレームワークなどは実務で使えるものが多かった」

「採用において、求める人材像を定義しタイ人と共通認識を作らなければいけないことが良く分かった」

「人事に関する経験がない当方にとって、全体的によくまとまっていてわかりやすい内容だった」

9月25日に開催予定の第三回講座では、「適切な給与を正しく払う」をテーマに、評価制度について学びます。第一回、第二回に参加されなかった方も、受講いただけます。本講座シリーズの詳細についてはこちらをご確認ください。

>>第三回以降のお申込みはこちら

講師プロフィール / 会社紹介

中村勝裕 氏

Asian Identity Co., Ltd. Founder & CEO
株式会社アジアン・アイデンティティー 代表取締役

愛知県常滑市生まれ。上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、ネスレ日本株式会社、株式会社リンクアンドモチベーション、株式会社グロービス、GLOBIS ASIA PACIFICを経て、タイにてAsian Identity Co., Ltd.を設立。「アジア専門の人事コンサルティングファーム」としてタイ人メンバーと共に人材開発・組織開発プロジェクトに従事している。リーダー向けの執筆活動にも従事し、近著に『リーダーの悩みはすべて東洋思想で解決できる』がある。YouTubeチャンネル「ジャック&れいのリーダー道場」を運営。

山内崇 氏

Asian Identity Co., Ltd., Senior Consultant
株式会社アジアン・アイデンティティー シニアコンサルタント

熊本県出身。一橋大学経済学部/経済学研究科修了。信託銀行勤務を経てデロイト・グループ、楽天株式会社にてリーダーシップ開発や企業内研修の企画・実行、また組織風土改革プロジェクトを推進。楽天を退社後、イギリスへ留学しビジネス・スクールにてHRMを専攻。現在はAsian Identityにて人材開発コンサルタントとして従事。

Asian Identity Co., Ltd

開催概要

タイ人事マネジメント塾【第二回】

日時:2025年7月24日(木)13:00~17:00(タイ時間)
形式:オフライン会場 のみ
会場:Asian Identity オフィス
主催:THAIBIZ(Mediator Co., Ltd.運営) / Asian Identity Co., Ltd. ※共催

※プログラム詳細はこちら

THAIBIZ編集部

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP

SHARE